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飛鳥・藤原と古代王権 同成社古代史選書11
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飛鳥・藤原と古代王権 同成社古代史選書11

西本昌弘(著者)

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飛鳥・藤原と古代王権 同成社古代史選書11

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 同成社
発売年月日 2014/04/01
JAN 9784886216557

飛鳥・藤原と古代王権

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2025/12/24
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飛鳥・藤原地域の遺跡群を「王権の正統性」と「祭祀制度」の観点から読み直す専門研究。本書の特色は、飛鳥の石造物や古墳が、かつての王族たちにとって「どのような感情の場」であったかを生々しく復元する点にある。単なる制度史に留まらない人間ドラマを地形や建築から読み解くことができる。 斉明天皇陵(越智岡上陵)については、牽牛子塚古墳(八角墳)と隣接する越塚御門古墳(大田皇女墓)の発見により比定をほぼ確定させた。双室の横口式石槨、夾紵棺、八角形の墳丘、そして陵前に葬られた大田皇女墓との位置関係から比定される。越塚御門古墳は牽牛子塚(斉明陵)の陵前に位置する簡素な石槨墓で、大田皇女墓の可能性が高く、斉明陵比定の決定打となった。 文武3年(699)の修造の意義については、天智・斉明両陵の「修造」は、持統・文武朝に成立した「近代先帝」(現体制に直接繋がる直系の天皇)を特別視する祭祀制度に合わせ、天武陵と並ぶ格式を整えるための外貌改造であったとする。これは「新造」ではなく、律令祭祀制度(国忌・荷前)の整備に伴う「外貌の格上げ」として定義される。 建王の墓所については、斉明が溺愛した孫・建王の墓所「今城谷」を、通説の大淀町ではなく明日香村の「イマキ(酒船石遺跡周辺)」に求め、そこを王族の慰安と遊興のための「王室庭園」かつ「殯(もがり)の場」として再構成する。酒船石遺跡の黒木柱(樹皮付きの柱根が残る柱穴SB1401)は、建王の殯宮(喪屋)の遺構である可能性が高い。黒木造は、樹皮付きの丸太を用いた建築で、大嘗宮や殯宮(喪屋)など、神や死者を「賓客」として遇する場に用いられた。 天智期関連では、斉明の強い遺志を受け、天智は最愛の孫・建王を斉明陵へ改葬・合葬させ、妹の間人皇女も同陵に納めた。政治的パフォーマンスとして、大田皇女(天智の娘)葬送に際し、「民衆を労役させない(石槨の役を起こさず)」と言明。これは戦時下の逼迫した状況や、仁政のアピールとして機能した。石槨の役とは墓造りのための民衆動員で、中大兄皇子は斉明の遺志を奉じ、大田皇女墓においてこれを行わず「省力化」を強調した。 宮跡の寺院化として、天智は母・斉明の追福のため、彼女の宮殿跡(川原宮、朝倉宮)をそれぞれ川原寺、筑紫観世音寺へと造り替えた。これは「王権の記憶の編集」でもあった。川原寺などで出土した緑釉波文塼は、仏堂の須弥壇上面に敷き、蓮池(浄土の景観)を立体的に表現した視覚装置として機能した。 藤原京研究では、近年主流の「大藤原京説」に対して、律令の坊令規定(12人)との整合性から岸俊男の「十二条八坊説」を再評価し、京域外の道路遺構は「排水・郊外用」とする独自の復原案を提示している。養老職員令の「坊令十二人」規定や、行政単位としての「条」の運用との矛盾を指摘する。 「新益京(あらましのみやこ)」については、「益」は「拡大」ではなく「勝(まさる/優越)」を意味し、従来の宮都より質的に完備した「優れた新都」という賛美の名であるとする語義再考を提示。 屋部坂は藤原宮へ直に向かう坂(現在の日高山丘陵)で、官人の往来で赤土が露出した「焼けつつ」ある状態が万葉歌に詠まれた。往来による地表変化が具体的に描写される。 注意点として、藤原京の規模については、著者は「十二条八坊(岸説)」を支持し、「十条十坊(大藤原京説)」を「律令規定(坊令12人)に合わない」として批判しているが、現在は考古学的には大藤原京説が有力。著者は文献との整合性から異を唱えており、大藤原京説(小澤説)が現在、発掘現場レベルでは通説化していることを念頭に置く必要がある。 「はしがき」にある通り新発見に基づく書き下ろしを含み、論理が明快で図版・系図も整理されている初学者向け。死者を「賓客」として迎える殯の思想や、母のために宮殿を壊して寺を建てる天智の振る舞いなど、「喪の場の色彩」「丸太造りの建物の匂い」「官人が踏みしだく赤い坂」など、視覚的・体感的な描写に繋がる材料が豊富。飛鳥の遺跡を通じて、王族たちの感情の場を立体的に理解できる一冊。

Posted by ブクログ