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オーロラの雪
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 猫の言葉社 |
発売年月日 | 2013/01/01 |
JAN | 9784904196106 |
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商品レビュー
5
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※このレビューにはネタバレを含みます
クリスマスの前の日、サリは一人森へスキーをしに出かける。 サリは亡くなったおとうさんのことを思っていた。 物語のおわりにサリが気づく、名前が与えられることの輝き。 私たちは、彼女がその素晴らしい事実にたどりついたことに、しかしとてもささやかなことであるがために驚きを覚えるかもしれない。 おとうさんが生きていた頃、氷の湖の上、家族3人を運んでくれたシーツに3人の名前が書いてあったらと想像したときや、洞窟のおくへ消えていったおとうさんとサリの2人の名前が寄り添って眠るすがたを思い浮かべたとき、サリはもう既に心のどこかで、名前が特別なものであることは感じていたのだろう。 一人きりの世界で、サリは様々のものに思いを馳せる。石やモミの木には名前がないが、在るべくして在り、彼女を見まもるあたたかい森の魂のようだ。 反対に、ひっそりとたたずむ空き家ーーここでは人に捨てられてしまった名を持たないものの象徴として描かれているのかーーには、光の届かない闇があって、彼女のぽっかり空いた心につけ込んでのみこんでしまいそうだったかもしれない。 サリが自分のおこずかいで買った、赤いかざり。それは、今まで見たモミの木の中で一番大きなモミの木へのプレゼント。サリは木のぬくもりを感じながら、きっと天国のおとうさんへ届けたかったのだろう。かざりが風に揺れるたびに、チリンチリンと音を鳴らして、サリに語りかけるだろう。 彼女がふりむいた時に見たオーロラは、空からの、森からの、彼女へのプレゼントだったらいいな。なんだか大切なことに気づきそう…そう感じていたサリの心を一気にふるわせたのだから。死ぬことってなんなのだろう、自分はおとうさんとなにが違うのだろう。そんなサリが出した答えは、とてもきらきらしていて、雪の上に舞い降りる妖精のようだと私は思った。 美しい言葉たちが、美しい色のキャンバスに散りばめられている。 「少し高いところに大きな石がある。 手袋で石の表面から雪をはらいおとすと、 緑のコケがあらわれた。 コケは石をあたためる毛皮、 あるいは、前かけなのだ。」 「洞窟の中に向かって、自分の名前をさけぶ。 サリィィ サリィィ こだまがこたえるのを待ったが、かえってこない。 こんどは、おとうさんの名前をさけぶ。 サカリィィ サカリィィ こんども、こだまはかえってこない。 サリとおとうさんの名前は洞窟のおくへ行ったきり。 洞窟が二人の名前をのみこんでしまった。 きっと二人の名前は、 洞窟のおくで、よりそってねるのだろう。」 「サリは、 あのモミの木が自分についてくるようにかんじた。 見えないけれど、 うしろで見まもってくれているように思えるのだ。 サリがとまると、 モミの木もとまる。 サリが、また歩きだすと、 モミの木も動き出す、というように…」 「人は、ねむりにおちるまぎわに、 その日あった大切なことが 次々と心にうかぶという。 きっと今夜は、 洞窟の中にさけんだ サリとおとうさんの名前とともに、 森の動物たちの小さな足あとが、 雪の帯となって、 サリの目の前にあらわれるのだろう。」 「サリはとまって、 自分の名前の最初の文字を雪に書いた。 そして、なんどか名前をいってみた。 サリ サリ サリ たった今、オーロラの色がうつった雪の上の 自分の文字を見て、サリはこう思った。 「名前があるってことは、 たしかに、この世に生まれたってことなんだ」」
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