世界紛争地図 日経文庫

日本経済新聞社【編】

• 販売会社／発売会社: 日本経済新聞出版社
• 発売年月日: 2013/07/16
• JAN: 9784532112875

商品レビュー

2014/07/27

ソチから半径500キロの円を描くと、ウクライナのクリミアをはじめとしてグルジアの南オセチアやアブハジア、チェチェンのグロズヌイなどがすっぽり入る。カスピ海から黒海に至るカフカースは歴史的に紛争の火種を抱えた地域で、そこでオリンピックを開催するということには相応の意図や効果が存在している。
そんな世界の主要な紛争47個を簡単に紹介。導入のそのまた導入と言ったくらいのごく簡単な解説だし、ダルフール紛争が紹介されてないなど網羅性にも欠けるけど、世界のどこでどんな紛争が起きているのかを概観するのには手軽でいい。
ただ、まえがきで「テロリスト対国家という非対称な戦い」と書いているように、国家という確固たるものが存在している、という素朴な世界観で描かれてしまっている。現代の紛争地域では、国家と反政府組織との差は極めて曖昧で、国際社会の承認があるかどうかでしかない。その国際社会の承認ですら各国の思惑次第であり、大国間で支持する勢力が異なることもしばしばある。国家の正統性は、決して所与のものではない。そこのところが描けていないのはちょっと残念。

2014/01/09

航空機を使えば世界のほぼ全域を旅することができ、インターネットを使えば世界中の人々との交流が可能なこの時代にも、依然として多くの対立や紛争が続いている現実。
たとえば植民地支配が残した禍根、たとえば国境線、宗教、少数民族、資源、利権、身分格差、貿易。それだけではない。ひとつの解放、ひとつの独立、ひとつの革命がさらに新たな争いを生みだしてゆく。

本書では世界各地を東アジア、東南アジア、南アジア、中東・北アフリカ、アフリカ、欧州、旧ソ連地域、米州の10地域に分割、現在継続中の主だった紛争47例を取りあげる。
東アジア、主に日本からは竹島、尖閣諸島、北方領土。中東はイスラエル・パレスチナ問題やシリア内戦、旧ソ連地域からはチェチェン、キルギス、グルジアなどの衝突、米州からはメキシコの麻薬問題など、すでに多くの耳目を集めているものからあまり俎上に上らないものまで、その歴史的背景や現状をわかりやすく解説。
内容は日本経済新聞朝刊国際1面に掲載した記事を加筆。執筆は日本経済新聞社で国際報道に携わる海外の駐在記者、元駐在記者。