象牙色の嘲笑

ロス・マクドナルド(著者)

• 販売会社／発売会社: 早川書房
• 発売年月日: 1976/05/31
• JAN: 9784150705039

商品レビュー

2018/11/11

今回も彼は完膚なきまでに質問する。読んでいるこちらが当惑するほどに、個人の領域に立入る。
そのあまりある執拗さは、終いには犯人が「なぜきみはおれを苦しめるのだ」と身震いさせられるくらいまでにもなる。

だがしかし、そこまで行いながらも彼の影は見えない。犯人は最後、足枷のように影を引き摺るのに、彼には影すら見えない。
「質問者」である以上に「傍観者」である所以だ。

真相は戦慄を憶えた。
しかし、未だに謎なのは、被害者は何を「嘲笑」っていたのだろうか?

2015/04/01

リュウ・アーチャーの事務所の前に依頼人の女が待っていた。依頼人のユーナは宝石を盗んで逃げた元使用人の黒人の女、ルーシー・チャンピオンを探してほしいとのことだった。しかし、その話は信用できなく、何か隠していると思われた。アーチャーは怪しみつつもその依頼を引受け、ルーシーの捜索を開始した。

ユーナの情報を元に調査を開始するとすぐにルーシーを見つけ出すことができ、後を追って滞在しているホテルを見つけた。ユーナに報告し、彼女がルーシーと話をつける間、アーチャーは隣の部屋で盗み聞きをする。やはり、ユーナは隠し事をしていて重症を負った男についてルーシーと話をしていた。その男を知っているルーシーを引き止め自分の目の届くところに置いておこうとするユーナだったが、ルーシーはあくまで彼女の元を離れようとした。

ユーナと別れたあとルーシーは医師のベニングを訪れ、その後、駅へ向かった。駅につくとアーチャーは、ルーシーを尾行していた私立探偵の許可を取り消されたマックス・ヘイスという男に話しかけられた。ヘイスはアーチャー同様ユーナに雇われていたが、アーチャーの知らないところまで知っているようだった。共同で調査し大金を手に入れようと誘うヘイスだが、アーチャーはその話に乗らない。その時、ルーシーが走りだし見えなくなってしまった。

ルーシーを見失ったアーチャーはホテルへ戻りルーシーの死体を発見すた。彼女のハンドバッグの中に失踪した富豪の息子チャールズ・シングルトンの行方を賞金付きで捜査中という新聞の切り抜きが見つかった。ルーシーの部屋を出るとルーシーの婚約者のアレックス・ノリスという男が勘違いをして襲い掛かってきた。アレックスを落ち着かせたアーチャーは警察に連絡し殺人事件として捜査が開始された。アレックスが疑われると、怖くなって逃げ出してしまった。しかし、その後警察に捕らえられた。

ルーシーの殺人がチャールズ・シングルトンと関係があると考えたアーチャーは彼の母親のシングルトン夫人に会いに行く。シングルトン夫人の付き添いのシルヴィア・トリーンからチャールズを探しだすよう依頼された。

チャールズの失踪にはベニング医師の妻、エリザベスとユーナの兄、レオが関係しているとわかった。失踪直前、チャールズはエリザベスと一緒に店を出るところを目撃されていた。また、アレックスの証言からレオがチャールズを撃ち殺したとルーシーから聞いたことがわかった。

谷底に落ち炎上している車がチャールズのものだとわかり、中から焼死体が発見された。最初この死体がチャールズのものだと思われたが、確認の結果元私立探偵のマックス・ヘイスだとわかった。ヘイスの調査結果からレオがシカゴの暗黒街のボスであり、エリザベスと同棲していたことがわかった。

エリザベスは最初ベニング医師と出会い結婚した。その後チャールズと出会い不倫関係となるが、ベニングを置いてチャールズを追いかけていったあと、チャールズに捨てられた。そこでレオと出会い同棲することになった。だが、レオが精神病を患ったため、暗黒街の連中に知られないようベニングとチャールズのいるロサンゼルスに戻ってきた。チャールズと再び不倫関係となるが、レオにバレてしまった。レオはチャールズを撃ち、チャールズは密かにベニング医師の元に運び込まれた。ベニング医師はチャールズがエリザベスの不倫相手だと知っていてわざとチャールズを殺した。

レオの付き添いとしてシカゴから付いてきていたルーシーはチャールズが撃たれて死んだことを見てシングルトン夫人に話そうとしていたが、それをやめさせるためにベニング医師に殺された。元私立探偵のヘイスはチャールズ失踪の真相を暴き、ベニング医師を脅迫しようしたため、逆にベニング医師に殺された。エリザベスがアーチャーに事件の真相を話していた時ユーナが現れ、ユーナがエリザベスを殺し、アーチャーがユーナを殺した。

結局、チャールズの死体はベニング医師によって焼かれ、骨は標本に偽装されて病院の一室に飾られていた。

2012/05/18

リュー・アーチャー・シリーズ

ウナと名乗る女性から元使用人で宝石を持って逃げだしたルーシーという黒人の女性を探すように依頼されたアーチャー。ルーシーが下宿する家に赴くが彼女と大家の対立から出ていくルーシー。ルーシーと恋に落ちたアレックス・ノリス。殺害されたルーシー、現場から逃走したアレックス。富豪の青年の失踪、ルーシーを調査する悪徳探偵マックス・ヘイス。チャールズ・シングルトンの行方。ルーシーとシングルトンをつなぐペニング医師。焼けた車のなかで発見されたチャールズの服を着た焼死体。気が狂った男に射殺されたというチャールズ。ウナの目的。暗黒街のボスの精神異常。ウナとボス・デュラノとの関係。