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だから僕は・・・ アニメージュ文庫

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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 徳間書店 |
発売年月日 | 1983/08/01 |
JAN | 9784196695110 |
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だから僕は・・・
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商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
富野由悠季というアニメーション作家を改めて深く考える契機となった。彼の業績は単に「先進的」な表現だから称賛されるのではなく、映像演出の理論的体系と表現哲学、自己批判的姿勢、そして制作現場での切実な挑戦と偶然の積み重ねによって支えられていることに気づかされた。 彼の著作『映像の原則』は、映像を「感性だけで成り立つものではなく、理詰めの言語として成立させる」という考えに基づき、画面構図や動きの心理効果を緻密に計算している。とりわけ「上手(かみて)・下手(しもて)」という左右の配置に意味を持たせる技法や、「イマジナリーライン」によって画面空間の連続性を保つ工夫は、映像がもつ潜在的な心理的影響力をほぼ学問的に解明する試みだ。こうした理論は、ただの視覚効果に留まらず、視聴者の無意識に訴え、物語の理解や感情移入の基盤を築く重要な土台だと実感する。 また、日本と欧米における画面内の左右の意味合いの違いを学んだことも興味深い。日本舞台芸術由来の伝統的な「上手・下手」に対し、欧米は文字の読み方向や時間軸の進行方向と結びついた「左→右=ポジティブ、右→左=ネガティブ」という観念が根強い。この文化的差異は映像表現のグローバル理解に欠かせない視点であり、我々鑑賞者が無意識に受け取る印象形成の一端を解いた知見だった。 物語の構造や多角的視点の成功例と失敗例の比較も貴重な示唆を与えてくれた。『転生したらスライムだった件』や『無職転生』など、世界観とキャラクター動機、テーマの統一と制作管理が堅固であるため、多視点やスピンオフ展開においても破綻しにくい。一方で富野由悠季監督の『Gのレコンギスタ』や『Z』『ZZ』では、複雑すぎる設定、抽象的なテーマ、説明不足、制作体制の混乱が重なって視聴者離れを招き、物語の理解困難さや破綻が指摘されている。これは、いかに世界観の一貫性とキャラクターの心理描写、テーマの明確さが作品の質を左右するかを示す好例だ。 もっとも、富野氏の強みは物語の「転がし方」、つまりキャラクター心理の描写と演出のダイナミズムにある。多作であり、現場での勘を生かした絵コンテ構築や演出設計力は天才的で、「設定を作り込む」よりも「物語を推進し感情を揺さぶる」ことに彼は長けていた。初期の『機動戦士ガンダム』の成功も、時代の潮流と彼の独特な演出哲学が合致したことの産物とも言え、その後のラノベなど細部に世界設定を構築する作家陣とはやや方向性が異なる。 生成AIとの対話を通じて、AIが「平均的回答」に陥る傾向と、創作における人間のセンスや「クリスタライゼーション(結晶化)」の不可欠さにも考えが及んだ。富野氏が「2001年宇宙の旅」への敬愛を作品に込め、映像細部の演出にこだわったことは、技術的な正確さや意図の伝達がいかに難しいかを物語る。AIも優れたツールだが、最終的な創造的選択は人間の感性と経験に依存し、「頭で考えるだけでなく身体で感じる現場感覚」がクオリティを左右するという指摘は説得力がある。 全体として、この対話から得た最大の気づきは「答えなき問いを問い続けることの尊さ」だ。富野由悠季氏は自身の作品も人生も常に未完であり、曖昧なまま問い続ける姿勢に価値を見出す。私たちも「わかりにくさ」「違和感」をただ受け入れるのではなく、それを原動力に内省し、創作や鑑賞に深みを与え続けるべきだと感じた。 富野監督作品の映像的・物語的な奥行きを知る経験は、単なる情報収集に終わらず、精神的探求の一端となり、自らの創作にも大きな刺激を与えた。この学びを胸に、今後も理論と感性を両立させて深く思索し続けたい。映像や物語が持つ力をもっと理解し、問い続ける姿勢から新たな創造を生み出していくことが、創作者としての私の使命だと確信する。
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