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イスラームの世界観 「移動文化」を考える 岩波現代文庫 社会161
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 岩波書店 |
発売年月日 | 2008/02/15 |
JAN | 9784006031619 |
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イスラームの世界観
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商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
友人宅の本棚から拝借。 フィールドワークを通した丹念な研究が類型化されてまとめられた貴重な一冊。 日本人からすると普段関わりの薄いイスラーム。私自身はシンガポールに住んでいたためムスリムに出会うことも文化に触れ合う機会もあったが、やはり身近に感じ難く、謎に包まれた存在であるのは確か。 ミステリアスなものに対する好奇心を持ちながら読み進めた。 以下読了した所感、気付き。 ・イスラームでは動をよしとし、流れを大切にする。そのためいつでも身軽なのがよく、所有することは良くないこととされる。→所有コスト、汎用性、可搬性などを重視するところに大いに共感。ミニマリストは極端な例だが今後このような考えを持つ層が増えていきそうな気がする。 ・農耕民族の日本文化は静の文化と考えられがちだが、伊勢神宮の遷宮に見られるように動の思想も存在する。→澱みを避け、風通しを良くし、気の流れを良くするという意味で、イスラームは風水に代表されるような東洋文化と相通ずる部分があると感じた。 ・イスラームではゆとろぎを大切にする。ゆとり+くつろぎ−りくつ。 ・イスラームでは目的地より道程に重きを置き、そして楽しむ。 ・イスラームでは予定通りに動くことをよしとしない。偶然を大歓迎。 ・現代日本人は目的を重視しすぎる。目的の最短距離を歩みたがる。 →部分的に共感。確かに自分も目的に向かって一直線に進みたい人間で、日常を楽しめていない傾向にある。毎週早く週末が来ないかなと思っている反面、1ヶ月、1年が過ぎるともう過ぎてしまったのかという寂しさや焦りを感じる。特に子育てしていると子供の成長を慈しみながら子供との時間を大切にしたいと思っているはずなのに、日々のスケジュールに追われ、子供を急かしてばかりいるなと反省。道中を楽しむ余裕も大切。 またその一方で、やはりこの短い人生の有限な時間の中で何かを達成したり、充実した日々を送るためには目標を持ち、プロセスを考え、実行また努力していくことは不可欠だし、それは賛美されて良いことだと思う。我が子にも目標に向かって思考し努力し続けられる人間になってほしいなと思う。 ・この方のイスラームの研究に敬服。飛行機が主たる移動手段でない時代から、女性ひとりで異国の地、しかもイスラーム圏という先人がほとんどいない地に赴きフィールドワークを重ねたという事実に驚いた。また結婚や出産を経て育児との両立をはかりながらもこのような大仕事をされたことには尊敬の念を禁じ得ない。一生涯を通じてひとつの研究に没頭できるというのは羨ましくある一方、並大抵の努力、信念、熱意でなかったことと推測できる。働く女性のための環境はまだ十分ではないけれど、環境が整えばこの方のように優秀な人材がもっと活躍できるフィールドができるんだろうと思う。 自分は家事や育児や仕事や年齢を何かの言い訳にしていないか?この方の活躍を見ているとどれも言い訳にならない。と同時に、女性が年齢を重ねても努力次第ではまだまだ活躍できる可能性があることを教えてもらえた。自分を見つめ直す良いきっかけとなった。
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(2019/8/6) ----- 『コーランを知っていますか』を読んだら、あれ、あれ、あの本を読みなおしたいと、本棚から出してきて読む。この本は、図書館で借りて文庫を読み、文庫の底本となった同時代ライブラリー版を読み、さらに元の単行本も読んでいる(バージョンが変わるにつれて多...
(2019/8/6) ----- 『コーランを知っていますか』を読んだら、あれ、あれ、あの本を読みなおしたいと、本棚から出してきて読む。この本は、図書館で借りて文庫を読み、文庫の底本となった同時代ライブラリー版を読み、さらに元の単行本も読んでいる(バージョンが変わるにつれて多少の手入れがなされ、骨格は同じだが、衣が身に馴染んだ感じ)。 それから6年前に文庫を買い、ときどき読みたくなって、出してきて読む。私のメモによると2011年にも読んでるし、2013年にも読んでいる。 p.201の写真には、"「生きること」は「うごくこと」.人生の大半を移動して過ごす人たち"というキャプションがついている。そういう生き方のなかからイスラームはうまれてきたといえる。 なんど読んでも、この本のテーマである移動、動くという生き方に心ひかれる。「うごき」を重んじるイスラームの世界観にふれると、自分が開かれていく感じ。移動は、いく先々で、いろんな人たちとの出会いにつながる。 著者のいう"非構造的共生"の社会がもつ寛容さの一方で、「それなりに安定した平穏な世界が、民族紛争の絶えない世界へと変化していったのは、近代西欧がこの地域にはいってきてからである」(p.158)と著者は記す。すなわち「言語が政治的意味をもつようになり、公用語が設定され、一民族一国家の理念が浸透していったのであった」(p.158)と。 国民国家誕生のきっかけは"自由、平等、博愛"を叫んだフランス革命であったと著者が書いているところが、今回読んで、ぐわーんと響いた箇所。 ▼…人びとの代表は「国民国家」の名のもとに、ひとつの言語、ひとつの民族で統一しようとする政府を誕生させた。「自由、平等、博愛」をうたいながら、国内ではバスク人など少数民族にフランス語による教育を強制し、他国を侵略したナポレオンの例を引くまでもなく、排他的な愛国主義が近代の西欧世界で吹き荒れたことは、歴史がかたるところである。 つまり、一民族一国家は、はじめから神話であった。(p.147) 著者は、こうした西欧的な国民国家の枠組みがもたらした"差別的共存"のまえに、イスラーム世界には「迎え入れる文化」といったものがみられるという。こうした共生関係は、「ことなるものをことなるものとしてあっさりみとめ、相手のもてるものをこちらにもらい、こちらのもてるものを相手にあたえるといった一種の交換である「トレード」関係による共生といってもよいものである」(p.160)というのだ。 そうしたゆきかいの中から、イスラームはうまれてきた。 ▼[遊牧的、商業的な]点と線の世界のなかで、目立って大きい点のひとつである都市メッカは、古くから人びとのいきかう商業都市であり、多神教の巡礼地でもあった。さきにみたように、7世紀のはじめにこの地にうまれたムハンマドは、幼少のころから、隊商にくわわってシリア方面まで移動し、商業にたずさわっていたが、長じてイスラームをおこすことになった。西欧の学者たちによって、「砂漠の宗教」とされてきたイスラームは、都市にうまれ、都市から都市へはこばれていった都市の宗教であることは、いまでは定説になっている。 砂漠性気候とはまったくことなるインドネシアやマレーシアをはじめ、20世紀にはヨーロッパ大陸、アメリカ大陸にいたるまで、全世界に10億をこえるイスラーム教徒が存在することになった。宣教師をもたないイスラームの拡大は、ひたすら「ふつうの人びと」の点と線をたどる生活空間のひろがりのなかで、なされたことであった。 そこは、これまでみてきたような「移動」をつねとする人びとの世界であり、農民も遊牧民も都市民も、個人で、あるいは集団で、はるか遠隔の地に移動していく。…(略)… 目的が明確でないことさえある。気軽な移動が、ごくありふれた日常になっている。点にたどりつくことが目的ではなく、線上にあること自体が意味をもっている。(pp198-199) この著者の『ゆとろぎ』と、『イスラームの日常世界』も、ともに何度か読んだ本だが、こちらもまた読みなおしたい。 (2015/3/29了)
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イスラムのそもそもの始まりに動の思想がみられる。 アラビア人は砂漠の民のイメージが強いが海の民。 イスラム科学と技術開発も大航海時代に貢献した。 旅の原型は巡礼にあるといわれる。巡礼は古来より多くの地で見られる。 目に見えるものより、目に見えないものを大切にする文化はイスラム...
イスラムのそもそもの始まりに動の思想がみられる。 アラビア人は砂漠の民のイメージが強いが海の民。 イスラム科学と技術開発も大航海時代に貢献した。 旅の原型は巡礼にあるといわれる。巡礼は古来より多くの地で見られる。 目に見えるものより、目に見えないものを大切にする文化はイスラムの神や祈りといった宗教的な場面にも表れている。祈る対象はもちろん神である。 飛行機や自動車の登場など20世紀に入っておこった交通革命によって中東における移動性、それにともなうネットワーク的共生社会の存在はますます強化された。
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