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野上彌生子全小説(10) 迷路 二
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野上彌生子全小説(10) 迷路 二

野上弥生子(著者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 岩波書店
発売年月日 1998/02/24
JAN 9784000921107

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2024/08/30

『迷路』(上・下) この作家の小説を読むのは『秀吉と利休』以来である。多くの作家が二人の関係を描いているが、彼女の分析には納得感があり共感できたのを覚えている。 『野上弥生子随筆集』で彼女の思考や交友関係の微妙な空気感も印象に残った。 彼女は大分県臼杵市の古い醤油醸造家(フンドー...

『迷路』(上・下) この作家の小説を読むのは『秀吉と利休』以来である。多くの作家が二人の関係を描いているが、彼女の分析には納得感があり共感できたのを覚えている。 『野上弥生子随筆集』で彼女の思考や交友関係の微妙な空気感も印象に残った。 彼女は大分県臼杵市の古い醤油醸造家(フンドーキン)に生まれ明治女学校に進み、文学の世界に地歩を築き満百歳まで書き続けた女流作家である。 夫 礼一郎との関係で夏目漱石に私淑し、後に田辺元と付き合い、中勘助や宮本百合子を生涯の友とした。 吉本隆明の転向問題の論考で中野重治とともに俎上にあげていたのはこの小説のことだった。 村山由佳の『伊藤野枝 雨よ嵐よ』でも彼女は身近な支援者で親しく援助するが、後々距離ができてしまう存在として描かれていた。 読書をするなかで随所で目にする作家であった。 偶々古本屋でこの分厚い上・下二冊が目に止まり、手にして読むことにした。 丁寧な筆致の壮大なドラマが複数の経路を辿って組み立てられる。初めは全体像がわからず閨閥や登場人物が複雑でなかなか頭に入らない。 日本が太平洋戦争に入っていく時期の地方財閥や知識層の内情が赤裸々に描かれ、女性たちの生態も錯綜する。上層階級に偏ったスノッブ感は抗えない。 主人公は学生時代の左翼活動から既に転向(「お辞儀をした」)し、心の闇を引き摺る地方の名門醸造家の次男 菅野省三である。作家のよく知る環境の生い立ちと構成で読み手を引き込む。恋人の万里子も重要な役割を果たす。活動から転向した仲間の満州行きや害虫研究者の話が従姉妹の閨閥間の結婚話と重なる。戦時の特需景気で地方の旧家にも家系同士の対立や一族繁栄の画策など欲得の思惑が錯綜する。 知識層の若者について野上の洞察である。 「彼らの台風時代において・・・当時の若い世代を掴んだ新しい経済的世界観に、同じたならば同じたで、同じなければ同じないで、悩むべきを悩まず、苦しむべきを苦しまず、烙印も押されず、足もさらわれずに高校大学とへて無事に社会の有利なポストへ辿りこんだものは、よっぽど運がよいのか、この上なくずるいか、仕方のない愚者であった。・・・省三らの識別はこの三つの範疇を出なかった。」 この小説は昭和11年に「黒い行列」の題名で始まり、12年に「迷路」として『中央公論』に掲載、中断をへて「江島宗通」の題名で『世界』に24年から31年にかけて発表した。作者が20代後半から50代半ばに書き継いだ長い時間をかけた作品である。 染井のご隠居様なる江島宗通の能の世界について深く丹念に描かれている。しかし伝統芸能の詳しい描写が延々と続く展開はこの物語とどう関係するのか違和感を感じる。長期間かけた作品なので別のテーマで書いた話を無理に合体させた不自然さや字数稼ぎの思惑と疑ってしまう。 「上巻」のゆったりとした展開に比べ「下巻」は初めからドラスチックでハイテンポになる。 友人の小田が木澤の元妻せつの目の前で列車軌道に転落死する。省三と万里子が様々な経緯を辿り結婚する。せつが活動家を庇って事故死、万里子の理解者でいとこの多津枝と年彦の飛行機墜落死、それを聞く万里子の絶望・・・。 女の鋭い視線で同性の功利的な狡さや性の欲望も淡々と抉りリアルに活写する。 省三は万里子の父・財界総理の庇護のもと、大分の歴史である大友宗麟のキリスト教布教の「西教史」を研究する仕事に就き、地元の図書館で働く。その間、義父から二度徴兵回避を勧められるが辞退する。赤紙で応召され中国大陸にいく。侵略戦争の理不尽さと前線一兵卒の悲哀に葛藤する。敵兵を殺した罪悪感、現地農民からの略奪、良心に苛まれ悩む。徴発隊分遣基地で本部からの出頭命令に怯えて出向くが、呼び出したのは変貌した友人木澤であり、中国共産党の反日解放闘争への誘いであった。省三は捕虜の中国人スパイ容疑者を救出し解放闘争に加わるべく脱走するが追跡隊に見つかり射殺される。長い物語は終わる。 省三の良心と左翼思想、侵略者と脱走兵、そして万里子の夫であり生まれてくる子の父親になること、錯綜する思いが突然遮断された。 戦争は上層階級や知識層にも非情を強いる。 作者の半生を総括する重いテーマの長編であった。 読後、言葉にならない虚しい気持ちに襲われる。

Posted by ブクログ

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