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ヒトラーと哲学者 哲学はナチズムとどう関わったか
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 白水社 |
発売年月日 | 2015/01/01 |
JAN | 9784560084120 |
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ヒトラーと哲学者
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哲学とは何か、というと非常に大きなテーマになってしまうのだが個人的には真理や本質をいかに捉えるか、という学問であり、その究極の目的は人間がいかに正しく生きるか、ということを探求するところにあるのではないかと思っている。その意味で邪悪の権化のようなナチズムに真理の探究者たる哲学者が...
哲学とは何か、というと非常に大きなテーマになってしまうのだが個人的には真理や本質をいかに捉えるか、という学問であり、その究極の目的は人間がいかに正しく生きるか、ということを探求するところにあるのではないかと思っている。その意味で邪悪の権化のようなナチズムに真理の探究者たる哲学者がいかに関わったのか、に興味があったので手にとってみた。また国民社会主義、いわゆるナチズムとは何か、という問題も定義する必要があると思うのだがこれは個人的には社会主義の一種であって民族を軸にした共同体の繁栄を意図するものだという理解をしている。平たく言ってしまえば帝国主義の植民地競争に出遅れたドイツが民族としての優位性を打ち出し近隣諸国を植民地として支配し自国のみの繁栄を図ったものという理解。つまり国としての統一が遅れたためにアジアやアフリカで植民地を獲得できなかったドイツが、いわば自分たちと似たような白人の国家を植民地とするために支配民族という概念を持ち出す必要があったのではないかと。そのようなイデオロギーの形成に哲学者がどう関わったのか、のいわば告発の書。最初にヒトラーが哲学の要素をいかにナチズムに取り込んだのかが説明され、次に世界的に有名な学者でしかもナチ党員であったカール・シュミットとマルティン・ハイデガーのようなナチズムに加担した学者たちのケースが取り上げられ、次にナチに自殺、亡命、処刑といった運命を辿ったナチズムへの反抗者のケースが取り上げられている。思想内容がくどくど述べられたりしていないので哲学の知識が乏しい自分にも興味深く読めた。驚くのはイデオロギーの形成に手を貸したいわばナチズムの作成者の多くが大した処罰も受けず、戦後のドイツにおいてもそれなりに重きをなした、というところ。日本に比べて戦後処理を正しく行った、と評されることの多いドイツだが、それはヒトラーを初め一部の人間に全ての罪を押し付けてあとはほっかむりしただけなのだ、ということがよく分かる。その意味で本来吊るされるべきはアイヒマンではなくシュミットでありハイデガーであるべきであっただろう。非常に興味深い内容だった。
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アーレントは1940年代初頭、ニューヨークにいながら、ナチのヨーロッパにおける残虐行為の全容を確かめようとし始めた。最終的解決の噂は、彼女にも届き始めていた。リバーサイドパークで長い散歩をしながら、彼女はよく、思索しつつも悲しい恥辱の気持ちに襲われていたという。亡命者用のドイツ語...
アーレントは1940年代初頭、ニューヨークにいながら、ナチのヨーロッパにおける残虐行為の全容を確かめようとし始めた。最終的解決の噂は、彼女にも届き始めていた。リバーサイドパークで長い散歩をしながら、彼女はよく、思索しつつも悲しい恥辱の気持ちに襲われていたという。亡命者用のドイツ語新聞「構築」への寄稿では、ユダヤ人問題に取組み、論争を引き起こしつつも、考えたことを激しく主張し、人気を得ると同時に悪評も獲得する。1942年12月18日付の「構築」は、かつてアーレントが収容されていたギュル抑留所かr、あユダヤ人が強制移送されたことを伝えている。指名一覧が長々と好評されていて、そのユダヤ人全員が絶滅収容所に送られたのだ。ユダヤ人編集者たちはキリスト教世界は今こそ行動を起こすべきだと訴えていたが、アメリカ国内の報道機関は最終的解決の報は本当に根拠のあるものなのかと懐疑的だった。とすれば彼女の政治分析は土地狂ったユダヤ女の怒号として黙殺されていたかもしれない
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「ヒトラーの権力掌握以来、いまだに誰も精査していない部分がある。それは、哲学者集団が演じていた役割である」――哲学者というと、世捨て人のように社会や政治から離れて学問に打ち込む人々というイメージがあるかもしれません。しかし、彼らは本当に「残虐さ」から遠い場所にいたのか?この問いに...
「ヒトラーの権力掌握以来、いまだに誰も精査していない部分がある。それは、哲学者集団が演じていた役割である」――哲学者というと、世捨て人のように社会や政治から離れて学問に打ち込む人々というイメージがあるかもしれません。しかし、彼らは本当に「残虐さ」から遠い場所にいたのか?この問いに答えるべく、筆者が哲学者とナチズムの関わりについて切り込んだのが本書です。 第一章では、ヒトラーに協力した哲学者たちが扱われています。まず著者は、道徳思想で有名なカントや、偏見という「不合理」とは無縁に思われる論理学者フレーゲといった過去の偉大な哲学者たちにおいて、すでに反ユダヤ的な文章が見られることを指摘します。こうしたコンテクストのもと、ヒトラーは自身の主張を正当化する「哲学」を打ち立てていくことになるのです。また、ローゼンベルクをはじめとした御用「哲学者」たちがナチスに都合のいい差別的主張を「哲学」としてまとめあげ、ハイデガーを 筆頭とした当時の哲学者たちが自己の利益のためにそれに追随していく過程は、著者が暴いているように、とてもショッキングなものです。つまり、多くの哲学者たちはナチズムに無関心だったのではなく、積極的に加担していたのです。 第二章では、ヒトラーに抵抗した哲学者たちが扱われています。ベンヤミンやアドルノといったユダヤ人の哲学者のほかに、クルト・フーバーのようなドイツ人の抵抗者が扱われています。この章はきわめてドラマチックに書かれており、思想に関心がない方であっても興味深く読むことができるのではないでしょうか。とくに、ドイツ人でありながら、自身の哲学的な確信に基づいてナチズムに抵抗したフーバーの章は、感動的でもあります。 「哲学者」がテーマではあるものの、本書は思想の解説書ではなく、哲学者たちのルポタージュ、あるいはドキュメンタリーといった体裁をとっており、とても読みやすいものになっています。その一方で、本書が投げかける問いは重要なものであり、それゆえに一読の価値があるでしょう。現代(とくに日本?)では毒にも薬にもならないと思われている「哲学」「思想」こそが、歴史を動かし、虐殺さえをも引き起こすことがあるということに改めて気づかされます。 各論文は個別具体的な歴史の実証を試みたものです。そのため、国際文化関係を研究する際の着眼点や手法、議論の組み立て方などを学べる本としても適しています。文化をめぐる問題に関心がある人におすすめの一冊です。 (ラーニング・アドバイザー/哲学 KURIHARA) ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid= 1637717
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