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深層心理学と新しい倫理 悪を超える試み
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 人文書院/ |
発売年月日 | 1987/11/25 |
JAN | 9784409330326 |
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深層心理学と新しい倫理
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『深層心理学と新しい倫理』は、ユング派の視点から現代社会における倫理の問題を根本的に問い直した重要な著作です。この本でノイマンは、従来の善悪二元論的な道徳観を超えて、人間の影の部分も含めた全体性に基づく新しい倫理の可能性を探求しています。 本書の出発点となっているのは、現代社会が...
『深層心理学と新しい倫理』は、ユング派の視点から現代社会における倫理の問題を根本的に問い直した重要な著作です。この本でノイマンは、従来の善悪二元論的な道徳観を超えて、人間の影の部分も含めた全体性に基づく新しい倫理の可能性を探求しています。 本書の出発点となっているのは、現代社会が抱える深刻な問題への洞察です。ノイマンは、伝統的な道徳が説く「善を為し、悪を避けよ」という単純な二元論では、もはや現代の複雑な倫理的課題に対処できないと指摘します。なぜなら、この古い倫理観は人間の影の部分を単に抑圧するだけで、それを真に理解し統合することができないからです。 特に興味深いのは、ノイマンが「古い倫理」の問題点として指摘する「集団的影の投影」についての分析です。例えば、戦争や民族紛争、さらには政治的な対立において、私たちは往々にして自分たちの中にある「悪」の部分を他者に投影し、それを攻撃する傾向があります。この投影のメカニズムを理解することなしには、真の倫理的成熟は不可能だとノイマンは主張するのです。 ノイマンが提唱する「新しい倫理」の核心は、人間の全体性の認識にあります。それは単に「善い部分」だけでなく、「影」や「悪」とされる部分も含めて、人間を総体として理解しようとする姿勢です。例えば、怒りや嫉妬、攻撃性といった感情は、従来の倫理観では単に「克服すべきもの」とされてきました。しかし、これらの感情にも重要な意味や機能があり、それらを意識的に理解し統合することこそが、真の倫理的発達につながるとノイマンは説きます。 本書で特に印象的なのは、個人の心理的発達と倫理的成熟の関係についての考察です。ノイマンによれば、真の倫理的行動は、外から押し付けられた規範の遵守ではなく、自己の内なる影との対話を通じた意識的な選択から生まれます。これは個人の「個性化」の過程と密接に結びついているのです。 また、この本は現代のさまざまな社会問題にも示唆を与えます。例えば、環境問題や人権問題、さらには政治的な分断といった課題に対して、単純な善悪の二分法を超えた、より深い理解と対話の可能性を示唆しているのです。 ノイマンの議論は時として難解になることもありますが、それは扱っているテーマの深さと複雑さを考えれば当然かもしれません。しかし、現代社会が直面する倫理的課題の解決のヒントを探る上で、本書の洞察は極めて重要な意味を持っています。特に、心理学や倫理学、さらには現代社会の問題に関心を持つ読者にとって、本書は貴重な思索の糧となるはずです。 結局のところ、この本は単なる倫理学の理論書ではありません。それは現代を生きる私たち一人一人に、自己の内なる影との誠実な対話を通じて、より高次の倫理的意識へと至る道を示唆する、実践的な指針としての性格を持っているのです。
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ユダヤ人系ドイツ人として生まれた著者ノイマンは、 哲学と医学を修得したのちユングと出会い、以後、 終生ユング派の深層心理学研究グループに属する。 ナチの手の伸びる大戦前にイスラエルへ移って開業し、そこで没する。 自らの出自もあり、彼は、戦争をはじめとする人類史的悪が、 いかにし...
ユダヤ人系ドイツ人として生まれた著者ノイマンは、 哲学と医学を修得したのちユングと出会い、以後、 終生ユング派の深層心理学研究グループに属する。 ナチの手の伸びる大戦前にイスラエルへ移って開業し、そこで没する。 自らの出自もあり、彼は、戦争をはじめとする人類史的悪が、 いかにして生まれるのかを研究した。 そして、「古い倫理」と彼の言う、先進国の思想基盤に 端を発した、人間の「影」(深層心理の抑圧)と、 スケープゴート心理を見いだし、論じている。 ユングとフロイトの思想に基づいて独自の理論を展開し、 「古い倫理」がもたらす社会の歪みに警鐘を鳴らし、 もはや社会には「新しい倫理」が求められていると主張する。 彼はここで重要なキーワード、「深層心理=無意識」に光を当てる。 区分や分離ではなく、対立し合う要素をひとつの構造に結びつける 社会の流れへ移行すべきだと、力説するのだ。 その「新しい倫理」がめざすものは、意識と無意識を統合させた 全体的人格、「自己」であるとし、近現代の抑圧と抑制を強いられてきた生を、 解放してゆくことを呼びかけている。 思想の書はまだ多くを読んでいないが、世界の危機を 倫理という観点から分析した、古典に当たる書だろう。 しかし憂うべきは、この書が発行されてから60年を経た今も、 依然「古い倫理」がまかり通っていることだ。 年齢を問わず、現在の世界に疑問を投げかける人には是非推薦したい名著。
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