玉砕/Gyokusai

小田実, ティナペプラー, ドナルドキーン【著】

• 販売会社／発売会社: 岩波書店/岩波書店
• 発売年月日: 2006/09/08
• JAN: 9784000225496

商品レビュー

2024/06/18

岩波書店　小田実　「 玉砕 」

玉砕や特攻など自殺攻撃をテーマとした戦争小説・対談ほか。玉砕により勝利したことは一度もなく、特攻により沈んだ母艦は一隻もない 事実は 戦死者の不条理を感じさせる

アジア独立の大義名分のもと 行われた 太平洋戦争が、日本の敗戦が近づくにつれて、天皇を守るための戦争に変貌し、玉砕や特攻といった犬死の戦略に至ったという論調

ここまで 天皇に対して怒りを表した文章を見たことない。怒りの理由がわかりにくい。天皇に自殺攻撃や戦争責任があるということ？ 近代化とナショナリズムによって 天皇制がファシズムに変容したのか？

東京大空襲により市民の殺戮を行なった カーティスルメイの言葉「戦争は すべて不道徳である。道徳を考えれば戦争に勝てない。戦争に敗れていたら、われわれは 戦犯として裁かれていただろう」は 記憶しておこうと思う

2019/11/30

・私の「玉砕」へのかかわり、思い（小田実）
・玉砕（小田実）
・ラジオドラマGyokusai（ティナ・ペプラー）
・英訳版「玉砕」のためのまえがき（ドナルド・キーン）
・崇高にしておぞましき戦争（小田実＋ドナルド・キーン）
・変革すべき世界はまだまだ若い（ティナ・ペプラー）

　小田実が『新潮』1998年1月号に発表した小説と、ティナ・ペプラーによる同題のBBCラジオドラマ版、ドナルド・キーンによる英訳（The Breaking Jewel）、関連テクストを収録した一冊。キーンにとって最初の戦場がアッツ島だった、という話はさすがに驚いた。

　物語は、おそらくペリリュー島をモデルにしただろう南海の孤島で戦った若き日本人下士官と朝鮮人志願兵とを中心に展開する。小田の意図としては、「特攻」や「玉砕」を非合理的・狂信的な振る舞いとしてではなく、合理的かつ人間的な選択と判断によるものとして「世俗化」したかったのかも知れない。作中には、日本人兵士と朝鮮人兵士、沖縄人兵士の葛藤もしっかり書き込まれてはいる。
　しかし、いま改めて読むと、小田実のある種の「マッチョさ」がとてもとても気に掛かる。「玉砕」した日本軍兵士を人間化することと、彼らの戦いを英雄的な奮闘として描くこととの間には、いささかの逕庭があるのではないか。大岡昇平の『レイテ戦記』にも同じことを感じたが、「彼らもよく戦った」と書かなければ、日本軍の惨めな敗北を物語化することはできないのか？

　また、末尾の日本人「慰安婦」の「愛」をめぐるエピソードには、正直少し鼻白むところがあった。「玉砕」をめぐる物語を異性愛のメロドラマに回収してしまったことは、小説の強度を弱めてしまっているとわたしは思う。

2015/03/09

日本軍による自爆攻撃。
なんて馬鹿げたこと！狂った人達による、おぞましい歴史なのかと思っていたが‥
もし、その場にいたなら…わからない。
ドナルド・キーン氏の翻訳により世界に紹介されBBCではラジオドラマになったとか。
日本でも是非お願いします。

（追記）2019年2月24日没（享年96歳）