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夜毎に石の橋の下で
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 国書刊行会 |
発売年月日 | 2012/07/25 |
JAN | 9784336055170 |
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夜毎に石の橋の下で
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商品レビュー
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史実と虚構を綯い交ぜにしながら、 キャラクターに厚手の肉付けを施して物語を組み立てた レオ・ペルッツ(1882-1957)の、 短編連作の形式を取った幻想的な歴史絵巻。 16世紀末プラハのユダヤ人大富豪 モルデカイ・マイスル(1528-1601)は、 いかにして財を成したか、 ...
史実と虚構を綯い交ぜにしながら、 キャラクターに厚手の肉付けを施して物語を組み立てた レオ・ペルッツ(1882-1957)の、 短編連作の形式を取った幻想的な歴史絵巻。 16世紀末プラハのユダヤ人大富豪 モルデカイ・マイスル(1528-1601)は、 いかにして財を成したか、 どれほど若く美しい妻を愛していたか、 彼女が亡くなって深く嘆き悲しんだか――といったことが、 後世の人物によって語られる。 ストーリーはマイスル夫妻と三角関係を形成する、 ボヘミア国王にして神聖ローマ帝国皇帝ルドルフ二世(1552-1612)、 及び皇帝を取り巻く人々の逸話で構成されている。 1589年、秋のプラハのユダヤ人街で ペストが猛威を振るっていたが、 この災いは、ある罪によってもたらされたのだと、 死者の声を通して知ったユダヤ教の高徳のラビこと イェフダ・レーヴ・ベン・ベザレル(1525-1609)は、 石橋の下で絡み合う紅薔薇とローズマリーを引き離した。 だが、ラビは何故、 それらの植物が惨事の元凶の象徴だと知っていたのか……。 この謎が、数々のエピソードが開陳されるにつれて解き明かされていく。 天文学者にして占星術師ヨハネス・ケプラー(1571-1630)に 運勢を見てもらった青年貴族 アルブレヒト・ヴァーツラフ・エウゼビウス・ズ・ヴァルトシュテインの、 運命を変えた一夜の出来事、「ヴァレンシュタインの星」が、 誤解や行き違いが織り成す喜劇の様相だが、 当人は至って真剣――というところが、一層愉快。 短編映画になっても面白そう。 ちなみに、彼のモデルは 三十年戦争(1618-1648)期のボヘミアの傭兵隊長 アルブレヒト・ヴェンツェル・オイゼービウス・フォン・ヴァレンシュタイン (1583-1634)。 彼はハプスブルク家に仕え、ハンガリーでオスマン帝国と戦いつつ、 裕福な未亡人と結婚し、 先立った彼女の遺産を元手に資産を増やして傭兵を集めたが、 ボヘミアの王位を狙っていると疑われ、暗殺されたという。 後代の人々の、主要登場人物たちの素晴らしさも愚かさも ひっくるめて愛おしむような語り口が、胸に沁みた。 既読の小説ではキース・ロバーツ『パヴァーヌ』、 あるいはマンガに喩えると、 萩尾望都『ポーの一族』などのエンディングにも似た、 しんみりした雰囲気が物悲しくも心地よかった。 そして、様々な事件を黙って見守った石の橋は現在、 カレル橋と呼ばれている――。
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1589年、ルドルフ2世統治下。プラハのユダヤ人街を疫病が襲った。子どもばかりが命を落とすその災厄は、「『モアブの罪』(姦通罪)によるものだ」とお告げがあった。高徳のラビ(ユダヤの宗教指導者)は「姦通を犯したものは申し出るように」と促す。しかし、該当者は現れなかった。再度の託宣は...
1589年、ルドルフ2世統治下。プラハのユダヤ人街を疫病が襲った。子どもばかりが命を落とすその災厄は、「『モアブの罪』(姦通罪)によるものだ」とお告げがあった。高徳のラビ(ユダヤの宗教指導者)は「姦通を犯したものは申し出るように」と促す。しかし、該当者は現れなかった。再度の託宣は「主のほかにそれを知るのは汝(=ラビ)のみ」。ラビには1つ、思い当たる節があった。ラビが向かった石の橋の下にあったものは何だったのか。 謎めいた冒頭作(「ユダヤ人街のペスト禍」)を受け、神聖ローマ皇帝、ユダヤ人豪商、美しい若妻「麗しのエステル」、ボヘミア貴族、芸人、錬金術師、さまざまな人々の人生の一コマが交錯する、14の短編が収められる。それぞれは独立した話のように見えながら、時代を行きつ戻りつし、石橋の下の赤い薔薇と白いローズマリーが紡ぐ物語に集約される。 砂に隠れた細密画のように、こちらを一吹き、あちらを一吹きしていくうちに、次第に全体像が見えてくる、ミステリのような仕掛けも読み所だ。 しかし何と言っても中世プラハの耽美的で謎めいた雰囲気が本作の魅力だろう。芸術作品や宝飾品が豪奢に宮殿を彩り、錬金術と魔術が人々の魂を捉えていた時代。ユダヤ人街の石畳を行った奥に潜むものは闇だけではない。 「犬の会話」「サラバンド」「横取りされたターレル銀貨」は、元になった昔話や伝承が透けて見える印象。 「ヴァレンシュタインの星」「忘れられた錬金術師」は占星術や錬金術が主題。 伝承だけでなく、ルドルフ2世が芸術に浪費し、錬金術にのめり込んだという史実も盛り込まれ、またヨハネス・ケプラーなどの実在の人物も登場する。高徳のラビ、レーウは、ユダヤ神秘思想の謎めいた巨人だが、ルドルフ2世に謁見した記録が残るという。豪商マイスルも実在し、作中のように多くの慈善事業を行ったが、彼がなぜ巨万の富を築くにいたったかはまったくの謎のようである。ユダヤ人と皇帝の対比は、経済的に著しく発展した流離いの民ユダヤ人と、それを排斥しようとする市民の確執の暗喩に見えなくもない(実際のルドルフ2世はユダヤ人に対しては寛容政策をとったそうであるが)。 いずれにしろ、中世という時代は、現実と空想が入り交じった世界を紡ぎ出すには恰好の舞台なのかもしれない。 訳者解説は、チェコのユダヤ人街という、一般的に日本人にはいささか馴染みの薄い世界を、適確にディープに紹介して秀逸。かっちりした内容ながら、本文の続きのような重厚な印象を残す副題が心憎い。 さまざまな統治者を迎えつつ、中世文化の中心地として栄えたプラハという街は、一筋縄ではゆかぬ歴史を持つ。複雑な古都は、したたかな奥深さを秘める。 古き街の堅牢な石橋。夜の帳のねっとりとした濃密な空気が漂う。甘美な夜の夢である。
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シェイクスピアのようである、というのがこれを読んだ第一印象。 韻を踏んだ言葉の羅列は目に心地よく、よくわからないまま読み進めてしまう。(それがいいのかはさておき) 短い寓話がいくつも重なり、なんだろう?と疑問に思ううちに、「この名前に見覚えがある」と、同じ登場人物が、細い糸...
シェイクスピアのようである、というのがこれを読んだ第一印象。 韻を踏んだ言葉の羅列は目に心地よく、よくわからないまま読み進めてしまう。(それがいいのかはさておき) 短い寓話がいくつも重なり、なんだろう?と疑問に思ううちに、「この名前に見覚えがある」と、同じ登場人物が、細い糸で物語をつなぐ。 詩のようで楽しかった。けど、本当は3~4回読むとより一層面白いんじゃないかなぁ。時間ができたら再読したい。
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