比較史のなかのドイツ農村社会 『ドイツとロシア』再考

肥前榮一【著】

• 販売会社／発売会社: 未来社
• 発売年月日: 2008/03/10
• JAN: 9784624321734

商品レビュー

2011/09/03

　著者のこれまでの雑誌投稿論文・書評などの集成。北西ドイツのフーフェ制に始まり、その対象範囲を徐々に東へ拡大しながら近代ドイツ～ロシアの農村社会の構造を明らかにし、その比較を試みる。また本書後半は、ハックストハウゼン、マックス・ウェーバー、マルクスといった当時の知識人階級がどのように東部農村を、ロシアを論じたのかについての研究史調査に絞って展開される。
　近代においてはフーフェをその源泉とした完全エルベ農民から最下層のホイアーリング・ゲジンデまでのヒラルキアな社会構造が成立していたドイツよりも、血縁を中心とした「家」を形成し、ミール制の中で定期的な土地割り替え秩序が保たれていたロシアの農村共同体の方が比較的平等であった、という指摘は面白い。

＜目次＞
序　エルベ川から「聖ペテルブルク―トリエステ線へ」――比較社会経済史の視点移動

Ⅰ　ドイツの農民とロシアの農民――史的比較の試み――

1,家族および共同体から見たヨーロッパ農民者機会の特質――社会経済史的接近
2,北西ドイツ農村定住史の特質――農民屋敷地に焦点を当てて
3,帝政ロシアの農民世帯の一側面――女性の財産的地位を巡って
4,家族史から見たロシアとヨーロッパ――ミッテラウアーの所説に寄せて
5,フーフェとドヴォール――比較経済史の現代的可能性
6,封建的伝統の負の遺産――「新プロイセン新聞」について
7,ラーン河の流れと野ウサギ料理――史料との出会い

Ⅱ　ハックストハウゼン、マルクス、ヴェーバー――独露比較の視点から

1,農政史家としてのアウグスト・フォン・ハックストハウゼン
2,ハックストハウゼンのドイツ農政論――農民身分の定住様式把握を中心として
3,ハックストハウゼンの見た一九世紀中葉代ロシアの農民家族
4,マルクスのドイツ共同体論
5,マックス・ヴェーバーの農業労働者報告『東エルベ・ドイツにおける農業労働者の状態』（1892年）について
6,マックス・ヴェーバーのロシア革命論――ロシアにおける国家と市民

Ⅲ　書評

省略