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湿原(下) 岩波現代文庫 文芸167
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湿原(下) 岩波現代文庫 文芸167

加賀乙彦【著】

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湿原(下) 岩波現代文庫 文芸167

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 岩波書店
発売年月日 2010/06/16
JAN 9784006021672

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2022/03/15

冤罪ものなのでハラハラしながら読んだ。日本の場合、冤罪が晴れたところで失ったものが大きすぎて決してハッピーエンドにはならないのだが、それでも結末には安堵した。 巻末の解説で本作とドストエフスキーの対比を論じてあったが、さすがにカラマーゾフの兄弟ほど面白くはできないだろう。 下...

冤罪ものなのでハラハラしながら読んだ。日本の場合、冤罪が晴れたところで失ったものが大きすぎて決してハッピーエンドにはならないのだが、それでも結末には安堵した。 巻末の解説で本作とドストエフスキーの対比を論じてあったが、さすがにカラマーゾフの兄弟ほど面白くはできないだろう。 下巻で雪森厚夫の半生が語られるが、自制心のない極道な累犯者と、禁を犯すまでの思慮深く真面目な努力家が同一人物であるという設定がどうにも腑に落ちなかった。頭が良い人間は自分の行動の結果を予測できるためあまり衝動的な犯罪はやらないような気がするのだが、精神科医でもある作者にとっては十分あり得る人物像なのだろうか。 手にした金を後先考えずに使ってしまうところはカラマーゾフの兄弟のドミートリィを連想したが、貴族で倹約などという考えがない存在と、目の前に大金が現れると箍が外れたように自制心がなくなる性格はだいぶ違う気がする。 もう一点、法廷ものとしての緊迫感もカラマーゾフの兄弟と比べると見劣りしてしまう。物語の構成上、先に冤罪という真相がわかっていて、不利な状況証拠を覆す決定的証拠が出ても無理矢理それを否定する強力な検察=国家権力との戦い、という構図では、リアリティを出せば出すほど絶望感しかなくなり、息苦しくなるのは仕方がない。 日本軍の残虐行為が淡々と描写されていて哀しかった。南京大虐殺は誇張が過ぎると思うが、本作に書かれたような行為はきっとあったのだろう。そして引揚者に対して同じようなことがなされたのだろう。

Posted by ブクログ

2016/09/09

組織の非情さ、国家の犯罪の極みである冤罪の重さに身の震える思いを感じる。一方で、無実の罪を負わされた男の精神的成熟、過去の罪への懺悔、生への賛歌。はらはらする緊迫感。氷が溶ける時の湿原にみる原始的な雄大なる生命力。良かった。2016.9.9

Posted by ブクログ

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