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めくるめく世界 文学の冒険シリーズ
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 国書刊行会 |
発売年月日 | 1989/04/01 |
JAN | 9784336024664 |
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めくるめく世界
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商品レビュー
4.1
9件のお客様レビュー
奇想というよりかは空想の爆発。一人称二人称三人称が交錯していく形式は面白かったし、詩的で文学的なんだけどめちゃくちゃ笑える。段落替えが殆ど無くて、ばーっと文章を羅列していく感じだった。けど『襲撃』のときのような息苦しさは無くて、次々と繰り出される「めくるめく世界」を表現するのに一...
奇想というよりかは空想の爆発。一人称二人称三人称が交錯していく形式は面白かったし、詩的で文学的なんだけどめちゃくちゃ笑える。段落替えが殆ど無くて、ばーっと文章を羅列していく感じだった。けど『襲撃』のときのような息苦しさは無くて、次々と繰り出される「めくるめく世界」を表現するのに一役買っていた。ページ数の割に文章多い。長い。けどこの小説の波長に合ったとき一気に読み進められる。ただただ楽しい読書体験だった……
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キューバの作家、レイナルド・アレナスの長編小説。ずいぶん前にアレナス自身を描いた映画「夜になる前に」が東京で公開されていたけれど、見るチャンスを逃してしまい、アレナス作品に触れたのは事実上これが初めてである。率直に言えば途中まで読んでから長らく放置していて、このたびようやく読了...
キューバの作家、レイナルド・アレナスの長編小説。ずいぶん前にアレナス自身を描いた映画「夜になる前に」が東京で公開されていたけれど、見るチャンスを逃してしまい、アレナス作品に触れたのは事実上これが初めてである。率直に言えば途中まで読んでから長らく放置していて、このたびようやく読了した作品でもあった。読み終えるまでに10年以上かかったのは個人的には最長記録。 どうやら現実の人物であったらしい修道士、セルバンド・デ・ミエル師に取材した奇想の物語である。18世紀中葉のメキシコに生まれ、動乱の新旧大陸を股にかけて活躍してはあまたの著名人と交わり、メキシコの独立を見届けて昇天したこの怪僧、ほんとうに実在したのだろうかと疑いたくなるほどの破天荒さであり、実際にこの小説の特異な叙述が混乱に輪をかけている。当人の語る一人称、かくあれかしと作者の語る二人称、事実を客観的に叙述する三人称という戦略をとって、この怪僧の奔放な生涯が足跡が存分に語られる。 とはいえ、当初は比較的厳密に一・二・三人称が交互に語られて一つの事実を多面的に照射しているのだが、だんだん一人称が優勢になり、客観的叙述であるはずのところにもあまたの歪曲や誇張が入り込んできて、見事に物語が混乱してゆく。まあこういうコンセプトをシステマティックに徹底すると、いわゆるポストモダン小説みたいに「よく書いたなとは思うけど小説としてはちっとも面白くない」ものに堕してしまいがちなので、これでいいのだろう。とはいえ少々くたびれるのも事実であって、ちょっとは現実に碇を下ろしてくれ! という気分になることはあった。 基本的には「こうあって欲しかったセルバンド師」像が極めて優勢で、作者自身の憧憬が強く投影されているように思う。そもそもが18~19世紀の欧州に新大陸、混乱を極めていたのは事実だし、このような怪人物に事欠かないこともあって、こういった趣向はむしろふさわしいのかも知れないが。 なお本作、随所からゲイポルノ的な雰囲気が感じ取れるのが興味深く、はっきり言えばかなり面白かった。たとえば「14 国王の庭園を訪れた修道士の見聞について」などはわかりやすいけれど、「24 ロス・トリビオスの監獄について。修道士の幽閉」で丹念に執拗に描写される修道士の緊縛のようすなど、倒錯しまくっていて、これは作者は書いていて相当に楽しかったんじゃないだろうか。このあたり、ゲイカルチャーからの影響と簡単に書いてしまいたくもなるんだけど、なにしろ執筆時は60年代半ば、革命直後のキューバにそういうものがあったかどうかはまったく明るくなく、むしろレイナルド・アレナスの奔放な創造力のなせる技という感じもする。 なお鉄鎖で緊縛されまくったセルバンド師は最後にはほとんど球体になってしまい、その重みで監獄とセビーリャの街じゅうを破壊しまくって脱獄に成功した模様。ほとんどお馬鹿なインド映画のノリですが、実のところそういう小説なんだよな。そう、かしこまって読む小説じゃないんです。 毎度こういう小説を読むたび、歴史をこうやって再構築する力が文学にはあるのだと言うことを再認識もするし、日本の小説に乏しい要素でもあると思っている。そもそもこれほどの怪人物があまり出てきにくい風土なのかも知れないが。 それにしても巻末の年表を見てのけぞったのだが、執筆時のアレナス、弱冠22歳だったそうで……。ウムムムム、それはとんでもないことじゃないか……。
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魔術的リアリズムという小説技巧は、尊いもののように崇めるのも悪くないけれど(実際、本作のように威力を発揮した際の力はとてつもない)、実は「爺さんその話は何度も聞いたよ」的な、与太話として楽しむ方がその出汁をすべて味わい尽くせるのではないかと思う。 本作は、実在した修道士を肴にし...
魔術的リアリズムという小説技巧は、尊いもののように崇めるのも悪くないけれど(実際、本作のように威力を発揮した際の力はとてつもない)、実は「爺さんその話は何度も聞いたよ」的な、与太話として楽しむ方がその出汁をすべて味わい尽くせるのではないかと思う。 本作は、実在した修道士を肴にして与太話を愉しめる、そんな作品。このセルバンドという修道士は、捕らえられても脱獄につぐ脱獄。脱獄の合間にトラファルガー海戦に遭遇してしまうという謎の引きの強さをもつ怪人なのだが、その生涯を作者アレナスが魔術的リアリズム手法により、超絶レベルのおかしみに昇華している。 一方で、本作はアレナスの不遇の生涯を投射させることも可能。キューバ島を「島そのものが牢獄」と例えたアレナス。投獄と監視のさなかに書かれたのが本書である。牢の格子も、国境の山脈も海峡も、乗り越えて逃避行を続けたセルバンドに自身の思いのたけを仮託したことは、確かだろう。
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