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この国が忘れていた正義 文春新書
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この国が忘れていた正義 文春新書

中嶋博行【著】

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 文藝春秋/文藝春秋
発売年月日 2007/07/20
JAN 9784166605828

この国が忘れていた正義

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商品レビュー

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2023/09/18

観光地で犯罪者が刑務所で製作した木彫りの郷土品を見た時は、果たしてどの程度売れるのか疑問に思ったことがある。昨今、どこもかしこも人手不足が叫ばれ、それでいて労働者は残業時間の制限も厳しくなっているから、益々日本企業が苦手とされる効率化に邁進しなければならない。そんな時に元気いっぱ...

観光地で犯罪者が刑務所で製作した木彫りの郷土品を見た時は、果たしてどの程度売れるのか疑問に思ったことがある。昨今、どこもかしこも人手不足が叫ばれ、それでいて労働者は残業時間の制限も厳しくなっているから、益々日本企業が苦手とされる効率化に邁進しなければならない。そんな時に元気いっぱいで罪を犯した刑務所暮らしの囚人に呑気に木彫りをさせてる余裕はない。刑務所では犯罪者の社会復帰を促すための教育に多くの労力と税金がかけられているが、残念ながら再犯率は上がるばかりで効果については極めて疑わしい。 何より罪が殺人だった場合、慰謝料請求のための民事裁判は刑事裁判とは別の問題とされ、刑務所入りが決まった罪人に被害者への金銭面での償いが充分にできるとは思えない。結果として被害者泣き寝入りになることも多々ある。本書ではこれを「犯罪者福祉型社会」と呼び、被害者と比較して、犯罪者を手厚く保護する国の制度の不備を糾弾していく。これは後半のテーマになっている、子供のいじめ問題にも通じている。結局いじめられた側が自殺や転向に追い込まれ、いじめっ子を学校が守る構図である。 本書はそうした被害者に厳しく犯罪者やいじめっ子に手厚い保護を与える現状に言及し、最終的な解としては、刑務所の民営化と生産性の向上、そして労働の対価を被害者救済に充てるというモデルを提案する。初めに書いた様に木彫りの郷土品ではなく、もっと世の中に必要とされるものや、自衛隊の装備品(機密漏洩に繋がりかねないソフトウェア面ではなく、物理的なハード部分)の組み立てなどに充てれば、相当な労働力にあると考える。その点は私も筆者の意見に賛同するものは多い。だがそうした犯罪者に強制労働かつ対価を搾取する様な制度は人権団体が許さない。そうした社会からの圧力に対しても、筆者は見事な論拠で喝破していくのが読んでいて爽快だ。 私個人的には、罪の重さに対して科せられる罰の長さに加えて、被害者救済のための慰謝料請求分の刑務所内労働をプラスしても良いとさえ思う。そうすることで、例えば2人殺害したら死刑になる所を、死刑廃止論側の立場に同意して廃止する。代わりに無期懲役で生涯を被害者救済のための労働に充てさせる。更にその働きぶりや品質、生産性で評価し、時間単価を上げさせるなどすれば、早くに出たい犯罪者はそれだけ真面目に考えて働く様になるのではないだろうか。 この大事な生産力の源泉をむざむざ優しい死刑にしてしまうのは別の意味で勿体無いと考えることも出来そうだ。まずは生産性向上のノウハウを持つ民間会社に刑務所を委託するというのも、資本主義的に見ればありだと考える。こうした民間による刑務所運営は過去にアメリカでは失敗したようだが、犯罪者福祉型社会で毎年二千億以上の血税を注ぎ込み、その結果再犯を引き起こす我が国でやってみない手はない。 人がなぜ戦争を起こすのか、原因を一つに絞り込む事がむずかしいが、同様に犯罪やいじめも原因を根本的に取り除くのには時間がかかりすぎるし、それ自体が生産的な活動になれていない以上、刑務所の民営化は是非やってみたい(本書執筆当時でセコムのみがそれをやっていたとのこと)。 何より先ずは被害者救済が最優先であり、どんな事情・背景があるにせよ、被害者からすれば加害者側に非があるのであれば、その様な犯罪者福祉から脱却し、被害者重視の社会に変えていく必要がある。

Posted by ブクログ

2015/05/16

人権についての考え方は面白い。基本的には対国家の概念でありだから最大限守られるべきなんだけど、対人のときに同列に並べるのはおかしいのではないか、みたいな論で。 被害者被疑者どっちかの視点に偏らないバランスのとれた制度が必要だなあと思う次第。

Posted by ブクログ

2012/11/06

 刑罰の在り方について書かれた本。    罪に対して国家が×を与えるという当たり前の考え方があるが,bkhii6ewf 犯罪者を「構成させる」ことに主眼が置かれ,犯罪者を罰することになっていない,ましてや被害者を救済することは被害者任せになっており,全く置き去りにされている。  ...

 刑罰の在り方について書かれた本。    罪に対して国家が×を与えるという当たり前の考え方があるが,bkhii6ewf 犯罪者を「構成させる」ことに主眼が置かれ,犯罪者を罰することになっていない,ましてや被害者を救済することは被害者任せになっており,全く置き去りにされている。  その結果,犯罪者に対する福祉ばかりが前面に押し出され,被害者もひいては国民も踏みつけにされている実態を強く主張し,発想の転換を求める啓蒙書。  日頃違和感を感じていることをきわめて明快に書き起こしてくれ解き明かしていく。  現代日本に跋扈するの弱者優先の逆差別を浮き彫りにし,その解決方向性についても一定の示唆を与えてくれている。  犯罪者に償いを強く求め,強硬でぶれない主張は,今の日本では危険視されかねないのではないかと読んでいるこちらの方が危惧してしまう。  しかし到来,当然の主張であるべきであるこうした主張が周囲をおもんぱからないと言えないような空気感こそが,いかに今の日本が加害者福祉国家たることを示しているともいえる。  言っていることは強硬だが,そこには被害者に対する対するきわめて痛快で明快で納得感ある「強いやさしさ」を感じる。

Posted by ブクログ

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