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なつかしい時間 岩波新書
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 岩波書店 |
発売年月日 | 2013/02/22 |
JAN | 9784004314141 |
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商品レビュー
4.3
22件のお客様レビュー
「だから、/何をいいうるか、ではない。/何をいいえないか、だ。」と書き留めた長田弘は、まさにこの矛盾というか「間」を生きようとした人ではないかと考えてしまった。言葉を重んじつつ、言葉で語り得ない事柄(つまり沈黙の重み)をも大事にする。人々の間で交わされる約束事を守りつつ、そこで明...
「だから、/何をいいうるか、ではない。/何をいいえないか、だ。」と書き留めた長田弘は、まさにこの矛盾というか「間」を生きようとした人ではないかと考えてしまった。言葉を重んじつつ、言葉で語り得ない事柄(つまり沈黙の重み)をも大事にする。人々の間で交わされる約束事を守りつつ、そこで明示されない不文律についても注意を払う。そうした姿勢はまさに「イエス・ノー」ですべてがクリアに処理される今において分が悪い。事実、私自身疑念や異論を抱いたエッセイもある。しかしだからダメなのではない。逆にその弱みの中にこそ魅力がある
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付箋をつけはじめたら、全ページになってしまう本。全付箋本。じっくりゆっくり2ヶ月ほどかけて読んだ。んで計算したわけではないけれど、本日、2021最後の日、読み終えた。 NHKの『視点・論点』で語られた51のメッセージ。 併読していたオードリー若林さんの本とも、内容がつながってい...
付箋をつけはじめたら、全ページになってしまう本。全付箋本。じっくりゆっくり2ヶ月ほどかけて読んだ。んで計算したわけではないけれど、本日、2021最後の日、読み終えた。 NHKの『視点・論点』で語られた51のメッセージ。 併読していたオードリー若林さんの本とも、内容がつながっていた(と思う)。 ひとりひとりがこの本に書いてあること、まさに今、見直さなくてはならないことを意識してゆけば、日々は豊かになり、未来は明るい、きっと。 この本は2013年に出版され、著者は2015年にこの世を去っている。けれど、いま、長田さんに聞きたいことのこたえは、ほぼこの本の中に書かれている。唸る。すごい。風景を、眺めを、揺り動かされる心を、その心から生まれる言葉を、大切に育んでいこう、そんなことを思わせてくれる。
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1995年から2012年までの17年間、NHK「視点・論点」で著者が担当した48回分と同じ時期に話した別の3篇をあわせて収録したエッセイ集です。 現代において「時代の影」へと追いやられてしまった尊いものに目を向けるような問題提起のエッセイ集といったふうでした。「そこが問題なので...
1995年から2012年までの17年間、NHK「視点・論点」で著者が担当した48回分と同じ時期に話した別の3篇をあわせて収録したエッセイ集です。 現代において「時代の影」へと追いやられてしまった尊いものに目を向けるような問題提起のエッセイ集といったふうでした。「そこが問題なのではないですか」にいたるまでの分析や感じていることが細やかです。だから読んでいて「うん、たぶんそうなんだろうなぁ」とこちらが思えるという、理解する上での納得という土台に乗っかるような問題提起なのです。少なくない章でその具体的な答えを探し実行するのを読者に委ねていましたが、その問題提起に至るまでのなかで、近代の古典などを引いたり紹介したりしながらですから、読んでいてもなかなかおもしろみがあるのです。文学世界の碩学の話を聞いている気分になります(著者は詩人です)。 どういった事柄を問題として提起しているか。たとえば、発信力ばかり叫ばれる今、受信力だって同じくらいいやそれ以上に大切ではないか、というようなことを述べていらっしゃる。これは98年の時点でこう考えておられるのでした。受信力については、リテラシーを磨こうという言説が今、これに対応しだしていますが、本書の後半で著者もリテラシーについてしっかり書いています。 また、風景の中で自らの小ささを感じる経験がとぼしいから、尊大な人が増えたのではないかという説にも、そうかもしれないと思いました。「風景の中にいる」ってことをしないですよね、なかなか、自分も含めて多くの人がそうなのではないでしょうか。 といったように、本書では言葉や記憶や風景や対話、そして時間といったものを、温故知新のように、かつての在り方を知り今また再び確かめることの大切さを問い、訴えたものだと言えるでしょう。とはいえ、説くとか訴えるとかの言葉を使ってでは本書の感想としてはズレてしまいます。もっと、解きほぐされた言葉で、言葉にならないものがあることを見据えた上で語りかけてくれています。 著者自身の豊かな世界観から発せられる数々の考察は、現代人の貧しい世界観を自問するきっかけとなるものだと思います。世界観なんてものを俎上に載せると、正しいか正しくないかでの二択で世界観が語られたり、散文的に乱立する世界観をイメージしたりしがちかもしれません。でも、この本から学べることはそういった種類の見方ではなく、その世界観が豊かなのか貧しいかです。 僕がそこから感じたのは、まず豊かな世界観を持つようになってから、たとえば経済を考えてみてはどうなのだろう、ということでした。多様性といわれますが、多様性の前段階に豊かであること。そうした豊かさの基盤が、多様性だって根付かせてくれるのではないか。同じフィールドで共存しうるというのはそういうことなんじゃないでしょうか。 ……などなど、きっと何度も本書を読み返せば、いっとき豊かな気分になったその効果が板についてきそうな気がするのでした。
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