おとな養成所 光文社文庫

槇村さとる【著】

• 販売会社／発売会社: 光文社
• 発売年月日: 2012/10/11
• JAN: 9784334764838

商品レビュー

2014/11/02

　前半だけを読んでみれば、アラフィフ主婦漫画家のロハス生活指南書といったイメージが強いが、後半からは吹っ切れたのか凄まじい過去の告白を交えた深刻な人生論へと雪崩れ込む。読み終わって振り返ってみれば、笑いあり涙ありエロあり風流あり仕事論あり芸術論あり社会批判あり上達論あり生活術あり健康法ありといった、かなり充実した内容となっている。

　本書一冊の文面だけでの想像であるが、著者の若い時はかなりピリピリした生き方であったのではないかと思う。歳を重ね経験を積む度に自分が築きあげてきた人間性とでもいうべきものを認識し了承し表現をし続けてきたという生き方が伝わってきた。齢５０を越えたところで、それ以上の年齢を重ねてきた人から見れば「ひよっこ」であるかもしれない。しかし個々人それぞれの経験の豊富さにもよるが、立場や勢いのアドバンテージが通用しなくなるような時期からは「とりあえずの完成形」を意識してもいいのではないだろうか。

　少女漫画家ということであるが、いい意味でもそうでない意味でも画質はあまり「女の子女の子」していない。幅広い守備範囲からも分かるが、著者の「絵」というものに対する情熱と繊細な哲学はどんな分野の人にも大いに参考になる。若いときでも歳をとってからでも読んでおきたい一冊。