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逃げる幻 創元推理文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 東京創元社 |
発売年月日 | 2014/08/21 |
JAN | 9784488168094 |
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逃げる幻
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商品レビュー
3.4
19件のお客様レビュー
如何にも英国の香りの担税なテイスト。駒月さんの訳を読んだのは初めてながら、彼女の力量によるところも多いのだろう・・特にダンバーの人格描写が彷彿とするような場面多出はそういったことの効果が出ている。 物語半ばまではどちらかといえば幻想文学的世界。場所、登場人物共に狭い空間での事、...
如何にも英国の香りの担税なテイスト。駒月さんの訳を読んだのは初めてながら、彼女の力量によるところも多いのだろう・・特にダンバーの人格描写が彷彿とするような場面多出はそういったことの効果が出ている。 物語半ばまではどちらかといえば幻想文学的世界。場所、登場人物共に狭い空間での事、起こった殺人事件もおのずと絞られての探索となった。逃亡兵、ヒトラーユーゲントに連ねて行く伏線回収の手際が素晴らしい。 精神科医ウィリングとしてシリーズ化されているようだ。アメリカナイズした思考、精神病理的解明の語りはちょっと受け入れ難いニュアンスを覚えた(少年兵への糾弾的思考) 2014年初版の文庫版だから近年の作品化と思えば1945年刊行との事で、そう言えばすとんと来る。20世紀初頭にブームとなったクラシカルな怪奇的演出が随処に在り、私には結構それが面白かったけど。 ハイランドという地域が持つ処々の民族、人種が作り上げて来た歴史とそれによりもたらされた影(建物や遺跡に描写に感じられる)を借景として楽しめた。
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1945年。米海軍大尉のダンバーは、とある使命によってスコットランドのハイランド地方へ向かう途中、飛行機で隣席だったネス卿と親しくなる。ダンバーの前職が精神科医であると知ったネス卿は、ある裕福な家の少年のことを話しだす。傍目から見れば何不自由ない暮らしをしているはずのその少年はひと月のあいだに何度も家出を繰り返し、数日前突然ひらけた荒地から姿を消してしまった……。家出少年ジョニーは何に怯えているのか。家庭に、あるいはこの土地に呪われた秘密が隠されているのか。スコットランドの田舎に舞台を移した〈精神科医ベイジル・ウィリング〉シリーズの一作。 生き残った少年のトラウマと田舎の閉塞感とナチの残党、この三つが織りなす緊張感だけで200ページを読ませる。やっと殺人事件が起こるのはそのあと。マクロイの筆力が高いからこそ成立している(カバー裏のあらすじはかなりのネタバレ)。 中盤になってこの物語が『バスカヴィル家の犬』にオマージュを捧げているとわかり、マクロイのホームズ・オマージュ!と嬉しくなってしまった。黒犬の伝承やインヴァー・トーの古城、谷間に突如姿を現わす湖などの幻想的な描写が冴えに冴えており、蘊蓄も楽しい。都会的なイメージが強いマクロイだけど、クラシカルな探偵小説らしい怪奇演出もイケるんだなぁと感心。この人は建築の構造を説明したり部屋のインテリアに性格を持たせたりするのが巧いので、このまま館ミステリを書いても絶対面白かったと思う。 本作のキモはやはりダンバーの一人称語りだろう。ミスリードの狙いが目につきすぎるところはありつつ、結末は予想外だった。ガタイが良く、精神科医として他人を分析することに慣れ、主観に絶対的な自信を持つ男性から見た偏見だらけの世界を冷徹にトレースしているのがヘレン・マクロイという女性作家であることをどうしても考えずにいられない。ダンバーのマージョリー・ブリス評を、どんな気持ちで書いたのだろう。 物語はウィリングたちアメリカ人が、ローティーンの少年を残忍な狂信者に仕立てあげてしまうナチとファシズムを断罪して終わる。ウィリングが逃亡捕虜を間接的に殺し、それが是とされているところは今の感覚ではやっぱり飲み込みづらい。だが、進歩的な顔をした彼らの前にハイランドは何層にも重なった争いの歴史を見せ、踏み躙られてきた者たちが地霊となって悲しみの声を響かせ続けている。
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ツイストの効いたフーダニットとも言えるが、少年は何に怯えているのかという謎かけの方がお話を引っ張る感じ。ものすごく端正な本格で、どのくらいの読者が騙されるかは知らないが(迂生は引っかかりましたよ)、とても楽しい。ただ不可能趣味の方はてんでなってない。
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