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美しさと哀しみと 中公文庫

川端康成(著者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 中央公論新社
発売年月日 1973/08/10
JAN 9784122000209

美しさと哀しみと

¥220

商品レビュー

3.7

11件のお客様レビュー

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2023/01/23
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※このレビューにはネタバレを含みます

鎌倉在住の55歳の作家大木が、四半世紀前、妻子ありながら通じた、音子。 音子は現在画家として身を立てて京都在住。 会いに行き、のち、音子の弟子にして同性愛の相手たる、若いけい子とも、関係を持つ。 けい子は師匠にして思い人の音子の復讐のために、大木とも、その息子太一郎とも関係を持ち……というあらすじ、正直いって、 SHO・U・MO・NEEE! DO・U・DE・MO・EEE! 大変に通俗的。悪い意味で。渡辺淳一かよ。レディコミ。悪い意味で。 掲載誌が「婦人公論」らしいので読者に合わせたのだろうが、作者にとっても読者にとっても、その「おもねり」って一体どうだったんだろう。 1961~1963年の女性読者って、こんなエロジジイの繰り言を提示されて、甘んじて感動しなければならない状況に置かれていたんだろうか。 私が1983年生まれ。 母が1960年生まれ。 1933年生まれの祖母が28歳から30歳で手に取っていたかもしれない雑誌だ。 あの闊達な祖母が、こんな小説を? あるいは1929年生まれの皆川博子が、32歳から35歳で手に取っていたのかもしれない作品。 ……と細かい年代にこだわってしまった。 若き日にうんたら~とか、忘れられない記憶がどうたら~とか、ああうっせえなあ~。 いっそ「血みどろ臓物ハイスクール」のキャシー・アッカー姐さんを召喚して蹴散らしてもらいたい。 「抵抗する――人生ではなく、忘却に」 「新鮮な肉だとよ、お嬢さんたち。あたしゃもっと若いけど、こちとらタフで堕落した腐れビーフ。わがオマンコは赤しオエッ」 てな具合に。 ただしちょっと冷静になって、60歳を超えた川端による願望充足モノ、と考えれば、業の深さ(≒底の浅さ?)が興味深くはある。 川端って想像力も構成力も決して秀でていないので、結構自分を切り売りしている。 厳密な私小説作家ではないにせよ、自分モデル小説が多い。 で、これ、妻・秀子にも養女・政子にも読まれる。 ちょっと面白いのは、大木の実子の太一郎は、政子の婿・川端香男里がたぶんモデルになっている。 義理の息子よりも自分のほうがプレイボーイであると。 ええとばっちりだ。 もう少し考えを進めてみれば、大江健三郎の中期以降と同じく、敢えて自家中毒的な自分モデル小説といえる。 大江(や西村賢太)が過去の自作のタイトルをもじって登場させていたように、「伊豆の踊子」をもじって「十六七の少女」とか。 非道な話らしいのに、青春文学として大衆に愛されて云々、とか。 どこかで川端は、作中では自分を厭な人物として描くと書いていたが、本作でもその通り。 イルカってくすぐったがりらしいけどあなたはどうですか、と元愛人の弟子を口説こうとするあたり、DO・U・KA・SHI・TO・RUUU! このノリ、自己卑下と露悪とパロディの精神ととれば、そこそこ面白い。 というか終盤の展開が決して悪くない。 左の乳はだめだとか、と思いきや右がだめといったりとか、やけにマゾヒスティックなサディストらしいけい子という人物の尋常じゃなさ、面白い。 思い返すと決して全編ひどいわけではい、どころか美味しさが判ってきたような気がする……不思議。 映画では池田満寿夫の絵が登場するのだとか。

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2020/04/11

何度か映像化されている本作は、川端康成のキャリアとしては晩年に書かれた作品にあたり、執筆から数年後にはノーベル文学賞を受賞し、さらに数年後には自死を遂げることになる(事故死説もあるがここでは採用しない)。そう思って読むと、たしかにどこか翳を感じる部分がある。本作の登場人物である大...

何度か映像化されている本作は、川端康成のキャリアとしては晩年に書かれた作品にあたり、執筆から数年後にはノーベル文学賞を受賞し、さらに数年後には自死を遂げることになる(事故死説もあるがここでは採用しない)。そう思って読むと、たしかにどこか翳を感じる部分がある。本作の登場人物である大木年雄と上野音子のエピソードには、著者の実体験が反映されているらしく、作品に通底する妖しい雰囲気には、たしかに数年後命を絶ってもおかしくないような部分もある。実際、本作の結末でも、ある登場人物が死という道を選ぶ。まるで川端本人の心の闇がそのまま反映されているかのようである。物語自体はそこまで特別な内容ではなく、師匠であり同性愛関係にある女性の過去を知った画家が、彼女になり代わって復讐を誓い、その「過去」に関係した男性の長男に近づいてゆくというもので、いわゆる「悪女」の話であるが、その行動はタイトルにもあるように、時に「美しさ」を感じさせ、時に「哀しみ」を感じさせる。このアンビヴァレンツもまたテーマとなっており、坂見けい子は純粋に復讐しようとしているように見えて、それを超えた感情を抱いているようにも感じられるし、音子も過去を許しているようにもいないようにも見える。この二重性という部分に着目して、ひるがえって川端本人について見てみれば、ノーベル賞という最高の栄誉を受賞し、作家生活のまさに絶頂にいるなかで、突如命を絶ってしまう。これもまた「アンビヴァレンツ」である。そう考えてみると、本作は晩年の川端の思想がもっとも如実に反映された作品といえるのではないだろうか。

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2016/02/24

❖会話を含めた作家の洞察力湛える緊張感のある文体に魅了された。息を呑むような感覚的な閃きはよくみがかれた鋭い刃のそれを連想させる。久しぶりに文体の鋭敏にふれ、文学者の凄味を思い知られた。といっても本作が作家の最良部の長篇『山の音』『雪國』と並ぶ傑作とは思わなかったけれど。感覚的に...

❖会話を含めた作家の洞察力湛える緊張感のある文体に魅了された。息を呑むような感覚的な閃きはよくみがかれた鋭い刃のそれを連想させる。久しぶりに文体の鋭敏にふれ、文学者の凄味を思い知られた。といっても本作が作家の最良部の長篇『山の音』『雪國』と並ぶ傑作とは思わなかったけれど。感覚的に(あるいは観念的であるにしろ)これだけ人物関係の陰翳を魅力的に描きだせる作家は稀有。登場人物たちの淫する情動の関係から人間の業のようなの官能性(おののき)を巧みに引きだし、作家はモラルではなく美意識で律してみせる。力技を堪能した。

Posted by ブクログ

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