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人間・この劇的なるもの 中公文庫
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商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 中央公論新社 |
| 発売年月日 | 1975/05/10 |
| JAN | 9784122002104 |
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人間・この劇的なるもの
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人間・この劇的なるもの
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商品レビュー
4.3
3件のお客様レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「私たちは、自分の生が必然のうちにあることを欲している。自分の必然性にそって生きたいと欲し、その鉱脈を掘りあてたいと願っている。劇的に生きたいというのは、自分の生涯を、あるいは、その一定期間を一個の芸術作品に仕立て上げたいということにほかならぬ。」 人は自由を求めているのではない、必然性から生まれてくる宿命の下で人生を歩んでいきたいのだというメッセージはとても腑に落ちた。やたらと自由・平等・平和が声高に叫ばれる中で、一人ひとりが独自の個性を世間から求められる。そんな現代に対して知らずのうちに生きづらさを感じていた自分にとってはとても救われる思いがした。 このタイミングで出会ってよかった本。
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人間は劇的である。 音で聞いて〝激的“と誤認してしまいそうになるが、「演劇的」という語感だ。どちらも激しそうではあるが。 著者の福田恆存は、1912年生まれ。本書は、著者の思想のエッセンスが凝縮された評論集であり、演劇観・人間観・文明批評が述べられる内容。人間は、舞台の上で演じ...
人間は劇的である。 音で聞いて〝激的“と誤認してしまいそうになるが、「演劇的」という語感だ。どちらも激しそうではあるが。 著者の福田恆存は、1912年生まれ。本書は、著者の思想のエッセンスが凝縮された評論集であり、演劇観・人間観・文明批評が述べられる内容。人間は、舞台の上で演じるように日常生活を生きている。シェイクスピア演劇の翻訳者として、その虚構に迫る。 単に「人生はフィクションだ」と軽く捉えるような相対主義的主張ではなく、人間が生きるということは、常に他者の目を意識し、役割を演じ、矛盾を抱えながら生を演出する事だと述べる。シェイクスピアも「All the world's a stage(人生はすべて舞台)」だと言っている。 現実は、秩序だった合理的構造ではなく、葛藤・偶然・偽善・演技が入り混じったものだ。人間は絶えず「仮面」をつけて社会と接し、役割を演じている。平野啓一郎の「分人」という考え方にも通ずる。しかし、人間に核となる真の人格などあろうものかと、そんな気すらするのだ。 人間は自らの人生を、相手やシーンに応じて使い分ける生き物。その一人の個体の中に潜む人格は日々葛藤し、対立し得る個性をもつのだ。だから、孤独な状態であれば仮面を外して「真の人格」になれるかというとそうではない。社会的価値観を具備する支配者人格(前頭前野みたいな機能)が、より良い人生を送るため、もう一人の人格に勤勉や忍耐を強いるのだ。 自分自身を支配できない人間は、他者の支配を許す事になる。その支配の交換は、自発的に行われるのか、それとも強制的な搾取か。自発的な支配の交換は愛とも言えるかも知れないが、強制的な支配は、同調圧力や他者の規範(労働契約とか)の類だ。私たちはそれに怯え、それに疲れている。 その他者による支配の侵襲度を変えながら、規範に合わせて顔を使い分け、役割を果たしていく。その役割こそ演技であるのだろう。だから、他者と関わって生きるこの人生は劇的であり、抑揚のあるドラマとなるのだ。
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「何も思ふな。ただ生きてあれ」と太宰治は書いた。しかしそれは追い詰められた人間の「逃げ」なのだ。人間はただ生きるのではない。現実の生活とは別の次元に意識の生活がある。そこに関わらずに人間論も幸福論もない、と福田恒存は考えた。人生とは?生きがいとは?自由とは、個性とは?福田恒存によ...
「何も思ふな。ただ生きてあれ」と太宰治は書いた。しかしそれは追い詰められた人間の「逃げ」なのだ。人間はただ生きるのではない。現実の生活とは別の次元に意識の生活がある。そこに関わらずに人間論も幸福論もない、と福田恒存は考えた。人生とは?生きがいとは?自由とは、個性とは?福田恒存による正統派の人間論。「自由とは所詮奴隷の思想ではないか…自由によって、ひとはけっして幸福になりえない」キリスト教を奴隷の宗教と捉えたニーチェと同様に自由もまた奴隷の言葉なのだ。人間の根本問題を第三者的視点でロジカルに語る。小林秀雄と並んでかつてハマった評論である。
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