都道府県名と国名の起源

吉崎正松(著者)

• 販売会社／発売会社: 古今書院
• 発売年月日: 1985/09/01
• JAN: 9784772212625

商品レビュー

2012/07/04

古代律令制のもとで地方支配の組織として設定された「国」。近代になって「国」を再編する形で設置された道府県。
　意味と音をもつ地名を、のちに嘉字二字の漢字表記で記載することにしたことで漢字の「音」でのみ表記することになったとする。

　全国の国の名と、都道府県を一括しようとするわけだから、大事業。基本文献に依拠しながらも、それぞれの地での研究状況を選択、提示することになる。
　このため簡便ではあるが、実際に役立てようとするときには、それぞれの地域にある個別研究の成果と言うことに、あらためて《注目した方がよいのでは》との読後感を持つ。

　たとえば、「わが国の地方行政区画名の起源」。「地形に由来すると考える説」のなかに、「湖沼に関連するもの　釧路」がある。クスリ湖＝屈斜路湖から流出する川＝クスリ（釧路川）の、湖がさきか流域が先か。
　著者の観点によると、クスリ語源は「クチャロ＝咽喉」説に収斂（しゅうれん）してゆくことになりそうである、が。

　著者は申される。「地名の研究は、そう簡単なものではない」（１ｐ）。「地名の研究は容易なものではない」（あとがき）。
　「地名の多くが起源が古く、民族の歴史のはるか過去にさかのぼらなければならない」（同）。指摘は、まことに重い。

　「言葉は時代とともに変化し、場所を移動すればまた転訛するため、地名もついにその意味の何であるかの判断がむつかしく不明になってしまう」（同）。心して置きたい。