若殿ばんざい 他一編 山手樹一郎長編時代小説全集 37 春陽文庫37

山手樹一郎(著者)

• 販売会社／発売会社: 春陽堂書店
• 発売年月日: 2006/06/19
• JAN: 9784394101376

商品レビュー

2024/11/18

「若殿ばんざい」と「のっそりと参上」の二作品を収録しています。

「若殿ばんざい」は、桑名藩の若殿である松平千代三郎が、家臣に黙ってひとりで町に出るという冒険を試みる話です。やはり町に出ていたお鶴という姫に出会い、両国橋を案内する役目を引き受けた彼は、すっかり彼女と意気投合し、後日ふたたび会うことを約束します。後日、ふたたび単身で町に出た彼は、スリのお松と浅吉を家来にして幽霊屋敷に入りますが、そこはお鶴をめぐる陰謀の舞台となっていました。世間知らずの若殿と姫が織りなすコミカルな内容の作品です。

「のっそりと参上」は、浅香八百太郎が材木屋の女将であるお香という美女と出会い、江戸まで旅路をともにすることになる話です。「稲妻小僧」という異名をもつ盗人や、お香の別れた夫の杉太郎が彼女をつけねらいますが、八百太郎が彼らの襲撃をしりぞけてお香を守ります。

どちらの作品も、ストーリー上でのスリリングな展開はあまり見られませんが、鷹揚とした主人公と勝気なヒロインのキャラクター性が魅力的に感じました。