レトリックのすすめ

野内良三【著】

• 販売会社／発売会社: 大修館書店
• 発売年月日: 2007/12/01
• JAN: 9784469213157

商品レビュー

2014/04/18

レトリックとは説得術である
文章とは説得なり
レトリックの原理は12

視点の定位
1：誇張する
誇張法：嘘だとわかる嘘を上手につくこと
2：喩える(比喩)　比喩には三つの要素、主意・媒体・類似性
比喩の要諦は「意外な」類似性の発見にある
直喩：指標つきの比喩
隠喩：メタファー。比喩があることを言わない
擬人法：隠喩の特殊なケース。人間ではない事物に人間的感情を投影すること
諷喩：アレゴリー。隠喩の特殊なケース。一般的真理を説明

方丈記の文体は極上。華麗なレトリック。流麗な音調。畳み込むような歯切れのいい短文。非常におすすめ。

3：対照する
対照法：２つのものを対比関係において両項の特徴や性質を引き立たせる
換語法：Aではなくて、Bである。というふうに否定表現を介して対象の本質に迫る
訂正法：すでに述べたことについて、その表現を和らげたり、強めたり、あるいは修正したり、取り下げたりする

論理的＝抽象的思考力のアップには「物主構文」の練習が有益。和文和訳でOK。名詞中心の翻訳調になるのは述語中心の日本語の宿命。

日本語のレトリックを勉強するなら佐藤春夫の「退屈読本」の特に上巻

4：ほのめかす
換喩：二つの事物のあいだにみられる間接性(有縁性)に基づき、一方で他方を指示(暗示)
転喩：「ずらした」表現。遠回しな表現
皮肉法：XはYであると言いながらXは反Yであると暗示すること

5：ぼかす
提喩：プロトタイプ(代表例)化。提喩表現の「ぼかし」は婉曲表現に通じる
婉曲法：差しさわりのある、露骨な表現をあたりさわりのない穏やかな表現に代えること
緩叙法：曖昧さを利用する
迂言法：簡潔な固有の言い方があるのにわざわざ回りくどい言い方をすること

文体的処置
6：繰り返す
反復法：同じ(ような)音、あるいは同じ(ような)語句を繰り返すこと。効果は抜群。繰り返すことによってリズム(律動)が生まれ、独特な文体的効果を発揮
平行法：似たような表現を(A-B、A'-B')を並置して平行性の形式美を求める

7：追加する
追加法：一種の強調表現にほかならない
挿入法：削除しても基幹文の流れを乱すことはない。統語論的に独立し、意味論的に完結している
同格法：名詞あるいは代名詞に補足的＝説明的名詞を連結語なしに追加すること
類語法：表現の積み重ねによる強意
列挙法：語や観念を次々に繰り出し、畳み掛ける
漸層法(ぜんそうほう)：心理的誘導
懸延法：結論(結末)を先送りして読み手(聞き手)を宙づり状態にして期待感を高める
接続語＝補語多用：必要以上に接続語を使用すること。日本語の文は内部に隙間が多い。国際化に向けての問題が伏在している

8：省略する
省略法：文章を引き締めて、余情・余韻をねらう
黙説法：話の途中で言いさし、言い残した部分を受け手にゆだねる
暗示的看過法：言わない、あるいは言えないと主張しておきながらその実しっかり(ちゃっかり)と言うこと

9：移動する
転置法：文の構成要素を一般的＝慣用的な語順に逆らって「普通でない」位置に配する。文の内部での小さな移動
奇先法：結論を突きつけて人を驚かせ、その後でおもむろに説明(根拠)を示す

読者への働きかけ
10：呼びかける
呼びかけ法：話をとつぜん中断して、多くは不在あるいは架空の受け手に話しかける
詠嘆法(感嘆法)：心の内なる感動を伝えて聞き手(読み手)の共感を取りつける
説疑法：言い切らずにあえて聞き手＝読み手に疑問を投げかけて、最終的な判断をゆだねる
問答法：平叙文でも表現可能な内容を敢えて問答形式に仕立てる

11：驚かす
言葉遊び、駄洒落、掛詞、地口
撞着語法：「誤用」ｗｐ逆手にとったもの。常識的には結合不可能と見なされている語と語をあえて結びつける
逆説法：常識を逆撫でする挑発的な文章

12：引用する
挙列法：同類(同じカテゴリー)から「似ている」例を引き合いに出す
引用法：他人の発言を借りて自分の文章に利用すること
引喩：よく知られている対象を暗に踏まえながら話を展開
声喩：オノマトペを効果的に利用

2011/03/06

読書家よりも文章書き（ブログとかホムペとか増田とか）へ使い甲斐ある文例本。
前書きにあるように「文例は平安朝から現代作家まで、小説、エッセー、評論、演劇など幅広く渉猟」し、41のレトリックを紹介します。
「“忘れてほしくない日本語““懐かしい日本語”をなるべく採った」んだそーです。セレクト、偏ってます、結構。

漱石・鴎外はもちろんですが、佐藤春男と谷崎潤一郎を名レトリシアンとするあたり、さすが修辞研究家。

2011/02/21

さまざまなレトリックを１２に分類し、それぞれについて使用方法、目的等々を説明したのち、実際の文章中でどのようにつかわれているかを解説しています。

レトリックについて、その重要性や効果、目的を筆者の意見として述べることがメインとなっているわけではありません。

教科書のような印象をうけました。