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思考機械の事件簿(1) 創元推理文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 東京創元社 |
発売年月日 | 1977/07/11 |
JAN | 9784488176013 |
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思考機械の事件簿(1)
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商品レビュー
3.8
13件のお客様レビュー
思考機械の短編集。や…
思考機械の短編集。やはりこの1冊目がもっともレベルの高い作品がそろっている。今読むとやや古めかしいが、古典的名作として必読の書。
文庫OFF
正義のためでも金のた…
正義のためでも金のためでもなくただ頭の体操のために事件を解決する思考機械、ヴァン・ドゥーゼン教授の活躍する短編11編収録。どれも高水準なミステリとして楽しめる。当時のミステリではトリックの緻密さは一番ではないですか。
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『思考機械(シンキング・マシーン)』は、本名を「オーガスタス・S・F・X・ヴァン・ドゥーゼン」といい、哲学博士(PH.D.)、法学博士(LL.D.)、王立学会会員(F.R.S.)、医学博士(M.D.)、そして歯科博士(M.D.S.)といった、肩書きと名前とでアルファベットの殆ど...
『思考機械(シンキング・マシーン)』は、本名を「オーガスタス・S・F・X・ヴァン・ドゥーゼン」といい、哲学博士(PH.D.)、法学博士(LL.D.)、王立学会会員(F.R.S.)、医学博士(M.D.)、そして歯科博士(M.D.S.)といった、肩書きと名前とでアルファベットの殆どを使ってしまうという、驚くべき人物である(それにしても、長い名前だこと)。 1887年に誕生した、シャーロック・ホームズの人気を皮切りに、各国から、それに続けとばかりに現れた個性的な推理ものの中に於いて、この思考機械シリーズは、1905年の『十三号独房の問題』で初登場し、その彼自ら刑務所の独房内に入り、そこから見事に脱出してみせるといった、彼自身の知識の豊富さに基づく観察眼と発想を転換させる天才ぶりに、サバイバル要素も加わったストーリー展開が斬新で、それは、本書の「《思考機械》調査に乗り出す」にも感じられた、探偵自身が窮地を脱するようなワクワクさせる面白さがあった。 しかし、そのイメージがあまりに強すぎたのか、本書の短編十一作を読んだ率直な印象としては、割とオーソドックスな型に感じられ、誰にも解けないような謎に興味を持つ思考機械が、時に新聞記者の「ハッチンソン・ハッチ」(彼も思考機械の魅力に取り憑かれた内の一人)を情報収集役にし、安楽椅子、フィールドワークとやり方は様々でありながらも、やがては論理的思考によって、事件を解明していく、よくあるパターンといえばそうである。 また、謎の中には彼の肩書きを象徴するような、理系のそれの分かりづらさや、中には、伏線に無い後付けしたようなものもあって、読者が共に読みながら謎を解明していくには、やや合わないかもと感じたが、それでも1900年代に、このような今でいうところのオーソドックスな型を作り上げた功績は、凄いと思う。 そして、そこにフットレルならではのストーリーテリングが加わることで、事件の謎を解く物語としての面白さは充分に感じられ、特に、同じ叙情的文章を二度掲載したこと自体が伏線となっている、「完全なアリバイ」や、金庫破り専門の男ドーランが妻の為に、警察が押し掛けてくるまでに如何にして大金を隠すかといったスリリングさも読み所の、「茶色の上着」は良かった。 更に、フットレルの描き方で印象深かったのが、犯人の中にある人間の汚さや真意の読めない恐ろしい部分であり、その、時に思い切った非情なさまは如何にして、心の中で形成されたのかといった点に惹かれたのが、「情報洩れ」や「余分の指」であり、特に前者の、他人の信頼をいいことに飄々と日常生活を送っていた、その心理状態は全く理解出来ないものがあったが、そうしたものも含めて人間の複雑さなのかもしれないと、思わせるものがあったのも、確かであった。 それから特筆すべき点は、ホームズとはまた異なる、思考機械の探偵像であり、その興味のある謎の話を聞いている時の彼独特の仕種、椅子に座りながら細長い指の先をつき合わせ、斜視ぎみの目を天井に向ける様子や、スティーヴン・スピュリアによる表紙の彼の絵もそうだが、中でも、彼の生き様を表しているものとして、『二プラス二は四であるのは、つねにそうである』の台詞に裏付けられた、論理的思考に対する絶対的な自信であり、時にはそれによる頑固な一面も見られたが、『想像だけで論理操作の半ばが達成される』や、『あらゆる疑問点の答えを得るまでは、謎が解けたなどというべきでない』といった、考える事や、どこまでも丁寧に手抜かりなく一つ一つ追っていく事の大切さを唱えており、決して自信過剰なだけでは無い、直向きな真面目さこそが、彼の真の持ち味なのだと感じ取れた。 そして、それは物語で依頼人から届いた小切手も、身体障害児童収容ホームへ送付させる、彼の、謎自体が報酬であると認識している、その優しい人柄からも感じられて、そんな彼の人柄はそのまま、タイタニック号の遭難事故で、妻を救命艇に押しやり、自分自身は船に留まって海底に没した、フットレル自身のそれを表しているようで、なんだか切なくなってしまったが、おそらく確固たるものを内に抱いていた方なのだろうと思わせる、彼の人間性があったからこそ生まれた物語なのかもしれないと考えると、また違ったものが見えてくるような気がしてならない。
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