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須賀敦子全集(第3巻) 河出文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 河出書房新社 |
発売年月日 | 2007/11/20 |
JAN | 9784309420530 |
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須賀敦子全集(第3巻)
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商品レビュー
4.3
12件のお客様レビュー
「きっちり足に合った靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていけるはずだ。そう心のどこかで思いつづけ、完璧な靴に出会わなかった不幸をかこちながら、私はこれまで生きてきたような気がする。行きたいところ、行くべきところぜんぶにじぶんが行っていないのは、あるいは行くのをあきらめたのは、す...
「きっちり足に合った靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていけるはずだ。そう心のどこかで思いつづけ、完璧な靴に出会わなかった不幸をかこちながら、私はこれまで生きてきたような気がする。行きたいところ、行くべきところぜんぶにじぶんが行っていないのは、あるいは行くのをあきらめたのは、すべて、じぶんの足にぴったりな靴をもたなかったせいなのだ、と。」 出だしから美しい言葉だな、と思うと同時に私にとっては穏やかな人というイメージを覆すような、強い意志が感じられました。実際、須賀敦子さんはかなり強い人だったのだろう、いろいろな意味で。須賀敦子さんはじぶんにぴったりの靴でどこまで行きたかったのだろう、とふと考えてしまいます。 全集第3巻の本書には、「ユルスナールの靴」、「時のかけらたち」、「地図のない道」そして、1993~1996のエッセイが収められています。 再読だったのだけれど、前回にも増して私には難しく感じました。それは「あぁ、難しすぎて読めない」と放棄するような感じではなく、「私にはまだ理解できないところがたくさんある。何回読んだらもっと深く理解できるんだろう」という圧倒的な敗北感と、あきらめであって、決して読むことを投げ出したりしたくなるものではなかったのですが。 ジッドの「狭き門」を戦時中にようちゃんという友達から薦められて読んだという経験が、後々ミラノに住むことになった須賀敦子さんがミラノの大聖堂に抱く気持ちから再び思い起こされ、「精神性」という言葉で説明されるところがあります。「精神が、知性による判断の錬磨でありその持続であること(中略)そして「たましい」に至るためには「精神」を排除してはなにもならない」などという言葉には、一瞬目がくらみそうになりました。そんなことを考えたこともない自分が恥ずかしくもあり、どのように生きていけばそういうことを考えるに至るのか興味深くもあり・・・。こういうところが、本書が難しいと思う所以なのです。 詩の話になるともうお手上げでした。母国語ではない言葉で書かれた詩をここまで深く理解している須賀敦子さんに感服としか言いようがなかったです。 夫を亡くしたあと、友人に誘われていったヴェネツィアのリドで過ごした時のこと綴った文章では、新婚旅行の回想もあって構成が素晴らしく、夫の死に向き合わねばならない悲しさを倍増させる文章でした。私の中で華やかな印象だったヴェネツィアに人間味あふれる陰影ができた気がします。 また、著者が文学作品や詩集に明るいことは当然わかっていたけれど、専門書のよういなものもイタリア語で読んでいたことが見受けられ、すごいとしか言いようがなかったです。さらに、建築や絵画などにも造詣が深い。こういったたくさんの文化芸術に触れてから自分の中に落とし込んで、それを自分の言葉にしたからこその須賀敦子作品なのだろうとあらためて感じました。ちょっと難解になってきたな、とこちらがぼぅっとしてきても、彼女の興味がどこに行きつくのか、目が離せない、そんな作品でした。 もう遠い昔、大学生のころに母と参加したイタリアツアーで、何もわからず「海外旅行楽しい」というだけの思いで帰ってきて、好きだったけれど優先順位的にももう行くことはないだろうと思っていたイタリアにまた行きたくなりました。しかも、須賀敦子のフィレンツェとヴェネツィアだけに無性に行きたい。
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須賀敦子全集の第3巻は、大きく分けて4編が収められている。文庫版の裏表紙の紹介をここに引用しておく。 【ユルスナールの靴】 20世紀フランスを代表する作家と自らを重ね合わせながら紡ぐ魂の二重奏。 【時のかけらたち】 ヨーロッパの建築や美術をめぐる施策の軌跡、出会った人々の思い出...
須賀敦子全集の第3巻は、大きく分けて4編が収められている。文庫版の裏表紙の紹介をここに引用しておく。 【ユルスナールの靴】 20世紀フランスを代表する作家と自らを重ね合わせながら紡ぐ魂の二重奏。 【時のかけらたち】 ヨーロッパの建築や美術をめぐる施策の軌跡、出会った人々の思い出。 【地図のない道】 「なによりもまず私をなぐさめてくれる島」として須賀が愛したヴェネツィアの記憶。 【エッセイ/1993~1996】 画期的論考「古いハスのタネ」他18編。 「ユルスナールの靴」は、フランスの小説家である、マルグリッド・ユルスナールの作品、あるいは、生涯を題材にとったものである。私は本書を読むまで、マルグリッド・ユルスナールという小説家を知らなかった。ユルスナールのことを知らない人が読むには、非常にハードルが高い。 「時のかけらたち」も、ヨーロッパの建築や美術に、ある程度の造詣があることが前提で書かれており、私にとっては、これも非常にハードルが高かった。 残りの2編は、そのような基本的な知識を必要としない、そのまま読んで楽しめるエッセイであった。「そのまま読んで楽しめるエッセイ」と書いたが、軽く書かれた流し読みが出来るようなエッセイではない。構成も緻密だし、取材も行き届いているし、「ザッテレの河岸」などは、実際に対象となるものに、須賀敦子が興味を持ち始めてから相当に長い年月を経て書かれたものである。そういう意味では、須賀敦子の作品は、楽しんで読むことは出来るが、気が抜けないという印象を強く持つ。
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静謐な、しかし熱い想い。 覚醒しながらも、心地よくまどろむ。 この人の文体は、高潔さを伴いながら、それがお高くとまっているのでなく、 読む者の心に寄り添ってくれる、安心感をもたらせてくれる。 ユルスナール。 薄い読書歴の私には名前も知らないフランスの作家について、 須賀敦子...
静謐な、しかし熱い想い。 覚醒しながらも、心地よくまどろむ。 この人の文体は、高潔さを伴いながら、それがお高くとまっているのでなく、 読む者の心に寄り添ってくれる、安心感をもたらせてくれる。 ユルスナール。 薄い読書歴の私には名前も知らないフランスの作家について、 須賀敦子の彼女に対する、彼女の著作に対する深い愛情を示しくれたことによって、 そこからもたらされる、新しい世界を垣間見させてくれた。 幸福な出合い、という言葉が最も似合う、 須賀敦子とユルスナールの巡り合い。 その出合いに、読者たる私たちも、 また幸福を感じながら立ち会うことができる。
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