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甦るロシア帝国 文春文庫

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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 文藝春秋 |
発売年月日 | 2012/02/10 |
JAN | 9784167802035 |
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甦るロシア帝国
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商品レビュー
4.2
15件のお客様レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
興味深い。ニュースであると上澄みしか知ることができない。全てを知ることはできなくても、氷河のような底に広がる背景があると念頭に置くことが大切だと思った。一見、体制は変わったように見えて根にその国の気質のような物があるのだろうか。
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ソ連崩壊前後のロシア知識人層との対話談。前半はモスクワ大哲学部の学生との知的交流で、広範は民族学研究所でソ連と民族論について語る。最後のプーチン論は必読。当時はインフレで学生の生活が苦しく、著者は翻訳等の助手を頼んでいたそう。エリート層が外資の小間使いをしている様子が描かれていた...
ソ連崩壊前後のロシア知識人層との対話談。前半はモスクワ大哲学部の学生との知的交流で、広範は民族学研究所でソ連と民族論について語る。最後のプーチン論は必読。当時はインフレで学生の生活が苦しく、著者は翻訳等の助手を頼んでいたそう。エリート層が外資の小間使いをしている様子が描かれていた。 ソ連崩壊については「最後の転落」と重なる部分が多い。遠隔地ナショナリズムは初出だったが、ソ連の周辺から崩壊していくというのは共通認識に思えた。トッドは衛星国だったが、本作は連邦内の共和国の民族問題だ。マルクスにはない(?)民族理論をスターリンが密かに導入し(回教)、普遍的な共産主義と調和するためインテルナツィオナリズム(ユダヤとツィガン以外の民族間友好主義)を推進した(民族籍の話や宗教問題はその典型?)。トッドが指摘したような理由でエトノクラチヤ(民族独裁主義・内向きの人種主義)が発展し、共産党エリート以外が立場を窺うようになった。 そんな中起きたナゴルノカラバフの紛争から、バクー事件・トビリシ事件を通じて問題がバルト三国に飛び火して主権宣言乱立を経てソ連崩壊へと繋がっていく。 結局、ソ連崩壊は民族問題だったと思う。普遍的な共産主義の全体主義体制を構築したのに、中途半端に全体主義を維持しようとしてペレストロイカを遂行した結果、ロシアならではの民族主義の復活を招いてしまったということ。でも自由化による資本主義の荒波を受けて国家機能強化が叫ばれているという。ロシアを中心とした地域経済圏を構成するユーラシア主義(ファシズム?)。ソ連も本質的にはユーラシア主義かもしれないと。共産主義という建前とユーラシア主義という本音で見ると面白いかも。共産主義というメッキが剥がれて軍事主体の帝国主義も経済主体の保護主義も同じで、外資に蹂躙されない強い国を取り戻すということだろう。著者はソ連が非共産帝国ロシアとして甦ったと表現している。ここで伏線回収!とても気持ちよかった。TPPも大東亜共栄圏と同じく地域ブロック経済圏と考えるのは当然といえば当然だが新鮮。 神学やマルクスについての話は知識が足りなかったので敬遠したが、教養が付けば再挑戦したい。外交官でなくても自国/世界の思想的素養は大事だということ 小説風だったので雑記が多かったが、エッセンスは抽出できたのではないかと思う。2021/9/20
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『私のマルクス』(文春文庫)に続く、著者の思想的自叙伝です。ソ連で外交官として活動する中で見聞したさまざまな事実に絡めて、ソ連が崩壊するに至った原因についての考察が展開されています。 前半は、モスクワ国立大学でプロテスタント神学の講義をおこなったことが、学生たちとの交流を含めて...
『私のマルクス』(文春文庫)に続く、著者の思想的自叙伝です。ソ連で外交官として活動する中で見聞したさまざまな事実に絡めて、ソ連が崩壊するに至った原因についての考察が展開されています。 前半は、モスクワ国立大学でプロテスタント神学の講義をおこなったことが、学生たちとの交流を含めて語られています。そこでは、社会主義から資本主義へと方向展開しつつあるソ連の若きエリートたちが直面していた困難が印象的に綴られるとともに、資本主義の内在的論理を解明したマルクスの経済学の立場と、「わたしは自分の望む善は行わず、望まない悪を行っている」と述べたパウロの告白をみずからの問題として受け止めようとするキリスト教神学の立場をクロス・オーヴァーさせながら、学生たちに向き合ってきた著者の姿が描かれています。 後半は、ソ連科学アカデミー民俗学研究所を訪問し、副所長を務めるセルゲイ・チェシュコという人物と、ソ連の民族問題について語り合ったことが中心となっています。バルト三国の独立運動からゴルバチョフが軟禁されたクーデタを経てソ連の崩壊へ向かって進んでいく一連の動きが、民族政策の失敗という観点から明らかにされるとともに、現在のプーチン大統領によるロシアの「帝国主義」的な動きが、とくに「ユーラシア同盟」と関連づけながら予見されています。 これまで著者の本を読んでいて、文明論的な視点についていけないと感じることがあったのですが、著者がこうした視点から世界情勢を解釈するようになった理由が少し見えてきたような気がします。
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