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この国が忘れていた正義 の商品レビュー

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2023/09/18

観光地で犯罪者が刑務所で製作した木彫りの郷土品を見た時は、果たしてどの程度売れるのか疑問に思ったことがある。昨今、どこもかしこも人手不足が叫ばれ、それでいて労働者は残業時間の制限も厳しくなっているから、益々日本企業が苦手とされる効率化に邁進しなければならない。そんな時に元気いっぱ...

観光地で犯罪者が刑務所で製作した木彫りの郷土品を見た時は、果たしてどの程度売れるのか疑問に思ったことがある。昨今、どこもかしこも人手不足が叫ばれ、それでいて労働者は残業時間の制限も厳しくなっているから、益々日本企業が苦手とされる効率化に邁進しなければならない。そんな時に元気いっぱいで罪を犯した刑務所暮らしの囚人に呑気に木彫りをさせてる余裕はない。刑務所では犯罪者の社会復帰を促すための教育に多くの労力と税金がかけられているが、残念ながら再犯率は上がるばかりで効果については極めて疑わしい。 何より罪が殺人だった場合、慰謝料請求のための民事裁判は刑事裁判とは別の問題とされ、刑務所入りが決まった罪人に被害者への金銭面での償いが充分にできるとは思えない。結果として被害者泣き寝入りになることも多々ある。本書ではこれを「犯罪者福祉型社会」と呼び、被害者と比較して、犯罪者を手厚く保護する国の制度の不備を糾弾していく。これは後半のテーマになっている、子供のいじめ問題にも通じている。結局いじめられた側が自殺や転向に追い込まれ、いじめっ子を学校が守る構図である。 本書はそうした被害者に厳しく犯罪者やいじめっ子に手厚い保護を与える現状に言及し、最終的な解としては、刑務所の民営化と生産性の向上、そして労働の対価を被害者救済に充てるというモデルを提案する。初めに書いた様に木彫りの郷土品ではなく、もっと世の中に必要とされるものや、自衛隊の装備品(機密漏洩に繋がりかねないソフトウェア面ではなく、物理的なハード部分)の組み立てなどに充てれば、相当な労働力にあると考える。その点は私も筆者の意見に賛同するものは多い。だがそうした犯罪者に強制労働かつ対価を搾取する様な制度は人権団体が許さない。そうした社会からの圧力に対しても、筆者は見事な論拠で喝破していくのが読んでいて爽快だ。 私個人的には、罪の重さに対して科せられる罰の長さに加えて、被害者救済のための慰謝料請求分の刑務所内労働をプラスしても良いとさえ思う。そうすることで、例えば2人殺害したら死刑になる所を、死刑廃止論側の立場に同意して廃止する。代わりに無期懲役で生涯を被害者救済のための労働に充てさせる。更にその働きぶりや品質、生産性で評価し、時間単価を上げさせるなどすれば、早くに出たい犯罪者はそれだけ真面目に考えて働く様になるのではないだろうか。 この大事な生産力の源泉をむざむざ優しい死刑にしてしまうのは別の意味で勿体無いと考えることも出来そうだ。まずは生産性向上のノウハウを持つ民間会社に刑務所を委託するというのも、資本主義的に見ればありだと考える。こうした民間による刑務所運営は過去にアメリカでは失敗したようだが、犯罪者福祉型社会で毎年二千億以上の血税を注ぎ込み、その結果再犯を引き起こす我が国でやってみない手はない。 人がなぜ戦争を起こすのか、原因を一つに絞り込む事がむずかしいが、同様に犯罪やいじめも原因を根本的に取り除くのには時間がかかりすぎるし、それ自体が生産的な活動になれていない以上、刑務所の民営化は是非やってみたい(本書執筆当時でセコムのみがそれをやっていたとのこと)。 何より先ずは被害者救済が最優先であり、どんな事情・背景があるにせよ、被害者からすれば加害者側に非があるのであれば、その様な犯罪者福祉から脱却し、被害者重視の社会に変えていく必要がある。

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2015/05/16

人権についての考え方は面白い。基本的には対国家の概念でありだから最大限守られるべきなんだけど、対人のときに同列に並べるのはおかしいのではないか、みたいな論で。 被害者被疑者どっちかの視点に偏らないバランスのとれた制度が必要だなあと思う次第。

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2012/11/06

 刑罰の在り方について書かれた本。    罪に対して国家が×を与えるという当たり前の考え方があるが,bkhii6ewf 犯罪者を「構成させる」ことに主眼が置かれ,犯罪者を罰することになっていない,ましてや被害者を救済することは被害者任せになっており,全く置き去りにされている。  ...

 刑罰の在り方について書かれた本。    罪に対して国家が×を与えるという当たり前の考え方があるが,bkhii6ewf 犯罪者を「構成させる」ことに主眼が置かれ,犯罪者を罰することになっていない,ましてや被害者を救済することは被害者任せになっており,全く置き去りにされている。  その結果,犯罪者に対する福祉ばかりが前面に押し出され,被害者もひいては国民も踏みつけにされている実態を強く主張し,発想の転換を求める啓蒙書。  日頃違和感を感じていることをきわめて明快に書き起こしてくれ解き明かしていく。  現代日本に跋扈するの弱者優先の逆差別を浮き彫りにし,その解決方向性についても一定の示唆を与えてくれている。  犯罪者に償いを強く求め,強硬でぶれない主張は,今の日本では危険視されかねないのではないかと読んでいるこちらの方が危惧してしまう。  しかし到来,当然の主張であるべきであるこうした主張が周囲をおもんぱからないと言えないような空気感こそが,いかに今の日本が加害者福祉国家たることを示しているともいえる。  言っていることは強硬だが,そこには被害者に対する対するきわめて痛快で明快で納得感ある「強いやさしさ」を感じる。

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2012/06/09

大好きな作家です。 (「検察捜査」で江戸川乱歩賞を受賞。 この本は色んな人に薦めてきました。) 本書の帯にもありますが。「日本は加害者に甘すぎる」は常々、私自身が悶々と感じるところでもあり、興味深く集中して読むことができました。 現在社会は犯罪者「福祉型」社会。被害者...

大好きな作家です。 (「検察捜査」で江戸川乱歩賞を受賞。 この本は色んな人に薦めてきました。) 本書の帯にもありますが。「日本は加害者に甘すぎる」は常々、私自身が悶々と感じるところでもあり、興味深く集中して読むことができました。 現在社会は犯罪者「福祉型」社会。被害者救済は後回し。 個人的には「目には目を~」型の考え方でもあり、「福祉型」の現状を知るにつれ、こんな甘いのでいいのか?と思わずにはいられない。 すぐ隣の犯罪者。自分や家族の安全を維持するために今のままでいいはずがない。 犯罪者の人権云々を口にする方には一度、被害者の立場に立って真剣に考えてもらいたい。

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2012/04/28

◆あらゆる犯罪者は冷遇されなければならない◆ 日本は犯罪者を優遇して被害者を無視するという狂った国 あるいは、広津和郎があれほど松川事件に関わらなかったら、もし家永三郎があんなにも教科書裁判に関わらなかったら、野間宏が深く狭山裁判に関わらなかったら、など、ちょっと思い巡らすだ...

◆あらゆる犯罪者は冷遇されなければならない◆ 日本は犯罪者を優遇して被害者を無視するという狂った国 あるいは、広津和郎があれほど松川事件に関わらなかったら、もし家永三郎があんなにも教科書裁判に関わらなかったら、野間宏が深く狭山裁判に関わらなかったら、など、ちょっと思い巡らすだけで、あまりにも有名なこの三つの例がすぐ出てきますが、彼らに本当は、もっともっと名作や傑作あるいは新しい歴史の発見があったかも知れないのに、並外れた資質を持つ小説家や歴史家が、その才能を権力によって消耗させられた残酷な例。 もちろん彼らには、その必然があっての行為ですから悔いが残るはずはありませんが、読者としての私たちには、断固恨みが残ります。彼らの才能から生み出されるはずだった新しい創作物を誰が奪い取ったのか。 という痛恨の思いを抱かされるのが、同じような境遇にあるこの本の著者・中嶋博行です。彼は1994年に『検察捜査』で乱歩賞デビュー。1985年に弁護士になったことを生かした作風で、私は小杉健治とは又違った法廷物を書いてくれると期待していました。 あれから18年、弁護士稼業を続け犯罪被害者の支援活動を続けていては、とても大変です。彼は私の期待には少ししか応えてくれません。もっと圧倒的な弁護士物のハードなやつをガンガンほしいのに。 でも、それは思っても仕方のないこと。だって彼は現在、犯罪被害者の理不尽な境遇を改善しようと闘っているのですから。 訳もなくレイプされて一生深い傷を負って生きていく女性にとって、犯人が懲役1年でしかないという現実は耐えられないことと同じように、交通事故で二人の子供を殺された親にとって、10年はもちろんたかだか25年の刑で殺人者が戻ってくるのはとうてい納得できないものです。 彼は「犯罪者福祉社会」という言葉で、いかに犯罪者が優遇されていて、被害者にとって理不尽な現実が当たり前のようにして現前するかを解きます。 そして・・・・、この次を、もっとお知りになりたいとお思いなら、ぜひこの本を直接お読み下さい。 そして、この矛盾した社会のシステムを変えようと提言している中嶋博行を、みんなでバックアップしようではありませんか! レビュー登録日:2007年9月22日           (下記は機能ミス誤記)

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2011/04/13

[ 内容 ] 犯罪者「福祉」予算2200億円! 凶悪犯の人権、いじめっ子の教育権が優遇される原因は「犯罪者福祉型社会」にある。 日本が正義を取り戻すために「処罰社会モデル」を提唱。 [ 目次 ] 女性検事の「太腿」事件 正義はこうして実現した 国家プロジェクト「快楽殺人者の更生...

[ 内容 ] 犯罪者「福祉」予算2200億円! 凶悪犯の人権、いじめっ子の教育権が優遇される原因は「犯罪者福祉型社会」にある。 日本が正義を取り戻すために「処罰社会モデル」を提唱。 [ 目次 ] 女性検事の「太腿」事件 正義はこうして実現した 国家プロジェクト「快楽殺人者の更生計画」 犯罪者の更生改善は幻想 コロンバイン高校銃撃犯は更生プログラムの優等生 「治療モデル」アメリカン・ドリーム 「正義モデル」 死刑モラトリアム―あらたな死刑「停止」運動 保守派の再反撃 性犯罪者対策・去勢と監視 犯罪者福祉型社会の「更生モデル」 百年前の正義 人権の正体 正義の切り札?「民営刑務所」 「更正モデル」から「賠償モデル」へ 一生かけても償わせる いじめは「犯罪」である 犯罪者「福祉型」社会との対決 [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]

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2009/10/04

刑務所問題について書かれた本。 考えさせられることが多かった。確かに賠償モデル型という刑務所は魅力的かもしれない。

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2009/10/04

犯罪抑止力のためには何が必要なのか。日本とアメリカの現行の法制度をまとめ、今の日本のあまりのも犯罪者にとって恵まれた制度警鐘を鳴らす。 途中まではなかなか筋の通っている理論展開だが、いじめについての考察は蛇足気味。

Posted byブクログ