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カティンの森 集英社文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 集英社 |
発売年月日 | 2009/10/25 |
JAN | 9784087605907 |
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カティンの森
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カティンの森
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3.9
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カティンの森事件を舞台にした三人、三世代の女性の物語。 ソ連と不可侵条約を結んだナチス・ドイツは1939年9月にポーランド侵攻を開始した。そしてソ連も同時に東側からポーランド侵攻を開始し、東部地域を併合した。これによってポーランド国軍の多数の将校がソ連の捕虜となったが、ソ連は捕虜...
カティンの森事件を舞台にした三人、三世代の女性の物語。 ソ連と不可侵条約を結んだナチス・ドイツは1939年9月にポーランド侵攻を開始した。そしてソ連も同時に東側からポーランド侵攻を開始し、東部地域を併合した。これによってポーランド国軍の多数の将校がソ連の捕虜となったが、ソ連は捕虜とした2万人以上のポーランド将校を虐殺し、カティンの森など三箇所の地中に埋め、隠蔽をはかった。 戦争中既にこの虐殺事件は西側諸国の知るところとなり、調査も行われたが、ナチス・ドイツはこれをソ連によるものと主張したが、ソ連はこれをナチス・ドイツによるものだと強く主張していた。 こういう歴史的事件を背景に、戦後、ポーランドのクラクフで、ソ連の捕虜となり、消息不明となっている夫アンジェイを待つアンナ。夫の母であり、息子は必ず戻ってくると信じ、あらゆるものにその兆しを見つけようとするプシャ。幼い頃の父の思い出しか記憶になく、父を愛しているが、父の亡霊に束縛されている母に反発するヴェロニカ(ニカ)。 三人の女性の暮らしが描かれる。 アンナは夫アンジェイがカティンで虐殺されたものと思っているものの、見つかった犠牲者のリストには夫によく似た名前があるのみで、未亡人としても認められない。また、それ故に一縷の望みを抱いているが、そんな時に夫の部下だったという兵士が家を訪ねてくる。 彼は夫と親しかった事の証拠としてアンジェイの持っていたシガレットケースを渡すが、彼はソ連軍に協力する見返りとして解放されたため、アンジェイのその後については知らなかった。 果たしてアンジェイはどうなったのか。カティンについて調べることがタブーでもあるソ連支配下のポーランドでアンナは夫のその後について調べようとし始める。 三世代の女性のうち一番若いヴェロニカは母や祖母が帰ってこない父がまだ生きていると信じているかのように話す事に反発している。父は既に亡くなっており、その遺体が見つからないだけだという事を認めようとせず、「カティン以前」に囚われて前に進もうとしないことに苛立っているからだ。 しかし、その彼女がユルという青年と出会い、ユルがソ連の支配に反抗する反乱分子として捕えられ、収容所に入れられ、その生死も定かではなくなった時、母アンナと同じ気持ちとなってユルを探し続ける展開が、痛ましい。
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いわゆるカティンの森事件を題材にしたフィクション。全編通じて美しくも陰鬱な雰囲気に満たされた内容でした。 とはいえ、カティンの森事件の内容を説明するものではありません。当事件に巻きこまれた男性の家族の、彼を「待つ」その心情のコントラストを描く作品です。 ・・・ 物語のあらすじをざっと言えば、カティンの森事件で家族を亡くした3世代の女の話です。出征した息子の帰りを信じている母ブシャ、夫の死をほぼ確信するも貞節を守りながら未亡人として生きる妻アンナ、父の死を受け止めつつも寧ろあらたな人生を切り開きたい娘ヴェロニカ。彼らに訪れる戦後の動乱と人々の心象を描くもの。 ・・・ やはりやるせないのは、解消されざる母娘の「今」に対する感情。母アンナからすれば残りの人生はまさに「敗戦処理」に過ぎない。一方娘にとっては、白紙のノートブックのような人生が開こうとしている。その考えの違いが家庭内でも不協和音を奏でます。 「母は、苦しみを独占する権利があるという想いなしではいられないのだ、そうすることによって、喪失の痛みを人生のたった一つの意義に変えているのだと。彼女のただ一つの愛の対象が帰ってくるという望みを絶たれ、最後までその愛に忠実になろうとしながら、母の選んだのは、犠牲とならずに済んだものへの憎しみと遺恨だった」(P.243) 自分が幸せでない時、他人の幸せを祝福することは難しいことが多いわけですが、この違いが母娘に起こるところに、運命的ともいえる悲劇性を見て取れます。娘ヴェロニカは自身の恋愛をせめて家族に祝福してもらいたい一方、母アンナは厭世的な発言が多い。 やや作りすぎの嫌いはあるものの、娘ヴェロニカの恋人が更なる犠牲者を生み出し、また彼自身体制の犠牲となることで最終的にヴェロニカも母の立場を理解するようになります。つまり、悲劇は繰り返されることになります。 また読中、ポーランドという国の経緯についても、つくづく何とも言えない思いになりました。 ロシア、プロイセン、オーストラリアの3列強による3度の国土分割を経て、第2次世界大戦ではドイツとソ連により通算4度目の分割を経験することになります。加えて、アウシュヴィッツはユダヤ人虐殺の現場となり、ポーランド人将校はロジアのカティンへ連行され虐殺される。戦後はソ連の影響を受けた共産体制の下、真実を探ることも許されない。 また物語では妻アンナは、夫の名前がカティンでの死亡者リストに名前が誤って掲載されていたことから、夫の死亡も認定されず、恩給の代替受給も許されず、厳しい立場に追い込まれました(この誤報に一縷の望みを託す点がまたなんとも・・・)。 ・・・ 実に重苦しい作品でした。 この家族の救いの無さは、胸にどんよりとした嫌味を残す一方、なぜポーランドはこのような他国の蹂躙を受けることになったのか、なぜロシアは虐殺の事実を画したのか等の歴史的事実とその背景も知りたく思いました。 ヨーロッパ史、東欧史、近現代史に興味がある方にはおすすめできる作品だと思います。
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ポーランドを旅行してから、ポーランドへの興味が尽きない。 アンジェイ・ワイダ監督の映画「残像」を観た後、カティンの森のことを知り、この本を読みはじめた。 こんな残酷な事件があったとは、知らなかった。 ポーランドという国は、本当に先の大戦でドイツからもソ連からも傷つけられた国だった...
ポーランドを旅行してから、ポーランドへの興味が尽きない。 アンジェイ・ワイダ監督の映画「残像」を観た後、カティンの森のことを知り、この本を読みはじめた。 こんな残酷な事件があったとは、知らなかった。 ポーランドという国は、本当に先の大戦でドイツからもソ連からも傷つけられた国だったんだと改めて思う。 観光客で溢れていたクラクフを思い出し、戦後よくぞ復興されたと思うと同時に、アンジェイ・ワイダ監督が、自国の暗い歴史を忘れず、映画を作り続けてこられたことに胸を打つ。
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