奥までキュッ 双葉文庫

葉月奏太【著】

• 販売会社／発売会社: 双葉社
• 発売年月日: 2013/08/09
• JAN: 9784575516098

商品レビュー

2013/08/24

相応のラヴストーリーなのにさらっと流れてしまうのが惜しい

[ＤＳＫ]

あらすじにある「ハウスクリーニング」の言葉から想像できるストーリーでほぼ間違いない。様々なご家庭のお掃除という要望を承りつつ、主に人妻からの肉欲のご要望もこなしていく展開を土台にはしているが、そればかりでもない捻りが随所に加えられている。ヒロインもまた、かつての憧れの先輩や恋仲になるチャンスを逃した同級生、あるいは後輩といった、主人公と縁のある人物を多く配して、ある種の哀愁が漂う情交を描いてもいる。もっとも、中には主人公の兄と不倫しているような奔放さを見せるヒロインもいるのだが……。そして、軸となるのは一目惚れする未亡人とのラヴストーリーである。

ただ、お隣さんや兄嫁なども含めて総勢７人ものヒロインはさすがに多いと言わざるを得ない。そして、ヒロイン同士の繋がりがほどんど無いため、未亡人との恋の進展は序盤・中盤・終盤にそれぞれあるのだが、全体としてはヒロインが順繰りに流れていく連作短編のような趣でもある。この散漫な印象は、『週刊大衆』に１年間かけて連載されたものを単行本化していることに起因しているのであろう。メインのストーリーが少々埋没しているようで残念。

そして、何より物足りないのは、良好なシチュエーションで淫靡な前戯が描かれていながら、いざ合体に及ぶ頃には紙面が尽きるのか、すぐにあっさり果てて（達して）しまうことである。これからという時に終わってしまうのが最後まで続くのは、単行本化の加筆・修正で多少なりとも補完してほしかったところである。