エドゥアルト・ガンスとドイツ精神史 ヘーゲルとハイネのはざまで

川崎修敬【著】

• 販売会社／発売会社: 風行社/風行社
• 発売年月日: 2007/06/01
• JAN: 9784938662981

商品レビュー

2013/06/15

エドゥアルト・ガンスは『歴史哲学講義』などの編纂に携わった、ヘーゲルの弟子として知られている。そのガンスの思想の特徴を、フランス観・プフタとの占有論争・ハイネとの交友、以上の3つの視覚から解明する研究。ガンスは、今なお多様な解釈の余地があるヘーゲル哲学を立憲君主制を正当化する哲学として把握する。そしてヘーゲルにおけるリベラル的要素をさらに急進的な方向へと推し進めて解釈しつつ、多様な政治体制・法制度を統一的視座のもとに把握する「普遍法学」を国家理論・法理論の中軸に据えている。ヘーゲルの一番弟子ともされるガンスが、ヘーゲルの存命中からこのような哲学を展開していたことは、ヘーゲル―リベラル・テーゼとも合わせて、当時のドイツの大学人たちが果たして単なる体制擁護者であったのかどうかを再検討するように我々に迫っていると言えるだろう。そして、青年時代に共闘しつつ、次第に関係が冷却していったハイネとガンスの共通の地盤、そして決定的に異なった、「ユダヤ性」へのこだわりを本書は明らかにしているが、この問題は多文化主義が称揚される現代社会を考える契機たるべき問題である。