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無声映画の完成
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商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 岩波書店 |
| 発売年月日 | 1986/01/01 |
| JAN | 9784000102520 |
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無声映画の完成
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岩波の講座日本映画は多様な情報に富んでいて拾い読みするには最適だがレファランスとして使うのには最悪のツールだ。佐藤忠男が木村荘十二にインタビューした記事があったなと思って探そうとしても「トーキーの時代」の巻にもない、「戦争と日本映画」にもない。さんざ探して「無声映画の完成」にある...
岩波の講座日本映画は多様な情報に富んでいて拾い読みするには最適だがレファランスとして使うのには最悪のツールだ。佐藤忠男が木村荘十二にインタビューした記事があったなと思って探そうとしても「トーキーの時代」の巻にもない、「戦争と日本映画」にもない。さんざ探して「無声映画の完成」にあるのが見つかるが、木村荘十二はサイレント時代はほとんど何の業績もなくようやくPCLで名が売れた監督なのだから、これをトーキーの巻に入れる理由がまったく分からない。 邪推するなら編者が木村荘十二のデビュー作『百姓万歳』(1930)とか箸にも棒にもかからぬ(に違いないが何せサイレント映画なのでフィルムが残ってないから断定はできない)左翼偏向映画を評価しようとしたことがあるとしか思えない。 そもそも木村荘十二という男は東京の老舗牛鍋屋の末子として生まれるという典型的ブルジョア環境にありながら(或いはそれゆえにこそ)若い自分から左翼かぶれで、終戦で満映が崩壊した時も現地に留まって中国共産党の映画産業振興に協力しようとしたのはいいが、向こうからも迷惑がられて炭鉱で働かされていた(このように一方的に人民解放軍に横恋慕して邪険に扱われた日本の映画人は意外と沢山いる)にもかかわらず、帰国後には日本共産党に入党して反核映画を発表するなど、救いようのないブサヨク人生を送った人物である。 冒頭に書いた佐藤忠男のインタビューには戦後の満州朝鮮で本人が舐めた苦い経験(共産党の文化政策に進んで挺身しようとしたのに頭からゴミあつかいで肉体労働させられた)が、本人の口から負け惜しみたっぷりに回顧されて語られているところに資料的価値がある。 にもかかわらず木村荘十二がつまんない監督かといえば決してそうではない。PCL時代のミュージカルとか(より厳密に言えば浅草オペラを原型にしたミュージカル・コメディを映画化したもの)東宝時代のエノケン映画は都会的で洒脱な映像作りのセンスが光る佳作が多い。インタビューでは本人はこれらの作品を否定しているが、トーキー移籍直後に日本映画が映像文法を確立するにあたっては決定的な役割を果たした監督であることは間違いない。日本映画が早期からプレイバックを捨てて同録の方向へ向かった特殊な環境を考えれば尚更である。 最近の両大戦間日本文化研究ではマルキシズムはモボモガと同列に論じられるべき文化流行であったことはもはや定説となっている。戦前の左翼文化人が国家の弾圧によって窒息させられたという悲劇の言論史は戦後になって創造された神話に過ぎない。その意味で木村荘十二の中で左翼志向と都会的センスが同居していても何の不思議もないわけであるが、悲しい哉、この男の場合は片方だけが腫瘍となって全身を蝕んで終わった。その点は内田吐夢と比較すればはっきりと理解できる。
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