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黒船の世紀(上) あの頃、アメリカは仮想敵国だった 中公文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 中央公論新社 |
発売年月日 | 2011/06/23 |
JAN | 9784122054936 |
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黒船の世紀(上)
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黒船の世紀(上)
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商品レビュー
3.5
3件のお客様レビュー
避けられない戦争が存在するということは現実であった。しかも兵器の著しい巨大化が戦争を変えた。巨大化は軍艦で表現されていく。軍艦にはテクノロジーの最新の成果が集積していた。 黒船がもたらした心理的な傷が外圧という不安の物語のベースを作った。 政治でも革命でも戦争でも先立つものは軍...
避けられない戦争が存在するということは現実であった。しかも兵器の著しい巨大化が戦争を変えた。巨大化は軍艦で表現されていく。軍艦にはテクノロジーの最新の成果が集積していた。 黒船がもたらした心理的な傷が外圧という不安の物語のベースを作った。 政治でも革命でも戦争でも先立つものは軍資金。 祖国を持たないユダヤ人は国家に依存しない。自己を守るためには自己自身の力の外にないことを歴史的に教えられている。良かれ悪しかれユダヤ人は狭き国家人ではなく、広く世界人である。世界人であるがゆえにいたるところの国から排斥され、多民族から憎悪されている。
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第一次大戦前後から、第二次大戦前にかけて、「日米未来戦記」が流行した。この時代を包んでいた雰囲気を、日本、米国、英国の名もなき作家達の生い立ちとその作品を通じて描き出している。 黒船来航から50年後、アメリカの大艦隊がまたも日本に訪れたことはあまり語られない。このときの「白船来...
第一次大戦前後から、第二次大戦前にかけて、「日米未来戦記」が流行した。この時代を包んでいた雰囲気を、日本、米国、英国の名もなき作家達の生い立ちとその作品を通じて描き出している。 黒船来航から50年後、アメリカの大艦隊がまたも日本に訪れたことはあまり語られない。このときの「白船来航」に対する国内メディアの反応は、「万歳、歓迎」の大合唱であった。これは巨大な国力を持つアメリカとの戦争を恐れての、最大限の「恭順の意」だった。その裏で、日露戦争に勝ったことを遠因として、米国への対等の意識も芽生え始める。 実は、アメリカ国内でも、移民排斥運動に加えて日本脅威論がしだいに高まっていた。大艦隊の派遣には、日本の牽制と言う意味が多く含まれていたのである。 互いを仮想敵国とするような雰囲気がどのようにして醸成されていったのかを、作家達の視点から多面的に捉えていく。
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【再び読了した。(平成24年10月17日)】 「領土問題に興味があるなら、本書を読め」 尖閣諸島、竹島と領土問題が表面化しているなかで、著者の猪瀬直樹氏がツイッター上で本書を薦めていたのを目にした。興味が沸き、改めて読み返した。尖閣諸島の問題の奥にある中国の思惑は、太平洋への進出だと言われているが、かつての日米間における太平洋をめぐる覇権争いの歴史は、どのようなものだったのだろうか。この機に、もう一度振り返ってみようと思う。 「日本とアメリカが戦争をする必然性があったのか」 黒船を起点として、約100年後に日米は開戦にいたる。日露戦争後、日本の世論と米国の世論は、互いに刺激しあう形で高まりあい、最後には開戦に至るのだが、そのプロセスはどのようなものだったのか。爆発的に流行た日米未来戦記とその著者の生き様を描くことで、なぞの解明に迫っている。 本書は、日米未来戦記というソフト面から歴史を解き明かしている点で、一般の歴史書とは異なっている。 日露戦争以降に爆発的に人気を得た、いわゆる戦記物の小説や批評や論文は、読者獲得といった出版社の思惑やプロパガンダ、世論の要求など、当時の一般国民の時代の雰囲気を表している。民衆の空気感が本書からは、読み取れる。 「一八五八年に大西洋を横断してイギリスとアメリカは海底ケーブルで結ばれている。」 本書のもうひとつの特徴は、これは著者の他の本にも共通することだが、膨大な資料、取材にもとずく、情報量の多さだ。例えば、意外に思うかもしれないが、海底ケーブルが1858年に既にあったという事実。1858年といえば、日本は江戸時代に当たる。私の持っていたイメージは、その時代の技術はもっと遅れているものだ。しかし、実際には大西洋を跨いだ通信のやりとりが可能になっていたのだ。 歴史を振り返る時に、その時代の技術水準や常識などの基本的な前提について、現代人のイメージとは大きく異なることがあるが、海底ケーブルの事例は、その乖離を端的に表している。本書は、このような事実を丁寧に積み重ねている点も特徴だ。 以下は、私が特に面白いと感じた場面を書いた。 『「欧州戦争の規模に驚き、また敗戦ドイツの大惨状には考えさせられました。(略)」水野がそう答えている間、加藤は眉ひとつ動かさず、ただ黙っていた。』 水野も加藤も軍人である。上の場面は、水野が、第一次世界大戦を現場で見た感想を上官である加藤に報告している場面だ。日本は、日清、日露戦争を経験し、第一次世界大戦も参戦したことになっているがヨーロッパの激戦区は経験していない。現場を経験したかどうか。水野と加藤の開戦への態度の違いとなって表れている。 第一次世界大戦は、それまでの戦争と全く違うものとなった。日露戦争も悲惨な戦いはあったが、一般市民を巻き込み殺すことはなかった。水野は、ロンドンでドイツ軍の空襲で、「ふつうの市民が逃げまどい殺される姿を目撃」し、「ヨーロッパでは新しい事態が生じている」と考えた。 水野のように現場で、第一次世界大戦を経験した日本人が少なかった事実は、注目すべき点である。この第一次大戦の日本の立ち位置は、第二次世界大戦、太平洋戦争へと大きく影響している。 『バイウォーターは述べている。「目盛りをつけたステッキは装甲鉄板の厚さを計るのに役立ち、訓練を積んだ目には石炭集積所や重油タンクの容量もすぐに推測できた。新艦およびその各部の詳細、設備、砲身の仕組み、照準など記録図がほしいときは掌に収まるほどの小型カメラで撮影した」』 バイウォーターとは、イギリス人である。1909年から1918年まで9年間をスパイとして活動していたが、引退後に、日米未来戦記『太平洋海権論』を著した。太平洋海権論は、日米戦争を正確に予測しており、その詳細なストーリーは実際の太平洋戦争をほぼ的中させていたという。 「バイウォーターには、スパイという稀有な体験が肥やしになっていた。戦争は数量と技術と情報で成り立っている、余計な感情は見通しを曇らせるだけ、と考えた」 冷徹な視線で、太平洋戦争を予測したバイウォターの思考についての考察である。日露戦争以降、日米未来戦記は、流行した。五百点を越える。その多くは、国民感情を煽るものであった。また、国民の期待に答えるかたちで、開戦へと導くものだった。 上巻を読了した今、考えていることは、現在の領土問題の沸騰についてだ。バイウォーターのような冷徹な視点をもっているだろうか。あるいは、水野のように現場の経験から、未来を想定できているだろうかと。
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