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イカの哲学 集英社新書
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 集英社 |
発売年月日 | 2008/02/20 |
JAN | 9784087204308 |
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イカの哲学
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商品レビュー
4.1
32件のお客様レビュー
本年(2022年)は沖縄返還50周年の節目に当たる年であることに加えてウクライナ問題が本格化した年でもあり、改めて戦争と平和について考えてみたいと思っていたため夏休み図書として購入。 昨年の夏休み図書に選んだ書籍はページ数が多い単行本で読み終わるまでに時間を要したため、短い期間に...
本年(2022年)は沖縄返還50周年の節目に当たる年であることに加えてウクライナ問題が本格化した年でもあり、改めて戦争と平和について考えてみたいと思っていたため夏休み図書として購入。 昨年の夏休み図書に選んだ書籍はページ数が多い単行本で読み終わるまでに時間を要したため、短い期間に読み切れるようなボリューム感のものを検討していたところ、YouTubeの「哲学チャンネル」で日本人に是非読んで欲しい本として紹介され、かつ手頃な新書サイズということもあり採択することにした。 本書は、『憲法九条を世界遺産に』の共著者である中沢新一氏が、神風特攻隊とシベリア抑留の生き残りである波多野一郎氏がその生涯において唯一著した『イカの哲学』を本の中で全文掲載し、後半に解説を述べる構成となっている。 中核となる『イカの哲学』の部分は大きめのフォントで印刷されているにも関わらず30ページ強のボリュームで、かつ非常に平易な論調で書かれているため、あっという間に読み終えてしまうことができる。 しかしながら、文字の情報量と読みやすさに比して波多野一郎氏が読者に本当に伝えたいことは、平和に慣れきってしまった現代の日本人にとって極めて深く重い。 なぜならば、それが“戦争の本質に立脚した平和の構築”であるからだ。 波多野一郎氏は、神風特攻隊とシベリア抑留(強制労働および共産主義化教育)という、筆舌に尽くしがたい経験を生き延びた後、日本の敵国であった米国に渡米してロシアと対極の思想であるプラグマティズム哲学をスタンフォード大学大学院で学ぶという、当時としては考えられないようなキャリアを築きながら、アルバイト先の漁港にて大量のイカと日々対峙するうちに、イカと人間の“実存”には本質的に変わりはないことを直観する。 この経験に基づいて『イカの哲学』が1965年に刊行されるのだが、それから40年以上の時を経た2007年の夏、生命と知性を結びつけているものについて思考を重ねていた中沢新一氏が、ある朝突然に『イカの哲学』が思考の表面に浮かび上がり、生命体を突き動かしている原理と国家の構成原理のミッシングリンクを直観することになるのである。この“時代を超越した直観の連鎖”こそが、本書の真の価値なのではないかと感じざるを得ない。 中沢新一氏は、フランスの哲学者であるジョルジュ・バタイユが提唱した「エロティシズム」を、生命の奥深くにセットされている戦争の現実を生み出す原理として『イカの哲学』の解釈とその解説に利用している。その論法については読者によって賛否が分かれようが、とかく“実存”というと、ハイデガーに代表されるような実存主義を連想し、「現代は頽落な末人とルサンチマンが蔓延る絶望に満ちた世界」などとニヒリズムに陥りそうになるが、本書における「実存」は、まさに“生きとし生けるものすべての生きることそのもの”に向けられている。そこに難解な用語や回りくどい解釈などの入る余地は一切ない。 単に平和を願い、戦争を非難することは誰にでもできる容易いことである。しかしながら、人道主義とされたヒューマニズムは(“人類”皆兄弟などの言葉に代表されるように)人間中心主義として歪んでしまい、2020年代となった現在でも戦争と環境破壊を無くすことはできていない。波多野一郎氏も中沢新一氏も、本書の中では戦争そのものを肯定も否定もしていない。 それでも中沢新一氏は、2度の原子爆弾の投下という、人類史上最悪の戦争体験を有している日本だからこそ、国家や人間は根源的に戦争を引き起こす危険性を孕んでいる存在であり、同時にそのリスクを許容し乗り越えていくことのできる存在であることも理解することができるので、人類が抱える課題を担うべきだとしている。 奇しくも2022年は波多野一郎氏の生誕100年である。そして自分も今年で50歳の節目を迎える。そのようなタイミングで、ネットで古本としてしか手に入れることのできない本書を読了することができたのは、波多野一郎氏の想いを後の世代に伝える責務を負ったからなのかもしれない。 己の限界まで“真の実存”を追求し、そしてその想いを形にして後世に遺した波多野一郎氏と、彼の魂の作品を独自の解釈で蘇らせた中沢新一氏に敬意を表するとともに、今後も戦争について考える際の拠り所として読み返しつつ、将来自分の子供たちが成人する際に贈りたいと思えるほどの本であった。
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大昔に一瞬ものすごく話題になった覚えがあって、なんとなく借りてみた。 波多野一郎という人の背景を説明する「はじめに」と波多野一郎による「イカの哲学」を読みさえすれば、後は読んでも読まなくてもいい感じ。 多感な青年期に数年に亘り自分の存在を脅かされる経験をした結果、ただ存在して...
大昔に一瞬ものすごく話題になった覚えがあって、なんとなく借りてみた。 波多野一郎という人の背景を説明する「はじめに」と波多野一郎による「イカの哲学」を読みさえすれば、後は読んでも読まなくてもいい感じ。 多感な青年期に数年に亘り自分の存在を脅かされる経験をした結果、ただ存在している自分の存在を深く感じるようになり、そういった経験からの直感から、自分の存在、すなわち実存を深く感じ、自分の実存に深く根ざした自分以外の生命への共感こそが世界平和に必要である…という話。 全くそのとおりだと思う。問題は、自分自身の実存を深く感じる喜びは、誰もが当たり前に持てるものではないということで…でも、波多野一郎という人は大した人だと思う。長生きしても日々の生活に追われ埋もれるだけだったかもしれないけれど、早くに亡くなってしまったのは残念だった。
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イカの哲学という不思議なタイトルに惹かれて手にとった。 内容としては、「イカの哲学」の著者である波多野一郎氏とそれを解説する中沢新一氏となっている。 オリジナルの著者である羽多野氏は、先の戦争で空軍に属し、特攻隊としての出撃命令を受け、直前の1ヶ月に十分な食事やお酒が振る舞われることに疑問を感じつつも迫る死に対して向き合おうとした。自分の部隊の出撃が開始され、まさに自身が出撃する直前にソ連の侵攻から作戦の中止、そのまま捕虜となりシベリアの強制労働を課せられるという。シベリアにおける共産化教育に疑問を持ち、なんとか帰国した後、反対のアメリカを見るため、スタンフォード大学の哲学科に留学、夏休みに学費を稼ぐため、イカ工場で働いている時の気づきについてまとめている。イカへ感情移入をすることとなり、彼らの存在意義について思考をめぐらし、自分が巻き込まれた戦争というものがイデオロギーによって引き起こされていたこと、そしてイカがイデオロギーとは縁がなさそうなこと等々について考える。そして戦争を避けるためには、相手の実存性を如何に感じるかという結論にいきつく。 中沢新一氏の解説は、かなり”ぶっ飛んで”おり、正直論理の飛躍についていけない。そもそもたまたまイカ工場でアルバイトをしたからイカについて語っているだけだと思うが、同氏によるとイカの必然性があるらしい。複雑な画像を認識する目を持ちながらも、その情報を処理する脳に関してはわからないことが多く、ここの中にそのイカ的なものがあるらしい。そしてそこから憲法第九条からエコの世界までつながっていくほど深遠なものだとのこと。 まあようは、食べ物としての動物や戦争相手としての相手国の兵隊たちというものが、技術革新や仕事の細分化により、もっとも残酷な”殺害する”という瞬間を実感させづらい世の中となり、相手に対する実存性(もしくは思いやる気持ちか)が薄れてくるがゆえに、大量虐殺も可能になるのではないか・・ということではないのか。 P.22 アメリカ文明はヒューマニズム(人間主義)を掲げています。ヒューマニズムは、地球上に生存しているあらゆる生命の中で、人間こそが特権的な存在だ、という考え方に根ざしています。この考え方に立つとき、それまでの人類にはよく見えていたはずの多くの真実が見えなくなってしまいます。長いこと人類は、自分たちが生物種の中でも特別な存在であることに気づいていましたが、だからといって、ほかの生物たちを押しのけて特権を享受してもかまわない、などとは思いもよらないことでした。 P.40(大助君:イカの哲学内の自身を投影したキャラクターか) 大助君の状況判断によると、”戦争主義者”というものは日本の内に存在するのみではなく、他の国々、乃ち、支那、英国、そしてアメリカ合衆国にも在るのだ。というわけで、彼は「一旦戦争がはじまって、他の国から挑戦して来たからには彼自身も武器を執らざるを得ないのだ。」 P.155 現代エコロジー思想の主導社の一人は、エコロジー運動の目的のひとつを「自然との停戦」を実現することだと位置づけている(クラウス・マイヤー=アービッ匕『自然との和解への道』)
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