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懐かしい年への手紙 講談社文芸文庫

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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 講談社 |
発売年月日 | 1992/10/09 |
JAN | 9784061961968 |
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懐かしい年への手紙
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懐かしい年への手紙
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商品レビュー
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大江健三郎が自身の小説家への精神的成長過程を虚構を織り混ぜて書き上げた長編小説である。四国の山間の村、メンターとしてギー兄さんを措定し、彼のイエーツの詩やダンテ『神曲』愛読の影響を受け、語学や文学を学び入試対策の教えも受ける。地元の名士ギー兄さんの相続した山村で展開する「美しい村...
大江健三郎が自身の小説家への精神的成長過程を虚構を織り混ぜて書き上げた長編小説である。四国の山間の村、メンターとしてギー兄さんを措定し、彼のイエーツの詩やダンテ『神曲』愛読の影響を受け、語学や文学を学び入試対策の教えも受ける。地元の名士ギー兄さんの相続した山村で展開する「美しい村」や「根拠地」のコミューン作りを横目に、主人公の読書や受験勉強と自慰や性行動覚醒の顛末など、成長期の日常生活が赤裸々に連綿と綴られる。一方で郷里の森の霊性帯びる清澄な大自然や透明感溢れる異世界の描写がこの物語を深く厚みのあるものにする。浪人の後大学に進学し郷里を離れて上京し小説を書き始める。 ギー兄さんは強姦殺人事件を起こし刑期を終えて村に戻る。思い立ったダム作りに奔走し周りの反対派との抗争に身を晒す。ギー兄さんの行動を心配しながら作者は60年安保闘争やその後の政治活動に積極的に関わる。浅沼刺殺事件の犯人である右翼青年をモチーフにした小説で右翼を刺激し、身の危険を生む事態になる。政治活動も続け小説を書く。 ギー兄さんの突然の死によってこの物語は結末を迎える。 ギー兄さんと並走する筋立てで折々交差させながら、極端で露骨な場面も交え、青年期独特の生命力と熱気に満ちた青春物語でもある。
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読み終えるのに3週間ほどかかってしまいました。大江健三郎の文体が、漫然と流し読みするのを許してくれません。 その分、文章と取っ組み合いをするように読むのですが、能動的鑑賞を強いる芸術と向き合うときと同様、理解したとたん、もともと自分を構成する一部であったかのように、自分自身の芯に...
読み終えるのに3週間ほどかかってしまいました。大江健三郎の文体が、漫然と流し読みするのを許してくれません。 その分、文章と取っ組み合いをするように読むのですが、能動的鑑賞を強いる芸術と向き合うときと同様、理解したとたん、もともと自分を構成する一部であったかのように、自分自身の芯に溶け込む感覚があります。 主に万延元年フットボールを、さらにそれ以前の大江作品を取り込んだ、壮大なメタフィクションでした。この3週間、ダンテの「神曲」が響き渡る四国の谷間、そしてギー兄さんが構想する魂の浄化のためのコミューンに身を置いていた気がします。 ギー兄さんにとっては四国の谷間の森が、Kちゃんにとっては東京の家族で住む家が、それぞれ“根拠地”として彼ら自身に深く根ざしていますが、 「さて、僕自身の“根拠地”は?」 こう考えた時、神谷美恵子の「生きがいについて」を読み、 「さて、僕自身の生きがいは?」 と考えた時と同じ焦りを覚えました。 ギー兄さんが引用して暗唱する、ダンテの「神曲」。それぞれの引用は感銘を与えてくれるのですが、やはりまだ腑に落ち切らないところも多いのです。 この「懐かしい年への手紙」も、ゆくゆくは「神曲」も、人生の中で何度も読み直していかなければならないのだと思います。 それこそ、ギー兄さんやKちゃんがそうしたように!
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久々の大江健三郎。やはり文章の圧力?が凄まじい。読んでいて心に揺さぶりをかけられるような、強烈な読書体験だった。全体として激しい展開はあるにしろ、どこか静謐とした雰囲気が強く、まさに「森の時間」が流れているようだった。曲がりくねっては分岐したり合流したり。目が回るようだった。
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