仙石秀久、戦国を駆ける 絶対にあきらめなかった武将 PHP文庫

志木沢郁(著者)

• 販売会社／発売会社: PHP研究所
• 発売年月日: 2016/01/04
• JAN: 9784569764597

商品レビュー

2025/02/19

　あまりメジャーでない武将の部類に入る仙石権兵衛秀久を主役とした歴史小説。
　有能な人物を描くのは容易いかもしれないが、どちらかと言えば凡庸な人物をいかに描ききるかも作家の手腕であろう。
　しかし凡庸とは書いたものの、その凡庸さをこの作家は上手に仙石権兵衛の魅力まで引き上げられていよう。それか仙石権兵衛自身がその魅力を有しており、作家がその原石に気づき、磨ききったのかもしれない。
　時代の変革期には様々な人物が表出してくるのであり、戦国時代も例に漏れずに多種多様な異才が現れたのであるが、仙石はどちらかと言えばそのような人物ではなく、昔ながらの武士であろう。身体的な強さと運と縁とで、城持ち大名となるのはまさにこの時代ならではなかろうか。
　そして引田の戦いに引き続き、島津軍との戸次川の戦いで大敗北し、高野山へ隠居。しかしそこから復帰をなすのに時間はかかったが、小田原征伐での目立つ（当時の一角の武将は当然なのであろう）格好に装い、意外にも家康への陣仮りを行うなど冷静な手続きをしっかりと行い、無論小勢とは言え、功を立てるべきところで功を立てる。
　そして小諸城主となっても短慮は減り、秀忠とも身を弁えた接し方に自然となっているのは、年と経験を経て人物が練られていよう。
　いつ叩きのめされても、何処か一所懸命に物事を行なっていればいつか報われるというような簡単な感想を述べたくはなく、戦国では上司への対応自体が死に直結しており、いかに生きるのかが難しい時代にあって、まさに奇跡とも言える復帰をしていることから、竹中半兵衛が本当に評したのかは知らないが、「川に浮かべた瓢」とは言い得て妙であろう。
　考えていないような人物も苦悩と知恵と経験があることから馬鹿には出来ず、自分が底辺まで落ち切ったところで自分の芯を持っているものが、必ずとも言えないが、捲土重来を期すのであろう。

2021/12/01

数多ある戦国武将の中でも輝くものがある仙石秀久の一代記の様な1冊。

漫画センゴク権兵衛のファンで今も読み続けているのだが、前からこの小説に興味があり手に入れるのに時間が掛かったがやっと読了。
漫画センゴク権兵衛のイメージがどうしても付きまとってしまう中でもこちらの小説で描かれる仙石秀久も魅力的で面白かった。
羽柴秀吉、秀長、竹中半兵衛、神子田や尾藤、一柳、黒田官兵衛や徳川秀忠などとの関係もよく描かれていて楽しめた。

特に徳川秀忠との仲は微笑ましく、ラストも仙石秀久っぽくて良い。

仙石秀久を知らない方も漫画センゴク権兵衛を読んでいる方にもおすすめです。

2021/12