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夏の花・心願の国 新潮文庫
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夏の花・心願の国 新潮文庫

原民喜(著者)

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夏の花・心願の国 新潮文庫

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 新潮社
発売年月日 2000/04/01
JAN 9784101163017

夏の花・心願の国

¥220

商品レビュー

4.4

21件のお客様レビュー

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2024/05/27

夏の匂いの正体 夏の匂いは2つある。 1つ目は、生活をしていて実際にある匂いをかいで、「あ、夏の匂いだ」と思うもの。2つ目は、遠い夏の日を思い出す時に匂うもの。 前者を実際に嗅ぐのは、実は夏ではないように思う。長く続いた冬の終わりに、どこからか吹いてきた風が少しだけあたたか...

夏の匂いの正体 夏の匂いは2つある。 1つ目は、生活をしていて実際にある匂いをかいで、「あ、夏の匂いだ」と思うもの。2つ目は、遠い夏の日を思い出す時に匂うもの。 前者を実際に嗅ぐのは、実は夏ではないように思う。長く続いた冬の終わりに、どこからか吹いてきた風が少しだけあたたかく、緑や土の匂いが混じっていて、固くこわばらせていた身体が溶けていくのを感じる。近くの自販機までボールを蹴りながら白ボスを買いに行った時にふと気付いたり、水が張られて田植えを待つ田んぼにつばめが飛んできた時に気付いたりする。死の季節に終わりを告げる命の匂い。 この1つ目の夏の匂いが出てくる小説がある。ウィラ・ギャザーの『大司教に死来る』だ。19世紀のアメリカ南部で布教活動をする2人のフランス人神父の物語なのだが、須賀敦子の日本語訳に以下の一文がある。 --- 桜はもう散り、林檎が花ざかりだった。あたたかい春風に、空気と土がまざり合っていた。土は日光にあふれ、日光は赤い埃にあふれていた。吸う空気にも土の香りがしみこんでいて、足下の草には、青い空が映っていた。 --- 2つ目の夏の匂いの話に移ろう。強い夏の陽射しに色落ちしてしまったようなノウゼンカズラのオレンジ色。畦道に高くのびたミツバアオイの立ち姿。お寺から聞こえてくるお経と線香の匂い。幼い頃の父や母を写した古い写真。そして、ポマードで髪を固めて鼈甲の眼鏡をかけた祖父の顔。俯いてただ世迷言を繰り返すだけの祖母。私が遠い夏の日を思い出す時に匂ってくるのは、故郷の風景と家族の歴史であり、言い換えるとそれは、戦争の匂いである。 身近な祖父母たちには、よくドラマで描かれるような優しさは無く、無口で、かと思えば早口で、短気で暴力的で、感情的で分かりやすいかと思えば、一貫性が無く何を考えているのか分からず、人間は信用できない、ということを体現していた。そういう人間らしさが嫌になるほど家の中に充満していて、私に常識の範疇を与えている多くの法律よりも早く生まれて生きてきた人たち。彼らが夏になると語るのは、もう死んでしまった人たちのことで、私たちは直接戦争の話を聞いて戦争の匂いを嗅ぐことのできた、最後の世代だったのかもしれないし、そうなることを願ってもいる。 この2つ目の夏の匂いが出てくる小説がある。原民喜の『夏の花、心願の国』だ。「夏の花」は、広島での被爆体験について書かれている。「心願の国」は、その戦争で死んだ妻について書かれている。「心願の国」は、死の誘惑に必死にあがらいながらも、それが不可能であり彼が彼岸に向かって歩いていることを予感させる。ネットで原民喜の顔写真を見てほしい。彼の沁みる表情が全てだ。 夏の匂いの正体は、生と死の匂いである。過去と未来が交錯する時代の裂け目から匂いたってくるものである。我々は、花に水をやらなければならない。夏の陽射しに萎れてしまう前に。 へ?

Posted by ブクログ

2023/07/21

『鎮魂歌』にかなりやられてしまった。表紙のひまわりといい、堪えるしかないことを存在の内に含む姿がとても苦しい。

Posted by ブクログ

2022/01/16

原爆が、落とされたあとの状況が目に浮かぶように書かれた作品。記録としての文学の役割を果たしている。だからこそ、残してもらった私達がしっかりと読み、受け止め行動しいく義務がある。 世界で唯一原爆を落とされた国の国民としての自覚を改めて思い知らされた。

Posted by ブクログ

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