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オリンピックと商業主義 集英社新書
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 集英社 |
発売年月日 | 2012/06/15 |
JAN | 9784087206456 |
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オリンピックと商業主義
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商品レビュー
3.3
9件のお客様レビュー
オリンピックと「金」の歴史を紐解きながら、「オリンピックにおける商業主義とは何なのか」、「オリンピックは、なぜ商業主義を必要としたのか」、「商業主義による弊害とは、具体的にどういうことなのか」といったことを問い直している。 本書では、「オリンピックが商業主義に陥る」とは、オリンピ...
オリンピックと「金」の歴史を紐解きながら、「オリンピックにおける商業主義とは何なのか」、「オリンピックは、なぜ商業主義を必要としたのか」、「商業主義による弊害とは、具体的にどういうことなのか」といったことを問い直している。 本書では、「オリンピックが商業主義に陥る」とは、オリンピック開催資金として「企業の金」が大きく入り込んだ結果、企業がオリンピックの運営に口を出し始め、オリンピックの価値や質(選手たちが、最高のパフォーマンスを発揮できる環境をつくることなど)が損なわれるという現象だと定義する。一般にオリンピックが商業主義化したのは1984年のロサンゼルス大会だといわれるが、本書では、確かにロサンゼルス大会で「企業の金」が大きく入り込むようになったという意味でオリンピックの「商業化」が進んだことは事実だが、明確な「弊害」はなかったとし、1988年のソウル大会でテレビ中継のために競技時間が変更されたことが「商業主義による弊害」の発端になったとする。そして、現在のオリンピックにおける「商業化の弊害」とは、営利団体ではないはずのIOCが、収入を極大化しようとしているところにあると指摘する。 本書の内容で興味深かったのは、1984年のロサンゼルス大会が空前の黒字になった要因は、徹底した商業化の成果というよりも支出の抑制であったという指摘である。そして、支出を抑制できたポイントとしては、国際競技連盟からの要求に対して一線を引いて屈しなかったことがあったという。一方、モントリオール大会は、当初は質素な大会にすると言っていたのが、当時の市長が自分の任期中に歴史的な建造物を残したいと望んだがために、豪華な施設を濫造し、巨額の赤字を計上することとなったということである。これらのエピソードは、今後のオリンピックをはじめとするメガイベントの開催に当たって大きな教訓となるものだと感じた。 本筋とは離れるが、よく言われるオリンピックの「アマチュアリズム」は、スポーツをジェントルマンの嗜みとみなしていた英国貴族層(草創期のオリンピックの運営に関与)の考えに由来しており、オリンピック草創期には工場労働者等もアマチュアから除外されていたという事実は興味深かった。
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TOKYO2020の開催まで1年を切り、いよいよ準備も佳境に入ってきたのではないでしょうか。 一方で、間近に迫るイベントとはいえ、国民全体の関心はそこまで高くないようにも感じます。東京で五輪を開催するよりもほかに税金をかけるべきことはあるのではないか、という意見も度々聞かれます。...
TOKYO2020の開催まで1年を切り、いよいよ準備も佳境に入ってきたのではないでしょうか。 一方で、間近に迫るイベントとはいえ、国民全体の関心はそこまで高くないようにも感じます。東京で五輪を開催するよりもほかに税金をかけるべきことはあるのではないか、という意見も度々聞かれます。 そもそも、近代オリンピックはいつから、これほど巨大な(そして巨額な経費の掛かる)イベントになったのでしょうか。 同地での開催となったロンドンオリンピックで比較すると、最初の1904年大会と2008年大会で、6,385倍の経費が掛かる大会へと変貌していることがわかります(p.12)。 これはもちろん、飛行機等の発明により多くの国々から選手が参加するようになったことや、テレビやインターネットなどのツールの発達による放送設備の整備、テロなどに対応するための警備費用などが増えたことに加え、競技種目の拡大により新しいスタジアム(競技施設)の建設が必要になることも要因の一つです(競技施設の建築費用は税金が投入される場合もあれば、オリンピック委員会の負担となる場合もあります)。 現在のオリンピック開催資金としては、①税金(国や開催都市からの補助金、②企業の金(放送権料やスポンサー料)、③個人の金(入場料、記念硬貨、寄付など)の3つがありますが、この割合の変化が「オリンピックの商業化」や「商業主義へ堕した」と言われることにつながった、というのが本書の主な分析です。 特に、「巨大化するオリンピックの経費を賄うには、開催国の税金をこれまで以上に注ぎ込むか、オリンピックの商業的価値を金に変える「商業化」以外に道はなかった。税金の投入には議会の承認が必要だが、商業化は、IOCの決断だけで可能になる(p.101)」ことにより、一部では商業化(利益の追求)を第一義としたことによる負の側面も露呈しました。 その一つが、放映権料と試合開催時程の兼ね合いです(p.147~)。放映権を確保するため、複数大会の権利を一括で確保する、という契約方法が1996アトランタ・2000シドニー大会においてはじまります。その後、テレビの放映権料は右肩上がりに上昇することになりました。一方で、インターネットの発達により、それまでは録画でも視聴率が取れていたのに対し、生中継でなければ視聴率が取れない(=CMなどの放送利益を得られない)という事情もあり、放映権料を多く払っている国のゴールデンタイムに視聴率の取れる協議を実施するという「忖度」がなされる場面が出てきたのです。 特に顕著だったのが2008北京大会で、体操や水泳の決勝が午前中、予選が午後という通常とは逆転した試合スケジュールが組まれました。結果として、32種目中19種目で世界記録が更新されるなど、記録レベルの高い結果には終わったものの、逆転した大会運営が正当であったという証左にはならないし、この前例が、北京とほぼ同じ時差の日本で開催されるTOKYO2020に引き継がれないこと(アスリートファーストを確保すること)が大事なのではないかと思います。 オリンピックの歴史を、大会収支を中心に振り返りながら、それぞれの時代(大会)の特徴を理解することができました。 一方で記述が単調な部分もあり、刺激には乏しかったと感じます。 これからのオリンピックをどのように開催し運営していくのか(利益をどこまで追求するのか(大会を黒字化させることが目的か/赤字にしないことが目的か),税金の投入の可否 など)をしっかりと考えることが必要だと思いますし、開催する都市や開催国のなかで、一丸となって(あるいは一定の支持を得て)オリンピック大会を支える体制を確保することが大切なのだろうと改めて感じます。 これからのTOKYO2020大会においても、すでに支出してしまっている経費についてはしょうがないとしても(今後につなげるための反省は必要でしょうが)、実際の大会運営に際してどこまで経費を削減できるか、ということをもっと国民にアピールして理解を求め、全体としてオリンピックを日本で開催することに意義がある、という雰囲気を醸成する必要があるのではと感じます。戦後の復興をテーマとした1964東京大会のように、国を挙げて支援できる体制/環境が必要なのだと思います。
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[ 内容 ] オリンピックをテレビ観戦していると、他のスポーツイベントとは「風景」が違うことに気づく。 それは「会場に広告看板がない」からだ。 クーベルタンが理想を掲げて創始した近代オリンピックの「格式」は、そのような形で今も守られている。 だが舞台裏では、莫大な放映権料やスポン...
[ 内容 ] オリンピックをテレビ観戦していると、他のスポーツイベントとは「風景」が違うことに気づく。 それは「会場に広告看板がない」からだ。 クーベルタンが理想を掲げて創始した近代オリンピックの「格式」は、そのような形で今も守られている。 だが舞台裏では、莫大な放映権料やスポンサー料がIOCの懐を潤し、競技自体にまで影響を及ぼすという実態がある。 一方で、その資金のおかげで税金の投入が回避され、途上国の選手が参加できるという現実もある。 果たして、オリンピックが「商業主義」を実践するのは是なのか非なのか。 本書は、五輪礼賛でも金権批判でもないスタンスで、この問題を深く掘り下げる。 [ 目次 ] 序章 三つのロンドンオリンピック 第1章 「商業主義」の起源と歴史(「商業主義」の定義;聖火リレーを「売った」理由;三種類の開催資金 ほか) 第2章 「商業主義」の弊害とは何か(ロサンゼルスでは、明確な「弊害」はなかった;「一線を越えた」ソウルの競技時間変更;放映権料をめぐる裏事情;テレビマネーに配慮する必要はなかった? ほか) 第3章 五輪マネーは、どのように分配されるのか(「全世界的スポンサー」TOPの誕生;協賛金は二〇年前の七倍に;IOCにマーケティング専門家を招聘 ほか) [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]
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