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薔薇とハナムグリ シュルレアリスム・風刺 古典新訳文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 光文社 |
発売年月日 | 2015/04/01 |
JAN | 9784334753108 |
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薔薇とハナムグリ
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商品レビュー
3.3
7件のお客様レビュー
著者の作品は昔からけっこう好きで、ほとんど読んできたつもりだったけど、こんなフザけた短編をたくさん書いていたとは知らなんだ。 それでも官能は随所に感じられる。 そこはモラヴィア。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
“シュルレアリスム・風刺短篇集”と銘打たれてはいるが、そこまでシュルレアリスム絵画的ビジョンでも、ブルトンらの諸著作のように不可解、複雑というわけでもない。一部の作品はどこかE・マコーマックの作品世界を思い起こす感じもあるが、あちらほどブッ飛んだ奇想というわけでもない。20世紀をずっと生きた作家だけに、風刺という点ではファシズムや社会的偏見、相互の無理解等を舌鋒鋭く批判というより、シニカルに戯画化している体といったところか。 また序盤の展開から人物関係の破綻や破滅、残酷なラストやキレのあるオチを(勝手に)期待していると、何かモヤっとしたまま幕を閉じるような作品が多い。異様なことが起きているのに登場人物が皆それを―諦め混じりに―そのまま受け入れてしまっているような。その辺りはプロパーな怪奇幻想系、ホラー作家とは異なる、実存主義的リアリズム作家によるものだからなんだろうか。 以下、各収録作について。 ・自宅のリビングに生えた木を巡る夫婦の意見の対立「部屋に生えた木」。妻の主張は現代の一部の主義の人間と共通するような。木=子供の象徴では、という指摘を聞いてなるほど、と。 ・寝てても目覚めてても己の夢の中で自己完結する男「怠け者の夢」。“夢”はこの収録作の多くに共通するキーワードかも。 ・薔薇の花壇と並ぶキャベツ畑を訪れたハナムグリの母娘「薔薇とハナムグリ」。母の思いに反し薔薇よりキャベツを好むハナムグリの娘が何を意味するかは一読瞭然だろう。 ・闇トレーダーの男が友人の薦めで先物買いした奇妙な商品「パパーロ」。グロテスクだが、寓話としては最もわかりやすい。この“パパーロ”って……。 ・奇怪な結婚披露宴の顛末「清麗閣」。主に花嫁の母親の視点で語られる、シュルレアリスムというより“変な夢”的一編。 ・眠り続ける怪物の夢によって支配される島と人々「夢に生きる島」。不条理な“夢”が現実化する、これこそが悪夢。 ・夫の上司夫人に招かれた女が、夫人宅で目にしたもの「ワニ」。ワニは主人公の妄想かと思いきや。富への執着やブルジョア趣味の鼻持ちならなさを嗤ったものか。 ・頭部から腐敗臭を放つ疫病が広まった国。罹患した者としていな者とで対立が起こる「疫病」。疫病や疾病によって起こる分断と対立。現代にタイムリーな内容かもしれない。 ・高名な評論家が死の床で友人に語った告白「いまわのきわ」。評論家の言葉は懺悔か、それとも嘘だったのか。 ・親娘3人が散歩の途中に見た、店先に飾られた“幸せ”「ショーウィンドウのなかの幸せ」。終盤の父親の言葉がどうしようもなく絶望的。 ・富豪で吝嗇家の男は自宅に溜め込んだ財産を、ついに銀行へ預けることを決断する「二つの宝」。これも中盤から現実と夢(妄想?)の境目があやふやになっていく一編。 ・捕えられた蛸が語る「蛸の言い分」。蛸は無論、人間達の主義や信条の違いの戯画化。ラストは……うん、やっぱりね。 ・最新の流行好きな妻とそれを理解しない夫「春物ラインナップ」。これほど意見が乖離してたら“完璧といっても過言でないほど気が合っていた”とは言えないんじゃw。 ・“金持ち”と“貧乏人”、二つの種族が棲む国についてのリポート「月の“特派員”による初の地球からのリポート」。これも寓話。 ・奇妙な立像の説明を長々と受ける作家モラヴィア「記念碑」。「鷲の紋章に鉤十字」という描写からしてナチズムへのストレートな批判のようだが、自分の感覚からすると戯画化された共産主義への風刺のように感じられる。
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どれも面白かった。ふざけてる感じの作風なんだが、読み終わるとゾッとする。当時の政治的軋轢により、自由な表現ができなかった苦肉の環境がこのように素晴らしいおどけ狂気な作品を誕生させることになったとは。明らかに変なのに、これが流行とか言われると、どうしても手に入れずにはおられなくなる...
どれも面白かった。ふざけてる感じの作風なんだが、読み終わるとゾッとする。当時の政治的軋轢により、自由な表現ができなかった苦肉の環境がこのように素晴らしいおどけ狂気な作品を誕生させることになったとは。明らかに変なのに、これが流行とか言われると、どうしても手に入れずにはおられなくなる女。舗装された道を歩けばいいのに、そんな自然に逆らった物など!と山道を歩いて遭難するような意固地な男など。明らかにおかしいのに、いとも簡単にその波に呑まれて流されてゆく人間の愚かさに、現代においても色あせずパンチをくらわしてくる。
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