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戦後民主主義と少女漫画 PHP新書
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | PHP研究所 |
発売年月日 | 2009/05/18 |
JAN | 9784569705149 |
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戦後民主主義と少女漫画
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戦後民主主義と少女漫画
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商品レビュー
3.4
9件のお客様レビュー
物心ついた頃には姉の部屋に置いてあった紡木たくの「ホットロード」を読んでいた。あまり深く考えずに、暴走族の様な硬派な生き方には憧れを持ったし、現実として姉の部屋には暴走族が入り浸っていた。隣の部屋で真面目な学生だった自分は、それまで仲良く過ごしてきた姉が壊れていくのが堪らなく寂し...
物心ついた頃には姉の部屋に置いてあった紡木たくの「ホットロード」を読んでいた。あまり深く考えずに、暴走族の様な硬派な生き方には憧れを持ったし、現実として姉の部屋には暴走族が入り浸っていた。隣の部屋で真面目な学生だった自分は、それまで仲良く過ごしてきた姉が壊れていくのが堪らなく寂しかったが、一方で父親に対して悪辣な発言をする姉へ憎悪にも似た様な感情ももったりした。漫画が人の生き方や考え方に与える影響は大きい。幸いにも?ホットロード以外の漫画にほとんど触れず、活字にばかり触れていた自分は、漫画の絵を見て視覚的に入ってくることがない分、想像力という点では幼少期に大いに身についたと今でも思っている。 人はなぜ漫画の世界に惹かれていくか、個人的には今の自分に無い非日常性を求める事で、ドキドキやワクワク感を簡単に得られるからであろうと短絡的に考えていた。週刊少年ジャンプは私も読んでいたが、兎に角読んでて疲れた記憶はなく、寧ろ週に一回、主人公が悪を懲らしめると言うわかりやすいストーリーに爽快感だけを求めていた様に感じる。少女漫画の独特な画風にはやはり思春期の抵抗感を抱いていたし、実際に読みたいとも考えなかったが、そこに果敢に触れていった当時の少年少女の人格形成に与えた影響は大きかったであろうと想像する。 本書はそうした少女漫画を読んできた筆者が、大きく3人の偉大な少女漫画家の作品を挙げて、民主主義的な社会の醸成過程を考察していくというユニークなテーマで描かれている。とは言え、最後まで読んでみた感想としては、民主主義の印象よりも遥かに少女漫画の作者の心情、細かな描写の意図などに迫っていく筆者の姿から、少女漫画と社会の変遷といったタイトルの方が相応しいのではないかと感じた。確かに日本は民主主義の国であり、多数が少数を破って社会が変化していく国だ。それは市民の政治参加を前提にしているから、投票率も低く一部の少数意見が本当に少数意見なのかすら怪しい。その様な社会において、漫画だけでなく小説文学なども当時の社会を色濃く反映した内容に仕上がっていくから、社会の変遷をそこから感じ取ることができる。 本書の秀逸な点としては、その様な社会(当時70年台は男性中心の社会)においても、そこに生きる少女たちが思春期に何を考え、やがて社会に出てからも、周りとの違和感を感じる点、正に歪な形で変化していく社会において徐々に居場所を失っていく姿にまで踏み込んでいるところでは無いかと思う。男であれば成長過程でいつかは社会の厳しい荒波に舟を漕ぎ出し、沈まない様に取り残されない様に戦う以外に選択肢が無い事に早くから気づく、いや諦める。少女たちは若干は夢を見続ける時間と余裕があった時代だから、少女漫画に自分には無い世界観を求め、男よりも長くロマンチックな世界に生存することができた。そこにいる少女たちに悩みがなかったわけでは無い。寧ろ学校や会社などの閉鎖的な空間において、安全安心に生きるコミュニティから除外されまいとする精神的な疲労は男性のそれ以上であったと思う。誰もが憧れる一部上場企業の幹部クラスと結婚して専業主婦の自由な暮らしはごく僅かな女性にしか割り当てられない。大半の女性は自由に使えるお金や出逢い、何より社会的に独立したいと言う意思を持って働いている。 女性の社会進出が進むと共に、漫画の世界に求められるものも変わっていく。ありえない様なロマンチックな世界観を必死に追い求める姿から、寧ろ何処にでもありそうな日常的な出来事に癒される方が精神的には楽になってくる。その様な社会の変化と少女漫画の変遷、作者の時代の捉え方などを1970年代から現在まで一気に追う事で、何か一つの歴史書を読んだ様な感覚に陥る。 筆者はかなりの少女漫画好きである様だが、そうで無い人にもわかりやすく作品背景とストーリーや描写に込められた意図を解説してくれる。これを機に実家に行って姉の部屋に置いてあるはずのホットロードを読み返したくなった。
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大島弓子、萩尾望都、岡崎京子の三人を中心に、日本の戦後民主主義下における「少女マンガ」という空間がもっていた意義について考察している本です。 いくつかの論点が示されてはいますが、おそらく著者の考えの中心になっているのは、主に70年代における少女マンガの役割を、戦後民主主義の「男...
大島弓子、萩尾望都、岡崎京子の三人を中心に、日本の戦後民主主義下における「少女マンガ」という空間がもっていた意義について考察している本です。 いくつかの論点が示されてはいますが、おそらく著者の考えの中心になっているのは、主に70年代における少女マンガの役割を、戦後民主主義の「男性原理」からのアジールとしてとらえるという発想です。著者は、そのような空間をつくりだしたことに、いわゆる「二十四年組」と呼ばれる作家たちの仕事の意義を見るとともに、その後の消費社会の進展によって、そうした空間の変質を、岡崎京子の作品にそくして見ようとしています。 タイトルからも明らかなように、大塚英志のこの分野における仕事が参照されています。しかし、本書における「純粋少女」の概念が「ベタ」なしかたで提示されていることには、議論の運びにある種の危うさを感じてしまいます。そのことは、大塚が現代のマンガやアニメにおける「キャラクター」の来歴を樋口一葉や私小説にまでさかのぼって検証していくなかで、「少女」というキャラクター性のもつ「メタ」な性格についてはっきりとした見通しを示しているのにくらべると、明確になるように思います。 たとえば本書では、大島弓子の『綿の国星』以降作品が、彼女がもっとも輝いていた時代から「後退」していると論じているのですが、大島における「ベタ」な日常への埋没とすくなくとも同程度には、「ベタ」な少女性を称揚する言説に対する警戒心もたずさえておくべきだと考えます。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
2009年刊行。著者は写真評論家。戦後民主主義とは些か大上段な構え方だが、少女漫画をいかに捉えようかという点の軸として「純粋少女」を持ってきたのは悪くないように思う。ただ、こちらも少女漫画読みとは到底言えないので、「へぇー、そうなのか」と思いながら読破したところ。著者による有名どころ作家の代表作レビューがあるのが、ありがたい。
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