日傘のお兄さん 新潮文庫

豊島ミホ【著】

• 販売会社／発売会社: 新潮社
• 発売年月日: 2007/10/29
• JAN: 9784101199429

商品レビュー

2025/09/25

豊島ミホ先生の短編、中編をまとめた作品集。
4つの作品が収録されている。単行本の時から大幅に改訂、修正されているとのこと。文庫版しか読んでいないため、違和感なく読むことができた。

平成中期の空気感がそのまま凝縮された物語が多い。数十年先の今から考えるとうらやましいほど平和で、アナログで、いろんなことに配慮がなかった時代を過ごす女性たちが描かれている。

令和に執筆された小説の大多数も、数十年後には、このような懐かしさを感じさせるものになるのかと思うと少し寂しい気持ちになった。

2024/05/18

日傘のお兄さん

女性の感性（＝生理）が色濃く出ている。夕暮れ時の不安さ、朝のすがすがしさ、夜の怖さ。
なかなか男には書ける小説ではないです。
日傘のお兄さんとは、ロリコン青年のことでした。見方によって同じ行為でもいやらしくも、優しくもなる。
年も年なんだし好き嫌いをもっとはっきり全面に出したいなあと思いながら、なかなか今までの習慣は断ち切れない良い中年なのでした。
「猫のように」は、好き勝手をして暮らしていた男が急に一人で死ぬのが怖くなる話。
でも、好き勝手に暮らしても、ストイックに暮らしても、かみさんや子供がいても、親しい友人がいても、死ぬときは独りぼっちだということは変わらないです。
ここでも、好き勝手に生きてみたいけど、できない良い中年おやじがいるのでした。
それに比べて、多くの女性は潔いと思うのは、男の偏見かなあ？

竹蔵

2022/05/24

４作入っているけどもやはり表題作の『日傘のお兄さん』が1番面白かった。

凪良ゆうの｢流浪の月｣が好きな人はこの作品も気に入ると思う。

お兄さんの設定が最高。そして将来性のある逃避行とでも言えばいいだろうか…。大満足である。この作品だけで十分なほどだった。

豊島さんの｢お兄さん｣は非常に魅力的である。
また執筆の機会があるならばやはり｢お兄さん｣について書いて欲しい。