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イカの哲学 の商品レビュー

4.1

32件のお客様レビュー

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2022/09/02

本年(2022年)は沖縄返還50周年の節目に当たる年であることに加えてウクライナ問題が本格化した年でもあり、改めて戦争と平和について考えてみたいと思っていたため夏休み図書として購入。 昨年の夏休み図書に選んだ書籍はページ数が多い単行本で読み終わるまでに時間を要したため、短い期間に...

本年(2022年)は沖縄返還50周年の節目に当たる年であることに加えてウクライナ問題が本格化した年でもあり、改めて戦争と平和について考えてみたいと思っていたため夏休み図書として購入。 昨年の夏休み図書に選んだ書籍はページ数が多い単行本で読み終わるまでに時間を要したため、短い期間に読み切れるようなボリューム感のものを検討していたところ、YouTubeの「哲学チャンネル」で日本人に是非読んで欲しい本として紹介され、かつ手頃な新書サイズということもあり採択することにした。 本書は、『憲法九条を世界遺産に』の共著者である中沢新一氏が、神風特攻隊とシベリア抑留の生き残りである波多野一郎氏がその生涯において唯一著した『イカの哲学』を本の中で全文掲載し、後半に解説を述べる構成となっている。 中核となる『イカの哲学』の部分は大きめのフォントで印刷されているにも関わらず30ページ強のボリュームで、かつ非常に平易な論調で書かれているため、あっという間に読み終えてしまうことができる。 しかしながら、文字の情報量と読みやすさに比して波多野一郎氏が読者に本当に伝えたいことは、平和に慣れきってしまった現代の日本人にとって極めて深く重い。 なぜならば、それが“戦争の本質に立脚した平和の構築”であるからだ。 波多野一郎氏は、神風特攻隊とシベリア抑留(強制労働および共産主義化教育)という、筆舌に尽くしがたい経験を生き延びた後、日本の敵国であった米国に渡米してロシアと対極の思想であるプラグマティズム哲学をスタンフォード大学大学院で学ぶという、当時としては考えられないようなキャリアを築きながら、アルバイト先の漁港にて大量のイカと日々対峙するうちに、イカと人間の“実存”には本質的に変わりはないことを直観する。 この経験に基づいて『イカの哲学』が1965年に刊行されるのだが、それから40年以上の時を経た2007年の夏、生命と知性を結びつけているものについて思考を重ねていた中沢新一氏が、ある朝突然に『イカの哲学』が思考の表面に浮かび上がり、生命体を突き動かしている原理と国家の構成原理のミッシングリンクを直観することになるのである。この“時代を超越した直観の連鎖”こそが、本書の真の価値なのではないかと感じざるを得ない。 中沢新一氏は、フランスの哲学者であるジョルジュ・バタイユが提唱した「エロティシズム」を、生命の奥深くにセットされている戦争の現実を生み出す原理として『イカの哲学』の解釈とその解説に利用している。その論法については読者によって賛否が分かれようが、とかく“実存”というと、ハイデガーに代表されるような実存主義を連想し、「現代は頽落な末人とルサンチマンが蔓延る絶望に満ちた世界」などとニヒリズムに陥りそうになるが、本書における「実存」は、まさに“生きとし生けるものすべての生きることそのもの”に向けられている。そこに難解な用語や回りくどい解釈などの入る余地は一切ない。 単に平和を願い、戦争を非難することは誰にでもできる容易いことである。しかしながら、人道主義とされたヒューマニズムは(“人類”皆兄弟などの言葉に代表されるように)人間中心主義として歪んでしまい、2020年代となった現在でも戦争と環境破壊を無くすことはできていない。波多野一郎氏も中沢新一氏も、本書の中では戦争そのものを肯定も否定もしていない。 それでも中沢新一氏は、2度の原子爆弾の投下という、人類史上最悪の戦争体験を有している日本だからこそ、国家や人間は根源的に戦争を引き起こす危険性を孕んでいる存在であり、同時にそのリスクを許容し乗り越えていくことのできる存在であることも理解することができるので、人類が抱える課題を担うべきだとしている。 奇しくも2022年は波多野一郎氏の生誕100年である。そして自分も今年で50歳の節目を迎える。そのようなタイミングで、ネットで古本としてしか手に入れることのできない本書を読了することができたのは、波多野一郎氏の想いを後の世代に伝える責務を負ったからなのかもしれない。 己の限界まで“真の実存”を追求し、そしてその想いを形にして後世に遺した波多野一郎氏と、彼の魂の作品を独自の解釈で蘇らせた中沢新一氏に敬意を表するとともに、今後も戦争について考える際の拠り所として読み返しつつ、将来自分の子供たちが成人する際に贈りたいと思えるほどの本であった。

Posted byブクログ

2022/01/26

大昔に一瞬ものすごく話題になった覚えがあって、なんとなく借りてみた。 波多野一郎という人の背景を説明する「はじめに」と波多野一郎による「イカの哲学」を読みさえすれば、後は読んでも読まなくてもいい感じ。 多感な青年期に数年に亘り自分の存在を脅かされる経験をした結果、ただ存在して...

大昔に一瞬ものすごく話題になった覚えがあって、なんとなく借りてみた。 波多野一郎という人の背景を説明する「はじめに」と波多野一郎による「イカの哲学」を読みさえすれば、後は読んでも読まなくてもいい感じ。 多感な青年期に数年に亘り自分の存在を脅かされる経験をした結果、ただ存在している自分の存在を深く感じるようになり、そういった経験からの直感から、自分の存在、すなわち実存を深く感じ、自分の実存に深く根ざした自分以外の生命への共感こそが世界平和に必要である…という話。 全くそのとおりだと思う。問題は、自分自身の実存を深く感じる喜びは、誰もが当たり前に持てるものではないということで…でも、波多野一郎という人は大した人だと思う。長生きしても日々の生活に追われ埋もれるだけだったかもしれないけれど、早くに亡くなってしまったのは残念だった。

Posted byブクログ

2021/01/29
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

イカの哲学という不思議なタイトルに惹かれて手にとった。 内容としては、「イカの哲学」の著者である波多野一郎氏とそれを解説する中沢新一氏となっている。 オリジナルの著者である羽多野氏は、先の戦争で空軍に属し、特攻隊としての出撃命令を受け、直前の1ヶ月に十分な食事やお酒が振る舞われることに疑問を感じつつも迫る死に対して向き合おうとした。自分の部隊の出撃が開始され、まさに自身が出撃する直前にソ連の侵攻から作戦の中止、そのまま捕虜となりシベリアの強制労働を課せられるという。シベリアにおける共産化教育に疑問を持ち、なんとか帰国した後、反対のアメリカを見るため、スタンフォード大学の哲学科に留学、夏休みに学費を稼ぐため、イカ工場で働いている時の気づきについてまとめている。イカへ感情移入をすることとなり、彼らの存在意義について思考をめぐらし、自分が巻き込まれた戦争というものがイデオロギーによって引き起こされていたこと、そしてイカがイデオロギーとは縁がなさそうなこと等々について考える。そして戦争を避けるためには、相手の実存性を如何に感じるかという結論にいきつく。 中沢新一氏の解説は、かなり”ぶっ飛んで”おり、正直論理の飛躍についていけない。そもそもたまたまイカ工場でアルバイトをしたからイカについて語っているだけだと思うが、同氏によるとイカの必然性があるらしい。複雑な画像を認識する目を持ちながらも、その情報を処理する脳に関してはわからないことが多く、ここの中にそのイカ的なものがあるらしい。そしてそこから憲法第九条からエコの世界までつながっていくほど深遠なものだとのこと。 まあようは、食べ物としての動物や戦争相手としての相手国の兵隊たちというものが、技術革新や仕事の細分化により、もっとも残酷な”殺害する”という瞬間を実感させづらい世の中となり、相手に対する実存性(もしくは思いやる気持ちか)が薄れてくるがゆえに、大量虐殺も可能になるのではないか・・ということではないのか。 P.22 アメリカ文明はヒューマニズム(人間主義)を掲げています。ヒューマニズムは、地球上に生存しているあらゆる生命の中で、人間こそが特権的な存在だ、という考え方に根ざしています。この考え方に立つとき、それまでの人類にはよく見えていたはずの多くの真実が見えなくなってしまいます。長いこと人類は、自分たちが生物種の中でも特別な存在であることに気づいていましたが、だからといって、ほかの生物たちを押しのけて特権を享受してもかまわない、などとは思いもよらないことでした。 P.40(大助君:イカの哲学内の自身を投影したキャラクターか) 大助君の状況判断によると、”戦争主義者”というものは日本の内に存在するのみではなく、他の国々、乃ち、支那、英国、そしてアメリカ合衆国にも在るのだ。というわけで、彼は「一旦戦争がはじまって、他の国から挑戦して来たからには彼自身も武器を執らざるを得ないのだ。」 P.155 現代エコロジー思想の主導社の一人は、エコロジー運動の目的のひとつを「自然との停戦」を実現することだと位置づけている(クラウス・マイヤー=アービッ匕『自然との和解への道』)

Posted byブクログ

2020/02/20

貸していた『イカの哲学』が帰ってきたので読み直していたらボロ泣きで一気に読み終えてしまった。 数年前は笑いながら読んでいたのに、年齢を重ねるって楽しいな…

Posted byブクログ

2020/01/04

イカの哲学(波多野一郎) イカの哲学から平和学の土台をつくる(イカとカミカゼ;生命の深みで戦争と平和を考える;実存は戦争を抑止する;超戦争に対峙する超平和;エコロジーと平和学をつなぐ) 著者:波多野一郎(1922-1969、綾部市、哲学)、中沢新一(1950-、山梨市、宗教史)

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2019/08/31

波多野一郎という人の魅力! 中沢新一による解釈補足は余計なお世話なのか必要有効なものなのか、どちらかというと後者だな。 政治が人間の「イカ的なもの」を利用して生命がもっている本来的な「イカ的なもの」を、横取りしたんだ! ーーというのは腑に落ちるところ大なり。同じようにしてやられ...

波多野一郎という人の魅力! 中沢新一による解釈補足は余計なお世話なのか必要有効なものなのか、どちらかというと後者だな。 政治が人間の「イカ的なもの」を利用して生命がもっている本来的な「イカ的なもの」を、横取りしたんだ! ーーというのは腑に落ちるところ大なり。同じようにしてやられんように! 個人主義は、戦争抑止の力になり得るのか? 個人主義と全体主義の単純な対比でコトは済むのか? そういう思考に誘われた。

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2019/05/21

波多野一郎 「 イカの哲学 」 解説 中沢新一 平和哲学の本。敵の実存を感じない核戦争を 超戦争と位置づけ、超戦争に向き合う 超平和の思想として イカの哲学を展開 概要 *思想の相違、人間主義(ヒューマニズム)、カント平和哲学では エスカレートした 国家間の戦争(超戦争)は ...

波多野一郎 「 イカの哲学 」 解説 中沢新一 平和哲学の本。敵の実存を感じない核戦争を 超戦争と位置づけ、超戦争に向き合う 超平和の思想として イカの哲学を展開 概要 *思想の相違、人間主義(ヒューマニズム)、カント平和哲学では エスカレートした 国家間の戦争(超戦争)は 止められない *イカになって思考すること〜イカのような小さな生命の実在を感知すること(超平和)を世界平和のカギとしている イカの如く小さな生命であっても 実存を感知することの意味 *イカは 個体より種を重視した思考を持つ→イカになって考える→イカと人類は同じ種(同胞)となる *さらに 異国の人の実存を知覚することになる 中沢新一氏が カイエソバージュの中で論じた 人間と動物の対称的関係(共生)と共通点が多い バタイユの生命論(非連続=孤立。連続=集団) *生命の本質=一人の個体を維持+集団を取り込む *エロティシズム=個体性を壊してでも 集団(連続性)を自分に引き入れる *国家出現前の戦争は エロティシズムによる争い→核戦争はエロティシズムによらない 超戦争 *イカの哲学は エロティシズムによる平和(超平和)

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2016/02/25

中沢新一さんが、在野の哲学者、波多野一郎が残した 『イカの哲学』 を復刻、読み解くことによって、超平和の構造をもったエコロジーの思想を提示する。 バタイユの生命論をひいて、戦争と宗教と芸術を生み出す、生命の奥深くにセットされた同一の原理 「エロティシズム」 に辿り着く、スリリング...

中沢新一さんが、在野の哲学者、波多野一郎が残した 『イカの哲学』 を復刻、読み解くことによって、超平和の構造をもったエコロジーの思想を提示する。 バタイユの生命論をひいて、戦争と宗教と芸術を生み出す、生命の奥深くにセットされた同一の原理 「エロティシズム」 に辿り着く、スリリングで大胆な思想のダイビング! 『イカの哲学』(1965年)で、大助君が、在来のヒューマニズムを世界平和のための鍵として取り上げなかったのは、 人間以外の生物の生命に対して敬意を持つことに関心のない在来の人間尊重主義は理論的に弱く、そして、動物達と人間を区別しようとする境界線がとかく曖昧になり勝ちであります。それ故、在来の単なるヒューマニズムは、われわれの社会で、しばしば叫ばれるものである けれども、それ自体には、戦争を食い止めるだけの 力が無い。 と結論した為です。ここから、平和学との堅固な土台としてのエコロジーの可能性が生まれてきます。

Posted byブクログ

2015/05/18

著者である中沢さんは 波多野一郎さんの《イカの哲学》という小論文に出合う 波多野さんは1日違いで生き残って神風特攻隊で 4年間に渡るシベリアへの抑留を息抜き 共産党の洗脳にも妥協せずにスタンホード大学院に留学を求め 哲学科でプラグマティズム(実用主義)(実存主義)を学ぶ その間...

著者である中沢さんは 波多野一郎さんの《イカの哲学》という小論文に出合う 波多野さんは1日違いで生き残って神風特攻隊で 4年間に渡るシベリアへの抑留を息抜き 共産党の洗脳にも妥協せずにスタンホード大学院に留学を求め 哲学科でプラグマティズム(実用主義)(実存主義)を学ぶ その間に烏賊の冷凍工場でアルバイトしている最中 床に落ちたイカと目が合い生命の実存に共感し一種の悟りを得る 自然の全てを支配しようとするヒューマニズム論を否定するに至る それ以後すべての生命にはそれなりの意識があり 対等であるという立場をとることになる 特権意識を持った時の人間は全体観を放棄し独善的になる 新石器の農耕文明以来支配的になって来たが それでも産業革命までは殺生に対する謙虚さがあった 特に神道に始まり仏教や儒教やキリシタンなどによる 多様な宗教観を持つニホンの庶民的思想は 全体観を大事にして柔軟であった 多くの先住民の神話で狩猟は戦争だと語っているという 普段の暮らしでは生と死が分離されているが 戦争状態においては異常に接近させてしまう この状況では合理的な判断や論理的な判断に根本的な違いが起る しかしここで意識の働きが浮かび上がってくる 生命と心を結ぶ無意識の回路が開かれ全体観を取り戻す 生き物の個体は他の侵入を異物として免疫抗体反応によって拒むが 生殖の瞬間にだけ細胞膜を開き 隠れていた連続性を起こす 生命が持つこの矛盾に満ちた行動は相対性時空間の本質である 最初の細胞は死ぬが その死によって新たな非連続を伴って二つの生き物を産みだす 全ての生命は自己と他者を認識する意識を持つ 生命と意識は同じものを指す 複雑に発達して比喩を認識する現代人は 自在に活動するニューロンを手に入れた あらゆる生命は意識を持つが 現代人の知性のみをDNAの範疇から逃れて自由勝手に動き出した 生殖の際に危険を犯してまで解放し連続性を起こす働きは 生死を一つに近づけてしまう これと同じことが人類のエロティシズム態においても起る 社会のルールや言葉を通じて安定した平常態を壊して 生の中に死の侵入が起る そこから芸術と宗教が発生した 同時に戦争も人類の深層に植え付けられたと中沢さんは言う しかしここまで掘り下げると《平和》という言葉に違和感を持つ 平和という音には死を思わせる生活の停滞感を感じさせ 人工的に切断された硬さがあると思う 《平和》を自然な環境に翻訳するならば《調和》という 全体観や集合意識と繋がる流れを持った言葉であるべきだろう 人間の倫理大系は相対する全体観と部分観によって一人ひとりに起こり 全体観によるものは集合意識と繋がる個々の意識態によって 調和を呼び起こし 又それを認識するための鏡として食物連鎖と切磋琢磨に添う 喧嘩と狩猟を必要とする それに対して部分観による倫理は唯物的人為態によって 力尽くで押し並べた平和を構築し 又その抑圧に対する不安恐怖の空回りによって本来の自分を見失い 暴走を起こし更なる搾取と支配にまい進することになる この平和と調和には知識に依存する人間故の質的な違いがあるだろう 戦争は巨大国家と共に起る視野の狭さからなる管理不能による暴走であり 不安にパニクった利己的要求による物欲が起こす暴力であって 質的に個と個が向き合う狩猟や喧嘩との違いがあるのだと思う 戦争状態を俯瞰すれば兵隊もその国民も それを裏切っている者達に奉仕させられていることになる それぞれが持つ生と死・個と個の中庸をつくる距離感を 暴力的に侵すことで排除が起こり戦争に発展もするし 自主的に受け入れることで調和という愛が生まれる 掟や法は生命現象(エロティシズム)を外圧によって抑えることで 団体生活を安定させようとする 欲による戦争は労働でつくり出した環境を理不尽に破壊してしまうから この人為的な平常態という平和は戦争を嫌う しかし不安恐怖に駆られた欲望は尽きることがなく戦争に走ろうとする 戦争に駆られる怯え故の生命現象は物欲に助けを求め 調和に喜びを見出す勇気による生命現象は お互いの心を愛の意識で満たそうとする この流れは唯物世界の力をはるかに超えて個々が自らに気付き 視野を広げ深い意識育てるのを静かに待つ無限性を持つ 狩猟採集の環境は自然界全体の食物連鎖に準じた倫理観を育て 個々が集うことで磨きだした集合意識に従って 過不足なく循環することで乱獲を在り得ないものとしてきた こうした不安恐怖を呼び込まない自然体を現在なりに取り戻すことで 無益なだけの戦争のない豊かに流れる環境を創ることができるのだろう

Posted byブクログ

2015/04/13

短い本なので、とにかく手にとって読んでみてほしいと思います。ここにはとてつもなく重要なことが書かれているような気がするから。波多野一郎という人物は、神風特攻隊の生き残りで、旧ソ連での捕虜生活の後、アメリカ留学をし、哲学を学ばれた方だそうです。その波多野さんが書いた「イカの哲学」を...

短い本なので、とにかく手にとって読んでみてほしいと思います。ここにはとてつもなく重要なことが書かれているような気がするから。波多野一郎という人物は、神風特攻隊の生き残りで、旧ソ連での捕虜生活の後、アメリカ留学をし、哲学を学ばれた方だそうです。その波多野さんが書いた「イカの哲学」を中沢氏が読んで、その重要さに気付き、解説付きで再び世に広めようとされているのです。近代に入っての戦争は相手が全く見えないものになってしまいました。だからこそ、平気で?原爆なんかが落とせるのでしょう。波多野さんはアルバイトで、たくさんのイカを網でとって、商品として売りに出す過程で、そのことに気付いたようです。唯一、原爆を落とされた国=日本だからこそ、平和についてもっと積極的に語っていかなければならないのでしょう。きっとその責任があるのだと思います。そして、ここで語られていることは環境問題に対しても有効でしょう。相手を見る、相手をそこに実際に存在するものとして見る。その相手とは、ヒトであったり、ヒト以外の動物であったり、植物だったり、地球だったり、未来だったり。目を開いてしっかり見ること、そしてその先を想像すること。とにかく、一度本書を手にとって、じっくり味わってみてください。(P.91 ウィルスを単細胞生物とされているところだけ、ちょっと気になりましたが。)

Posted byブクログ