知られざる鉄道路線の謎

杉山淳一

• 販売会社／発売会社: 宝島社
• 発売年月日: 2015/12/08
• JAN: 9784800248701

商品レビュー

2022/09/29

日本の大動脈鉄道と言えば、東海道新幹線だ。

その中の岐阜県内のルートは「政治上の妥協の産物」だった。

岐阜羽島という岐阜県唯一の新幹線の駅がある。どうしてぽつんと一軒家いや一駅なのか不思議だと思ったら大物政治家が関わっていた。

当時の国鉄は岐阜県内に駅を作る計画を進めていた。しかし岐阜県の中心、岐阜市に駅をと願う地元の要望があった。

そこで岐阜出身の大物政治家、大野伴睦に「駅を作ってくれるなら地元を説得する」と言わせるように仕向けた。

国鉄側の事情があり、その過程で地元の大物政治家の顔を立てたのが真実だった。

政治家の影響が大いにあるのは上越新幹線だ。新潟が生んだあの田中角栄は、鉄道路線建設を担う鉄建公団を立ち上げて、自らの選挙区内を通る上越新幹線を最優先で着工させた。

評価の分かれる田中角栄だが、「聞く耳を持つ」ことをアピールしていても、実際に何をやりたいのかよく分からないあの総理大臣よりも行動力はある。

駅や路線を見るとどうしてこのような所に、どうしてこんなにと思うことがある。それには事情があった。

浅草から群馬県の伊勢崎までを結ぶ、東武伊勢崎線がある。その始発駅の浅草駅は存在感が薄いのはなぜと取り上げている。

この路線は、全体で114.5キロメートルと、旧国鉄系の路線を除くと私鉄では日本一の長さだ。

浅草駅を出て急カーブが待っている。どうしてこんなに形になったのか。それは浅草駅の構造にあると指摘している。

浅草駅は隅田川の西岸に面した所にあり駅ビル2階部分にホームがある。駅を出るとすぐ右に急カーブで曲がる。ホームの端からカーブが始まっている。

浅草駅は1931年開業だが、東武伊勢崎線自体は1910年に全線開通していた。当時の浅草は今とは比べ物にならないくらいの繁華街で浅草の中心部に駅を作るための広大な土地を取得するのが難しかった。

こちらも妥協の産物なのかな。人生と同じでそんなに都合よく行かないからなあ。

これから行くのにいいだろうなあと思う場所はたくさんあるが、富山の黒部峡谷もその1つだ。黒部峡谷鉄道といえば、トロッコ列車で絶景を楽しむことができる。

そんな黒部峡谷鉄道だが、一般利用できない駅が6つもあった。その理由は、この鉄道の利用目的にあった。1926年に開通したが、黒部川利用した発電所建設を計画していた日本鉄道によって作られた。

その後、乗車を希望する人が多く、「生命の保証をしない」という注意書きのある便乗券発行して一般客の利用を認めたそうだ。

今の時代なら、炎上しそうなやり方だな。SNSや文春砲がなくて良かったね。

戦後になって、関西電力に引き継がれ、1953年に旅客鉄道専用になった。

鉄道の歴史には様々なことがあったのだな。