毒婦伝説 高橋お伝とエリート軍医たち

大橋義輝(著者), 大橋義輝(著者)

• 販売会社／発売会社: 共栄書房
• 発売年月日: 2013/04/22
• JAN: 9784763410542

商品レビュー

2023/06/20

正直衝撃的な一冊。時は明治時代、斬首によって死刑に処された最後の罪人が女性、しかも美人。罪状は、1人の男性を剃刀で殺害した罪。それだけ。その死後、何故か解剖され、性器を切り取られアルコール漬けにされ、歴史の狭間で何度かこの世に出てきたものの現在も行方不明なばかりか、頭蓋骨も何処かに行方不明。加えて、死後に歌舞伎等の演目で希代の毒婦としてあることないこと面白おかしく書き加えられ、そして歴史の闇に葬られた女性、高橋お伝さんの話だ。
恥ずかしながら、この様な女性が、この国の歴史に存在していた事とすら、私は全く知らなかった。
彼女を腑分けし、臓器を見世物にするきっかけをつくったのは、この国の医療の発展に大きく貢献した立派な医者や博士として歴史にその名を刻んでいる人達であるが、実は大戦中に子供で人体実験などしたことで有名な731部隊の主要メンバーであったりと、真実は一体何なのか、何処にあるのか問いたくなる、ある意味悲しい作品だ。
彼女の解剖や大戦中の生体実験が、どのくらい我が国の医療の発展に寄与したのかは甚だ疑問であるが、非人道的な事を我々の先祖がしたことは事実である。ここは、人権重視の世の中にもなったことであるし、過去の過ちと真剣に向き合う時ではないかと思う。
特に、たった１人の殺人罪で即死罪となり(女性が男性を殺したことが重罪の判決の根拠か)、その後人とは思えぬ様々な仕打ちを受けた高橋お伝さんについては、我が国がしたことを我々は真摯に見つめ直す必要がある。宗教は違うがフランスのジャンヌダルクがそうされた様に、彼女の復権裁判を行うべきではないだろうか。
云うまでもないことだが、その前に、今も何処かに隠されている彼女のアルコール漬けにされた下半身と頭蓋骨を見つけ出し、成仏していただくことが先決である。
正に、現代社会の誰もが知らない日本の恥部にメスを入れた一冊である。