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ディック・フランシス(著者), 菊池光(著者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 早川書房
発売年月日 1991/04/30
JAN 9784150707118

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商品レビュー

3.8

6件のお客様レビュー

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2023/03/06
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※このレビューにはネタバレを含みます

競馬シリーズ10作目。 二組の父と息子の話。 息子をコントロールしようとする父親たちと、 父のもとから逃れた息子とその影響下にあることもよくわかっていない息子。 車の事故で骨折をした父の代わりに、 厩舎を管理することになったニールは、突然誘拐される。 経験のない若者を騎手として優勝馬に乗せてダービーに出せ、と脅される。 厩舎を守るために受け入れたニールだったが、 若者は生意気で鼻持ちならず馬丁頭や馬丁たちともめる。 もちろん、そう簡単に実績のない騎手を優勝場に乗せるわけにはいかず…。 ミステリーというよりは、 若者の父との葛藤、そして成長物語だろう。 父親たちが二人とも死んでしまう、という最後は少し残念だが、 若者が騎手として、自分の足で歩いて行けるようで良かった。 他の小説に出て来たポストオフィスタワーの回転レストランのことが、 ちらっと出て来たのがチャームポイント。

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2014/12/25

派手さはないが、渋い秀作。 一行目からの刺激的独白による開幕は、全シリーズ通しての馴染みのものだが、その後の展開は、一人の甘ったれたガキが、誇り高き主人公との関わり合いの中で、人間として成長していくさまをじっくりと描いていくもので、虚飾を剥ぎ取ることでようやく大人への一歩を踏み出...

派手さはないが、渋い秀作。 一行目からの刺激的独白による開幕は、全シリーズ通しての馴染みのものだが、その後の展開は、一人の甘ったれたガキが、誇り高き主人公との関わり合いの中で、人間として成長していくさまをじっくりと描いていくもので、虚飾を剥ぎ取ることでようやく大人への一歩を踏み出すところで小説は終わっている。 やはりフランシスは巧い。

Posted by ブクログ

2010/11/14

 以前読んだ時には、スペンサーシリーズの「初秋」に匹敵する、「育成もの」の傑作だと思っていたのだが、今読むとちょっと物足りなさが感じられた。  主人公は、会社の建て直しを専門としている30代男性。たたき上げではあるが、金持ちである。彼が、事故で入院している父親の厩舎にいるところ...

 以前読んだ時には、スペンサーシリーズの「初秋」に匹敵する、「育成もの」の傑作だと思っていたのだが、今読むとちょっと物足りなさが感じられた。  主人公は、会社の建て直しを専門としている30代男性。たたき上げではあるが、金持ちである。彼が、事故で入院している父親の厩舎にいるところを拉致され、ある少年を騎手として雇うことを強要されるところから物語が始まる。少年の父親は、まあ暴力団のボスという雰囲気で、子どもを甘やかしその夢を叶えてやろうとするのである。無名の新人をトップクラスの馬に乗せるわけにはいかず、主人公の綱渡りが始まるわけだけど、それが少年の成長と重なり合うところがおもしろい。少年自身が作中で語っているように、少年を間に挟んで、その父親と主人公が戦っているのである。  うまいなと思うのは、決して屈しない主人公の中に、少年が次第に自分の理想をする男性像を見いだしていくあたりの展開なのだけど、それ以上にうまいなと思うのは、主人公の父親の存在である。主人公の父親も、少年の父親と同じく、きわめて偏屈な暴君であった。ある時期までの主人公は、父親の甘やかされてはいたが自分の意志を許されない存在であり、ちょうど少年と同じ立場にあった。ある時期、主人公はその境遇から自由を求めて飛び出し、自らの力のみで成功を招き寄せたのであり、それが、少年に対する確信を持った「教育」を生み、また小説に奥行きを与えている。  もちろん、望みを叶えるためなら人の命など何とも思わないような少年の父親との戦いはスリリングである。それを通して、また少年との交流を通して描き出される主人公は、実にりりしくかっこいい。文句なく、おもしろく感動的に読める小説だと思う。  ちょっと物足りなさを感じるとすれば(いや、8回目くらいに読んで今回初めて感じたのだけど)、主人公がちょっと「できすぎ」ってところかな。後に新たなヒーロー像を体現したシッド・ハレーなどと比べると、差は明らかである。このあたりはやはり、作者自身の物書きとしての成熟を、もう少しあとの作品まで待つべきなのだろう。  だけど、個人的にはもっとも愛好したフランシス作品のひとつであるのは確か。殺人事件が起きてそれを解決する、というタイプのミステリではないけれど、とてもいい作品なので、たくさん読まれて欲しいと思う。

Posted by ブクログ