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アラブ、祈りとしての文学
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アラブ、祈りとしての文学

岡真理【著】

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アラブ、祈りとしての文学

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 みすず書房
発売年月日 2008/12/25
JAN 9784622074236

アラブ、祈りとしての文学

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商品レビュー

4.2

16件のお客様レビュー

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2023/11/03
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※このレビューにはネタバレを含みます

勝手に『ガザに地下鉄が走る日』のようなものかと思っていたが、こちらはアラブ文学の紹介を通した諸々でした。全然邦訳されてない/絶版になっているのに、取り上げられている話が面白そうすぎて、読みたさが募る一方笑 いくつか平たく言うと唸った視点があった。 一つ目は、「ホロコーストを体験したユダヤ人がなぜパレスチナ人に同じことを繰り返すのか、という問いをよく聞く」という段。まさに『ガザに地下鉄が走る日』を読んだあとに私自身もその問いを持っていた。 …ホロコーストはそれを体験した人間たちに何を教えたのか?ホロコーストという出来事とは、実は人間とは他者の命全般に対して限りなく無関心である、という身も蓋もない事実を、言い換えれば「人間の命の大切さ」などという普遍的な命題がいかにおためごかしかということを否定しがたいまでに証明してしまった出来事ではなのだろうか。それはかつて起こったのだから、また起こるかもしれない。人間にとって他者の命などどうでもよいのだから。そのことをとりかえしのつかない形で体験してしまった者たちにとって、同じことが二度と繰り返されないためには、人間の命の大切さなどという普遍的命題をおめでたく信じることではなく、それがいかに虚構であるかを肝に銘じることのほうがはるかに現実的と思われたとしてなんの不思議があろう。…彼らのシニシズムは、彼らの振る舞いが、ホロコーストを経験したユダヤ人「にもかかわらず」ではなく、むしろホロコーストを経験したユダヤ人「だからこそ」なのだということを物語っているように思えてならない。(p.29-31) 目から鱗というか、なるほどたしかにそういう見方はあるなと思った。とはいえ多くの経験者の子らはこの理論を正当化に使ってはならないと思うが。 なるほどその2は、イメージについて。 …世界から忘れ去られ、苦難に喘ぐ人々がもっとも必要としているもの、言い換えるならば、世界に自らの存在を書き込み、苦難から解放されるために致命的に必要とされるもの、それは「イメージ」である。他者に対する私たちの人間的共感は、他者への想像力によって可能になるが、その私たちの想像力を可能にするのが「イメージ」であるからだ。逆に言えば、「イメージ」が決定的に存在しないということは、想像を働かせるよすがもないということだ。(p55) まさにそうで、パレスチナの表象は数もないがゆえに、あまりに遠い。逆にイメージを流布させた方が勝ちみたいなこともあり、あまりに不利。 そしてタイトル、最初の問いへの答えに帰着する …では、祈ることが無力であるなら、祈ることは無意味なのか、私たちは祈ることをやめてよいのか。しかし、いま、まさに死んでゆく者に対して、その手を握ることさえ叶わないとき、あるいは、すでに死者となった者たち、そのとりかえしのつかなさに対して、私たちになお、できることがあるとすれば、それは、祈ることではないのだろうか。だとすれば、小説とはまさに祈りなのだ、死者のための。人が死んでなお、その死者のために祈ることに「救い」の意味があるのだとしたら、小説が書かれ、読まれることの意味もまた、そのようなものではないか。(p301) このような日々で、自分の無力さにやるせない気持ちが生れることもあるが、私はまずは本を読むことを通じて、連帯を示しているのだと赦されたような気がした。 …とはいえ小説は、その本質において反国家的なものである。私たち自身がいかなるネイションに属そうと、小説を読むことで作動する人間の想像力は、人間的共感を「われわれと同じネイション」のあいだだけにとどめて他者の人間性を否定するイデオロギーと、根源的に対立せざるをえないからである。だから、小説を読む者たちは潜在的に非国民である。(p306)

Posted by ブクログ

2021/11/16

岡先生の授業を追体験するかのような本。ミクロの作家個人や、登場人物一人ひとりへの関心や理解が鮮やかだからこそ描ける全体像の切実さと危機感を思い出す。抑制的な装丁と裏腹に、アラブ地域の悲劇への無関心への警鐘を鳴らす本。

Posted by ブクログ

2017/02/13

大学入試の小論文で「文学は戦争の対義語たりえるか」という題で出てとても感銘を受けた。爾来、自分が将来やりたいことを考えるたびにそれって果たして世の中にとって意味あるものなのか、という視点を考えるようになったし、広い世界を見ようといろんな国をバックパックするようになった、1つのきっ...

大学入試の小論文で「文学は戦争の対義語たりえるか」という題で出てとても感銘を受けた。爾来、自分が将来やりたいことを考えるたびにそれって果たして世の中にとって意味あるものなのか、という視点を考えるようになったし、広い世界を見ようといろんな国をバックパックするようになった、1つのきっかけになった文章です。

Posted by ブクログ

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