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海上の道 岩波文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 岩波書店/岩波書店 |
発売年月日 | 2008/04/01 |
JAN | 9784003313862 |
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海上の道
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商品レビュー
3.6
11件のお客様レビュー
柳田國男が晩年に書いた論文をいくつか合わせたもので、日本国および日本人のルーツを辿ろうと試みた作品。そんなこととは知らず『遠野物語』の海版と思って読み始めたので何度か挫折しながら、無理やり読み切ったが、正直半分も理解できていない。 本書全体を通じて現れるニライカナイという単語が...
柳田國男が晩年に書いた論文をいくつか合わせたもので、日本国および日本人のルーツを辿ろうと試みた作品。そんなこととは知らず『遠野物語』の海版と思って読み始めたので何度か挫折しながら、無理やり読み切ったが、正直半分も理解できていない。 本書全体を通じて現れるニライカナイという単語がそもそも捉えにくくて困る。島で暮らす人たちの想像から生まれた水平線の果てにある別世界とでも言えばよいのか、のちに龍宮や根の国などと同一視されたらしい。根の国といえば素戔嗚尊が母を追って辿り着いた地下の国だが、著者曰く、根という漢字をあてたがために地下という意味合いが強くですぎただけで、実際はハジマリ(根本)という意味合いで用いられたらしい。なんかそんなことが書いてあったと記憶しているが、如何せんチンプンカンプンのまま読んでいたので、そうでなかったかもしれない。 ほかには、日本人にとって、また日本史において無視することのできないコメ、イネの問題を扱ったのが本書の後半。新嘗祭の由来とか、三文字みるだに難しそうだが、実際、やはり難しい。ただ、結局筆者が言いたいのは、日本人の本当にはじまりのはじまりは、江上波夫が唱えた騎馬民族説みたいな、北方からの南下ではなく、南方から海を渡ってきたのではないかということらしい。 それに関連して、なぜわざわざ、造船技術も航海技術も発達していない当時、命の危険を冒してまで家族引き連れ日本に渡ってきたのか、という疑問を提示し、それについての回答として、子安貝の存在を挙げる。宝貝ともいわれたこの貝は大陸の王朝で珍重されたらしく、その世界の産出地の一つが沖縄あたりだったらしい。子安貝については岡田英弘の中公新書『倭国』だったかにチラッと出ていて記憶にはのこっていた。言ってみれば古代のゴールドラッシュか。 総じて、考察の対象が大きすぎるのと、筆者本人も述べるように、寿命が迫っている中、後世にのこす宿題という意味合いも込めて書かれているので、『遠野物語』とかほどはまとまっていないし、結論も根拠も相対的にはふわっとしている。 中盤に突然、いや突然というのも変なので、予期していなかったとでも言えばよいのか、「鼠の浄土」という一篇があり、これは面白かった。海の話なのに鼠?と思いつつ読んでみると、鼠はどうやら海を泳いで島から島へと渡っているらしいという内容で、その例が近世江戸時代くらいからぽつぽつ記録としてのこっているそうな。当時の赤本、黒本のノリなのか、 「……奥尻はそれ以前から鼠が多いので評判の島であり、同時に鮑と海鼠のよく獲れる島でもあった。それで鼠が鮑を食って蕃殖し、また或る年には鮑に食われて減ってゆくという話があり、或いは海に入って海鼠になるのだというような話さえあったが、それをみんなが信じていたかどうかは明らかでない。ただ何らかの外部の理由で、この島の鼠の数に、著しい増減のあったことだけは事実だったらしい。」 博学のおじさんが真面目な口調でこんなふざけたことを書くのだからなんとも人が悪いが、この鼠の話も結局ニライカナイに繋がり、一種の動物信仰にもつながる。 面白いし、日本人たるもの興味もって一度は考えてみたいが、むずかしい! ちなみに、大江健三郎の解説は興味がわかず読んでいない。
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日本人がどこから日本列島に渡ってきたのか、文字を使って残っているものでなく、主に沖縄での言葉や習慣と他との対比から新しい海上の道があったのでは、という仮説に基づく試論、だと思う。 民俗学というのか、初めて足を踏み入れてみた。咀嚼するのにかなり時間がかかり、内容の何を理解したかとい...
日本人がどこから日本列島に渡ってきたのか、文字を使って残っているものでなく、主に沖縄での言葉や習慣と他との対比から新しい海上の道があったのでは、という仮説に基づく試論、だと思う。 民俗学というのか、初めて足を踏み入れてみた。咀嚼するのにかなり時間がかかり、内容の何を理解したかというと何も理解出来ていない気すらするけれど、柳田國男の思索の中を漂えた。ただ漂うだけでも楽しい経験だったけれど、もっと意味するところを理解したいという気になる。 170801
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※このレビューにはネタバレを含みます
1978年(底本1968年。初出1950~55年)刊。 海洋民、海浜や海岸近辺で生活していた民、あるいは広い意味での海の民を定点にした、昔話、伝承・伝説や慣習・伝統行事などを、広範な記録その他を基に描き出すエッセイ集。描くという言葉が相応しく、詩的な表現で縦横無尽に彩っていく。 が、まさにそれが弱点とも言える。著者の余りの博識に支えられた多種多様な文献解説(それこそ聞いたことのないような文献がわんさと出て来る。)を例にとると、記述の元となった文献・記録が、果たしていつ、どういう経緯で作成されたのか。 また、伝承や昔話の入手経緯が全く書かれないため、その時代相を捕まえるのが難しい。加えて、明らかにしようとするテーマと時期も書内ではさほど意識されない。 つまり、例えば、中世後期や近世の文献で、縄文期の状況を解明する作業には、注意を要するはずだが、こういう点への配慮がないのだ。 一方、昔話の多様さとその数に幻惑されがちだが、本書はそれら誕生の場所と時代とを有機的・網の目状に関連付けつつ、一つの事実を明らかにしていくという書き方ではない。 故に数多説明される昔話の適示によって何を明らかにしたいのか。これがイマイチ判然とせず、これはマイナス要素と言わざるを得ない。 とはいえ、ここまで多様に昔話・伝承・伝説を集積して書き切った書は多くはなく、貴重な書であることは明らかだ。 誰か本書に即した形で注釈付きの解説書を書いたら、それは先人の偉業のバトンを後代に繋ぐという点で、価値ある知的営為と考えるのだが…。
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