人権の政治思想 デモクラシーの再確認 明石ライブラリー

鷲見誠一【著】

• 販売会社／発売会社: 明石書店
• 発売年月日: 2009/06/30
• JAN: 9784750330037

商品レビュー

2014/09/22

人権の思想史の学問的部分はとてもよいのだが、ところどころ思い出したように出てくる、現代の日本政治に関しての批判が著者の主観に寄りすぎる。靖国神社の首相の参拝は問題だと思うが、根本を打たず、ヒステリックに何度も叫んでいるだけのようで、政治学者としてはみっともない。最後の「デモクラシー」の章も焦点がぼやけていて、論拠に乏しい。

・17世紀のアメリカのピューリタンのウィリアムズが、キリスト教だけでなく、すべての宗教の信仰者に妥当する信仰の自由を主張した。アメリカ独立宣言の100年前。
・ルターの時代、出版された聖書は一冊牛一頭と同じ価格だった。当時の識字率は５，６％。
・人間の自由、平等は人間の生まれながらの属性だということが、宗教改革の時点、つまり16世紀の初期に主張され始めた。
・カルヴァンの教会形成の自由、結社の自由、政党結成の自由。信仰の自由から良心、思想・信条の自由になってきた。
・ポストモダンの哲学によって、人間は自分がかけがえのない存在であることを自分自身で立証、証明することはできない。その結果、人間の尊厳というのは、人間を超越した普遍的絶対者の教え、導きに聴き従うことといえる。
・人権が戦争と密接に関係する一つの理由は、戦争で死亡する軍人と民間人の割合がこの100年間でとても変化しているから。第一次世界大戦は軍人９５％、民間人５％、第二次大戦は軍人５２％、民間人４８％、朝鮮戦争は軍人１６％、民間人８４％、ベトナム戦争は軍人５％、民間人９５％。
・孤立化した個人を実体化させる理念に依拠する人権理解から、人間同士の相互理解に依拠する人権理解に転換している。アリストテレス：人間は生まれながらにしてポリス的動物である。
・educationの訳語。福沢諭吉：発育、森有礼：教育。