現代語で読む 生まれ出づる悩み 現代語で読む名作シリーズ5

有島武郎【作】, 高木敏光【現代語訳】

• 販売会社／発売会社: 理論社
• 発売年月日: 2013/02/21
• JAN: 9784652200070

商品レビュー

2019/03/29

タイトルに惹かれて手にしました。
母に先立たれた幼子たちへのメッセージである「小さき者へ」。後悔と愛しさと優しさにあふれた言葉が、胸をうるおすようでした。

もうひとつ収録されている「生まれ出づる悩み」は、作家が、その親友の心情を想像するお話。親友は漁師の家に生まれ、荒れ狂う海へ漁に出る日々の厳しい生活を送りながら、山を描き続けたいと苦しんでいます。場所の情景が、「君」という親友の心情とカッチリ合わさるために、文字を追うだけで映画のような映像が見えてきます。

2015/08/15

小さき者へ

人生はじゅうぶんに淋しい。私たちは、ただそう言って澄ましていることが出来るだろうか。
きみたちと私とは、血を味わった獣のように、愛を味わった。
行こう、そして出来るだけ私たちの周囲を淋しさから救うために働こう。

この言葉はとても心に刻まれました。本当にはっとするような愛の言葉で溢れていて、これが名作なのかと感銘を受けました。
愛の中にも潔さもはいっているような、そんな誠実で切実なものが迫ってきました。

生まれ出づる悩み

生活と芸術の狭間でもがき苦しむ君が描かれた作品。読んでいるとこっちまで息をするのも苦しくなるような苦悩が伝わってくる。それでも描くのをやめられない、どうしようもない人のことを本当の芸術家というのかと、実感した。私にはないことだが、理解とか共感を超えて伝わってくるものがあった。