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あ・じゃ・ぱん!(下) 角川文庫
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商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 角川書店/角川グループパブリッシング |
| 発売年月日 | 2009/11/25 |
| JAN | 9784041616581 |
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あ・じゃ・ぱん!(下)
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商品レビュー
4.3
4件のお客様レビュー
アナザー1973年 ベトナム・ハノイに対し 原子爆弾「サウンドオブサイレンス」を投下したことで 逆に、アメリカの敗戦は決定的なものとなった 核の力でも、ベトコンのガッツを砕くことはできないということが 明らかになってしまったからである 戦争終結の早まったおかげで徴兵をまぬがれた...
アナザー1973年 ベトナム・ハノイに対し 原子爆弾「サウンドオブサイレンス」を投下したことで 逆に、アメリカの敗戦は決定的なものとなった 核の力でも、ベトコンのガッツを砕くことはできないということが 明らかになってしまったからである 戦争終結の早まったおかげで徴兵をまぬがれた主人公は 生き延びたことへの罪悪感なんぞ 微塵も持っていない 一方、戦後日本で鬱屈を深める平岡公威は ソ連との闇取引をとりしきるところにまで堕ちながら ひそかに「日本自殺装置」の発動を計画していた そうすることによってのみ再生しうる何かがあると そう信じていたわけである
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「あ・じゃ・ぱん」の続きをを311の震災以来半年ぶりに読み始めた。冗談ではなく、折しも「あ・じゃ・ぱん」の文庫本下巻の第四部の冒頭での、日本の東西を分断した境界が決壊する直前の富士山近くのM7.4の地震の発生と、311の大震災が偶然にも重なってしまい、それで読めなくなっていたのだ。 アテンション・プリーズ。この「あ・じゃ・ぱん」は矢作俊彦の傑作だ。東西日本が戦後に大日本国と日本人民民主主義共和国の二つの国家に分断された90年代が描かれるいわゆる偽史物で、東洋史の研究で有名なライシャワーに師事し、日本語(しかしながらここでいう日本語は大日本国の標準語となった大阪弁ではなく東京官話の方)がペラペラの小柄な黒人CNNレポーターが主人公だ。そしてこの傑作のとりわけおもしろいのは登場人物たちで、田中角栄、中曽根康弘、三島由紀夫、加山雄三、和田勉、長嶋茂雄など実在の人物たちがまったく違う様相でキャラクター化されている。また、いたるところで日本の様相も違っている。その最たるは富士山だ。日本が誇るその山はアメリカが落とした原爆によって消失し、阿蘇のカルデラのような状態になっているのだ。 ところで、戦後ニッポンを朝鮮やドイツと同様に分断させた歴史によって形成された現代を物語る偽史物はけっこうある。その中でもぼくが一番に思い当たるのは、村上龍による「五分後の世界」そして「ヒュウガ・ウイルス 五分後の世界Ⅱ」だが、こちらは戦後も日本は戦争を続けており、迷い込んだ主人公も戦争に加担していく、というようなまったく違った作品である。日本の戦争に対するヒステリーが過剰に推し進められ続けた先にあるカタストロフィーを描いたような作品である。それから、かわぐちかいじの漫画「太陽の黙示録」なんかはけっこう「あ・じゃ・ぱん」のそれと似てる気がする。また、三島由紀夫が陰謀に加担しているという設定なんかは大塚英志の一連の偽史物が思い出されて親しみ深い微笑が漏れる。 この傑作はぼくからしたらまさに大友克洋との共著「気分はもう戦争」を想起させる。現実と虚構の混在。リアリティのパロディ化。アイロニーの巣窟。悪ふざけ。矢作本人は、この傑作の構成はアメリカのハードボイルド小説家レイモンド・チャンドラーの『さらば愛しき女よ』を全部解体して使っている、と語っているそうだが、そんなことよりも「気分はもう戦争」のようなものと解釈したほうがしっくりくるのでそういうことにしてみる。ちなみに「ららら科學の子」は「あ・じゃ・ぱん」と比較すると、とてもおとなしい作品だったことがよくわかる。それぐらい騒々しい傑作である。 そしてそして、この“クソ”傑作を読み終えてびっくりした。ハッピーエンドではあるが、なんともまあこのいまの未曾有の災厄を予見してたかのようなハッピーエンド。だってね、原爆で消失した富士山が自らの力で造山活動をするなんてオチ、小松左京も筒井康隆も想像してなかったでしょ。もういま読み終えたことが運命的っていうか、宿命?なんて感じてしまって、いやはやびっくりしたよ。矢作が10数年前にいまのような現状を想起してたならホントにびっくりだが、もはやそんなことはどうでもよくて、まあ明石家さんまこと杉本高文がどこで出てくるんだと思ったら、最後に吉本興業(ちなみに大日本国の政財界を牛耳っているのは吉本一族である)の社長として登場させるあたり、これまたなにかを予見してしまってる感があって笑えてしまう。 そうこの“クソ”傑作はそんな大阪的ユーモアをふんだんに取り入れたなにかのパロディなのだ。なんのパロディかってそれはそれとして・・・
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構想は実に面白い。矢作さんは、誰かと組んだ方が良いと思う。古い話だが司城志朗や大友克洋と組んだ仕事はどれも素晴らしい。本書は、やや冗長にすぎ、その割に物語の収束のさせ方が不十分と感じた。
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