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歌舞伎の幕末・明治 小芝居の時代
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | ぺりかん社 |
発売年月日 | 2010/04/20 |
JAN | 9784831512444 |
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歌舞伎の幕末・明治
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・小芝居といふ語は今は死語だと思ふのだが、それでも大歌舞伎といふ言ひ方を見ると、これが小芝居の名残かと思ふ。大歌舞伎は歌舞伎座や新橋演舞場での松竹の興行である。では小歌舞伎はと言はれると、そんな語はあるのかと思ふばかりである。大芝居に対する小芝居はあつても、大歌舞伎に対する小歌舞...
・小芝居といふ語は今は死語だと思ふのだが、それでも大歌舞伎といふ言ひ方を見ると、これが小芝居の名残かと思ふ。大歌舞伎は歌舞伎座や新橋演舞場での松竹の興行である。では小歌舞伎はと言はれると、そんな語はあるのかと思ふばかりである。大芝居に対する小芝居はあつても、大歌舞伎に対する小歌舞伎は(たぶん)ないのが現状である。だから、小芝居といふ語を目にする度に、何となくしか分からない小芝居のことが気になつてゐた。小芝居とは、大芝居に出られない、あるいは下つ端でしか出してもらへない役者の演じる歌舞伎で、従つて小屋は粗末で小さい、だから小芝居だ、といふあたりが私の理解である。佐藤かつら「歌舞伎の幕末・明治ー小芝居の時代ー」(ぺりかん社)からそれ以上のことが分かるはずだと思つて読んだ。 ・例へば大芝居の役者が小芝居に一度出ると大芝居に戻れないといふことがあつた。明治の初めである。初代猿之助等がこれにひつかかつてもめた。なぜそんなことがあつたのか。鑑札、身分制度の問題である。大小、それぞれ別の鑑札が与へられてゐた。幕末の小芝居の役者は乞胸(ゴームネ)頭支配下にあつた。乞胸は物乞ひの一種で「身分的には町人に属したが、穢多頭の弾左衛門の支配下に置かれ、稼業としては非人と同等とされた。」(Wikipedia)これに対して大芝居の役者は歴とした町人であつた。身分が違ふのである。物乞ひ如きと同じ舞台に立てるか、これが大芝居役者の矜持であつたに違ひない。しかも、小芝居とは常設官許の劇場の芝居以外をいふといふ定義がある(「歌舞伎事典」)らしい。つまり、大芝居は小屋が大きいだけでなく、お上から公に許可されて興行してゐるのである。それも常設、何日以上の公演はならぬといふお達しはないのである。ところが、「公に歌舞伎芝居を興行することは許されていなかったために、小芝居は何らかの名目を必要とした。」(67頁)といふ。例へば歯磨きを売るとかである。客が実際に歯磨きを買ふ必要はなくとも、とにかくそんな名目がないと興行できなかつたのである。それでも人気はあつた。観劇料が安いのが大きい。ごく大雑把に、小芝居は2,850 円、大芝居平土間は6,460円ださうである。見世物が大体1,000円程度(71頁)といふから小芝居でも安くはないが、大芝居よりは安い。しかも大芝居は茶屋を通す。その観劇料以外の出費が多い。これは一般庶民にはこたへる。そこで、大芝居に行つて豪遊することはあつても、よほど覚悟を決めないとできないのであつた。その点、小芝居は手軽に楽しめた。ただし、こんなことがある。「『続狂言』を上演し、見物を長い時間劇場という場所に滞在させることは、歌舞伎の大芝居の特権であった」(78頁)。そこで小芝居は「見物を長時間惹きつける興行を、取り締まりの目をかいくぐって行っていた」(同前)らしい。事ほど左様、小芝居は厳しく取り締まられたのである。金の問題か、あるいは身分の差か。本書は小芝居を中心とした幕末明治の歌舞伎史の一端である。演劇的内容も多く含むが、私にはむしろかういふ制度的な問題がおもしろかつた。かういふ制度と小芝居は不可分であらう。役者の人気、巧拙はしかたない。大根は大根である。二枚目は二枚目である。それが門閥と結びついた時点から問題は生じる。江戸期にも既にそんな問題は起きてゐたのであらう。そこからはじき出された役者が小芝居に行つたのかどうか。知りたくても書かれてゐない問題は多い。上演作等に関する細かい研究は何本かある。役者に関しては不明な点が多いらしい。それを超えて、更なる小芝居研究の進展を願ふのみ。
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